毎年のように発生する洪水や土石流による落橋や流出など,近年,橋が水害により被災する事態が続いており,構造工学分野における水害対策の検討は必須の状況だと考える.洪水や土石流では水だけではなく,巨礫や土砂や流木など漂流物が流されてきて橋に衝突するが,これら漂流物に対する検討も遅れている.本研究の目的は,洪水や土石流などの水害に対する橋梁の安全性向上策を開発することである.この目的を達成するため,(1)災害時における橋梁周辺流れの解明,(2)橋梁に対する漂流物の影響評価の2テーマにしぼって集中的に研究する.流体力や漂流物の作用を軽減する方法と,桁下空間の閉塞を防ぐ方法について,数値解析と水理実験をもとに解決策を提案する.橋台背面裏込め土の洪水対策についても検討する.
2017年4月~2020年3月(3年)
洪水や土石流による落橋など,近年,橋が水の作用により流出する事態が続いている.2016年には8月末の台風10号による大雨で洪水や土石流が多発し,北海道や岩手県で多数の橋梁が流出したり落下したりした.橋台裏込め土の流出による落橋,基部の洗掘による橋脚の倒壊,土砂や流木による橋の埋没などが報告されている.さらに9月には台風16号で洪水が発生し,鹿児島県の国道橋が流出した.このような被害は気候変動による豪雨の増加とともに,ほぼ毎年のように発生する状況になっている.
また,洪水では水だけが流されてくるのではない.土砂や流木,場所によっては巨岩や氷など,漂流物が流されてきて橋に衝突する.JR北海道の第2谷間川橋梁では,2016年台風10号の際に土砂や流木で埋まり,横にオーバーフローした川の流れで盛土が流出するという広範囲の被害にあった.奈良県の国道168号にかかる折立橋は,2011年台風12号の際,流木がトラス部分に引っかかって流出した.水害による落橋や流出は,大半が中小河川に架かる小規模橋梁でよく発生している.小規模橋梁は地域住民が使う日常的な道になっているものが多く,通れなくなると日常生活にすぐに多大な影響を及ぼす.
1945年枕崎台風,2007年台風9号,2011年台風12号,2012年九州北部豪雨,2013年山口島根豪雨,2013年台風18号,2016年台風10号および台風16号,2017年九州豪雨,2018年西日本豪雨,2018年台風21号など落橋や流出が発生した自然災害について,資料を収集する.
橋梁に対する水の作用に関する実験的な検討を行う.洪水を模擬した水理実験を実施し,橋台裏込土や橋桁への作用について検討する.
橋梁に対する漂流物の作用に関する検討を行う.流木を模擬した木片を用いた流下実験と,数値解析解とを比較する.流木除けなど,昔から伝わる減災の知恵と位置づけられる対策も含め,漂流物対策を検討する.