1.背景と目的
リチウムイオン蓄電池の内部抵抗は温度により大きく増減します.また、高温や低温状態では、劣化が加速されたり、安全性を損なうなどの問題が発生する場合があります.そのため、蓄電池の熱解析と温度管理は非常に重要です.
2.特徴と成果
(熱解析)GPUを用いた高速な熱解析を実現した.CPUに比べ、最大で高速化上界の88%に相当する143倍の高速化を達成し、並列性の高いアルゴリズムを
実装しましした.一般の熱解析で良く用いられる有限要素法を用いた熱解析プログラムElmerと比較して0.34%の誤差、実測と比較して0.49%の誤差であることを実験により確認しました.これにより、精度を同様の高精度に保ちつつ、約32倍の高速な処理を実現する技術を解明しました.この技術の一端は、マラガ(スペイン)にて開催の International
Conference on Heat Transfer, Fluid Mechanics and
Thermodynamicsにて発表し、HEFAT2016 Best Paper
Awardを受賞しました. 同技術は、電池を搭載した電子システムの温度分布解析を高速かつ高精度に行う技術として有効です.

3次元熱解析結果
(内部温度推定)蓄電池の内部温度を推定する為の式を構築し、組電池を用いた評価実験によりその有効性を示しました.また、内部温度を推定する際に必要となる熱抵抗等の様々な蓄電池の特性を独自の測定手法を用いて導出し、評価実験によりその有効性を示しました.さらに、リチウムイオン蓄電池の内部温度を推定するシステムを、マイコンを用いて実装し、評価実験により、内部温度を高精度に計測することを示しました.


内部温度を推定システムの発表
(空冷)リチウムイオン組蓄電池の温度を決める要因を分析し、空冷の理論式を定式化しました.自ら組み上げた実験装置を用いて、温度上昇や冷却効果に関して理論と実測を比較し、高精度な補正方法を解明しました.
組蓄電池に、形や大きさの異なる冷却装置を自作実装し、セル間の温度ばらつきや最大セル温度、冷却効果を比較解析し、蓄電池を長寿命化するための条件を解明しました.

リチウムイオン組蓄電池空冷実験
3.今後の展開
蓄電池の熱解析と温度管理に関して様々な技術蓄積を行いました.しかし、より有効な解析手法、温度管理、空冷技術の実現にむけて引き続き研究を進めます.