研究キーワード
対象研究室の研究対象に関わるキーワードです 手法研究室で用いる研究手法に関わるキーワードです
循環型社会:
本研究室の名前にも使用している重要な概念=持続可能な社会に向けた一つの社会像を表す言葉です。リデュース、リユース、リサイクル(3R)に象徴される資源・廃棄物の循環だけでなく、自然界における炭素や栄養塩の循環、社会における人と人との循環など、より広がりをもった社会像として語られることもあります。研究室の英語名としては「Sustainable Resource and Waste Management」を用いていますが、循環型社会の肝は「自然の循環を乱さないような物質利用」、すなわち「持続可能な資源・廃棄物管理」を確立することです。本研究室では、主にシステム論的なアプローチから、循環型社会の構築に役立つ研究を志向し、これを行っていきます。
資源・廃棄物管理:
「質量保存の法則」からすると、私たちが天然資源を採取して利用すれば、それはいずれ気体・液体・固体のいずれかの廃物(廃ガス・廃液・廃棄物)となって環境中に戻ることになります。環境への廃物の排出を減らそうと思うと、究極的には天然資源の採取を減らすしかありません。一方、世界的な天然資源の不足は今後避けられませんから、その観点で天然資源の利用を減らすことも必要です。つまり、資源のライフサイクル全体を捕らえて、資源管理と廃棄物管理を統合的に行い、資源のフローを小さくしていくことが求められています。本研究室では、できるだけこの大きなシステムの全体を捕らえながら、持続可能な資源・廃棄物管理やその評価の手法に関わる研究を行っていきます。
3R:
リデュース(Reduce)、リユース(Reuse)、リサイクル(Recycle)という廃棄物管理の優先順位を示したものです。まず、廃棄物を発生させないこと、次に、廃棄物となった製品や部品については、できるだけそのまま再活用すること、そして、それが難しければ原材料として再資源化すること、を標語としたものです。3Rの下には、さらに、エネルギーとして回収すること、それらができなければ適正に処理すること、が位置づけられます。もともとは廃棄物管理の優先順位を示したものですが、天然資源の消費を削減する観点でも有効な考え方であり、資源・廃棄物管理の優先順位を示したものと考えることができます。本研究室では、様々な3Rのシステムが適切かどうかを検討していきます。
再生可能資源・非再生可能資源:
再生が可能かどうかで資源を分類したものです。再生可能資源には、生物、水等の資源のほか、太陽光、風等が含まれます。私たちが使っているほとんどの資源、つまり、化石燃料や金属鉱物は非再生可能資源になります。ハーマン・デイリーの法則によれば、①再生可能な資源の利用の速度は、その再生の速度を上回ってはならない、②再生不可能な資源の利用の速度は、再生可能な資源を持続可能な速度で利用することで代用できる限度を超えてはならない、とあります。②の原則は少し難しいですが、本研究室では、このような原則を念頭に置きながら、様々な再生可能資源・非再生可能資源を対象として、その持続可能な利用の方策について検討していきます。
エコ効率性:
人間の要求を満たすにあたって地球の環境資源をどれだけ効率的に利用しているかを表す指標で、一般的には「産出」を「投入」で除したものです。「産出」とは、ある製品、企業、産業、もしくはある国の経済全体が生産したサービスや財であり、「投入」とは、それらが生み出す環境圧迫となります。エコ効率性は、概念的にはエコロジー的な効率性とともにエコノミー的な効率性を含みます。投入を天然資源等の利用量で表した場合には、資源生産性と呼ばれ、日本の循環型社会形成推進基本計画においてもこの指標が採用されています。本研究室では、このような指標を循環型社会構築に向けた評価手法として位置づけ、その開発と分析を行っていきます。
物質フロー・ストック分析:
その名前のとおり、物質のフロー・ストックを分析します。私たちの経済社会における物質フローや物質ストックを把握し分析することは、循環型社会の構築に向けた基盤的な研究活動です。物質フロー・ストックを把握する際の基礎は「質量保存の法則」という極めてシンプルな原則ですが、実際に分析を行うと、これを成立させるのが意外と困難であることが分かります。本研究室では、経済社会の物質フロー・ストックを把握し、さらに、そのシナリオを検討することで、持続可能な資源・廃棄物管理の方法を検討していきます。
ライフサイクルアセスメント:
環境をシステムとして捉えて分析し、解決策をシステムとして提案するということが「環境システム工学」の理念だと思います。ライフサイクルアセスメントは、そんな「環境システム工学」の典型的な分析手法と言えるでしょう。製品のライフサイクル(一生)を通じた環境影響をアセスメント(評価)する手法として発達してきましたが、その肝は、目の前に見える問題だけでなく、目に見えないところで発生している問題も含めて評価を行うということです。本研究室で行う研究では、この間接的な影響をきちんと分析の範囲に含めていきます。
産業連関分析:
その名前の通り、産業の連関を分析します。ここでいう連関とは、各産業部門間の投入(input)と産出(output)であり、英語では投入産出分析(Input-Output Analysis)と呼ばれます。物質フロー・ストック分析も、対象とするシステムにおける投入と産出のバランスを見る分析手法であり、ライフサイクルアセスメントも、製品やサービスのライフサイクルでの資源の投入と環境負荷の産出を分析する手法ですから、これらの分析手法には密接な関係があります。産業連関分析の特徴は、経済全体を対象システムとする点であり、本研究室では、これを環境の分析に拡張します。
環境会計:
会計というくらいですから、これも収支(収入と支出のバランス)を分析します。ただ、貨幣単位の収支だけなく、貨幣換算しにくい物量単位の収支も含めた分析であることが特徴です。環境会計は、国・地域・企業・工場等の活動が環境や自身の経済活動へ及ぼす影響を定量的に記録・分析・報告するシステムです。費用便益分析も概念的には近いと言えるでしょう。どれだけのコストをかけて、どのような効果があったのか? 本研究室では、それをどのように記録・報告するのかという手法の開発と、その適用を行っていきます。
シナリオ分析:
今の時代、未来を正確に予測することは極めて困難です。未来は不確実であり不透明であることを前提としなければなりません。こうした状況においては、起こりうる未来を複数想定してそれへの対応を考えておくことが重要です。これが「シナリオ・プランニング」です。未来の資源・廃棄物管理を検討する上でも、未来の経済社会の状況や物質フロー・ストックのシナリオを複数想定してこれを分析することが有益です。本研究室においても、本質的に異なるシナリオを想定し、システム思考に基づいて分析を行い、対策を考えていきます。
アンケート調査と統計分析:
環境配慮行動に関わる人々の意識や行動の促進策を検討するために、アンケート調査等を行いますが、その時に多変量解析等の統計分析を用います。研究室で主として用いるのは、分散分析、重回帰分析、因子分析、クラスター分析、数量化理論などです。近年、パソコンの発達によって容易に分析結果が得られるようになっていますが、分析手法についての理解がおろそかな場合、間違った解釈をしてしまう危険性があります。アンケート調査も、サンプルの取り方や質問の仕方によって結果が左右されますので、非常に奥の深い手法です。