1.背景と目的
リチウムイオン蓄電池の内部抵抗や開放電圧は蓄電残量に依存して変化するので、蓄電残量(あるいは、SOC:
State of charge, 蓄電状態)の高精度推定は非常に重要です.SOC測定のためによく用いられる電流積算法は大型の計測装置を使って、初期値が正しく、サンプリング幅を十分小さくとれば高精度に計測ができます.しかし、実際の蓄電池使用状態においては、マイコン等の低コストな組み込みシステムをつかって、高精度に測定することが要求されます.マイコンでSOCを計測する場合は、低電力化や計算量低減のためサンプリングをある程度荒く取る必要があります.このような場合に、有効な技術として、カルマンフィルタを用いた状態推定技術を使います.蓄電池モデルの高精度化と統計的手法の工夫により高精度化にチャレンジします.
蓄電池内部インピーダンス測定装置
マイコンへの残量計実装実験
2.特徴と成果
リチウムイオン蓄電池の内部インピーダンスの温度依存性をアレニウス式で近似する方法を開発し、蓄電池内部温度とSOCを考慮した拡張カルマンフィルタによる高精度残量予測システムを開発しました.その結果、広い温度範囲で誤差1.0%以下の高精度化を実現しました.従来手法が3~5%の誤差であるのに比べ、顕著な改良と言えます.さらに、蓄電池温度が動的に変動する場合についても、蓄電池内部温度を正確に測定する技術により、残量推定誤差1.5%以下の高精度化を実現しました
.さらなる高精度化を狙い、内部インピーダンスの高精度抽出技術や、システムノイズの自動適応技術などの技術を駆使して、高精度化を実現します.
カルマンフィルタを用いた高精度残量推定実験
3.今後の展開
本技術を基盤として、種類の異なるリチウムイオン蓄電池への対応や、蓄電池モデル抽出の高精度化を進展させることにより、蓄電池の劣化状態や安全性の状態管理まで行えるように発展させます.