Excelの基本・データ処理


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(1)Excelって何?

Excel(エクセル)は,Microsoft社のアプリケーションソフト(応用ソフト)で,表計算ソフト(英語ではspreadsheetという)と呼ばれるものの一つである.表計算ソフトとは,縦横マス目の並んだシートにデータを入力して様々な方法で集計したり,数式を入力して複雑な計算をしたり,入力されたデータや計算結果からいろいろなグラフを描くことができるソフトのこと.単純な計算から関数計算,グラフ作成まで多様な作業をこなす事ができる.さらに,データベース(データをコンピュータが処理しやすい形に蓄積したもの)としての利用,いくつかの処理を自動化する「マクロ機能」,「VBA(Visual Basic for Application)」と言う開発言語を使ってプログラムを組んだり簡単なゲームを作ることもできる.今回の演習は,サンプルデータを使って基礎的な統計処理やグラフ作成を経験する.「マクロ」も少しだけ扱うが,「VBA」については,興味があれば自習してみよう.

ファイルの読み込み・保存・印刷・日本語変換などは,この授業の始めに習った「Word」による文章作成のときと同様の操作を行う.WordもExcelも同じMicrosoft社のアプリケーションソフトとして,「Microsoft-OFFICE」と呼ばれる統合ビジネスソフトウェアの主要なツールとなっている.なお,Excelの細かい操作方法全てについて授業で説明する時間は無い.授業で説明しきれなかった細かい操作方法や裏ワザ等については,Excel「ヘルプ」メニュー(Excel画面の上にあるメニューバーの右端)や以下のホームページなどを参考に自習をすること.
エクセルへの近道
kenzo30
エクセルの勉強部屋

(2)サンプルデータを使ってみよう

それでは,早速サンプルデータを使ってみよう.下のリンクを右クリックしその中の「名前をつけてリンク先を保存」(または,「対象をファイルに保存」)を選択,ファイルを,デスクトップ上または各自で用意したUSBメモリに保存しよう.保存する際に「waste.xlsx」と名前をすべて記述すること.書き忘れるとエクセルで開けなくなるので注意すること.

waste.xlsx

コピーした「waste」のアイコンをダブルクリックしてみる.Excelが起動し,縦横マス目にぎっしり数字が記入された表が画面に表示される.紙で使う「縦横の集計表」をイメージしてみよう.ひとつひとつのマス目のことを「セル」と呼び,マウスでクリックして選択したセルのことをアクティブセルと呼ぶ.マウスでクリックしてセルを選択する(アクティブセルにする)ことで,セルの中に文字や数字や数式を入力できる状態になる.Excelでは,最大で「縦方向1,048,576行×横方法16,384列」のセルの集まりが1枚のシートになっている.このシートのことを正式にはワークシートと言い,ワークシートは必要に応じて追加できる.ワークシートを何枚か綴じたものを「ブック」よ呼び,ひとつのブックがひとつのファイルとなっている.ちなみに,左上の「ファイル」メニューから「新規作成」を選び,OKボタンをクリックすると,白紙のワークシート3枚が綴られた新しいブックが出てくる.既存のExcelファイルをダブルクリックしないで,Excelアプリケーション・アイコンをダブルクリックしても,同様に新しいブック(白紙のワークシート3枚入り)が出てくる.白紙のワークシートには,「Sheet1」,「Sheet2」,「Sheet3」という名前が自動的につけられている.画面左下の見出し(シート左下端から少し出っぱっているところ)をクリックすると,それぞれのシートが表に出てくる.

 さて,改めて,「waste」というサンプルデータ(はじめに呼び出したExcelファイル=ブック)をながめてみよう.新しいブックを新規作成して白紙のシートが見えているときは,「ウィンドウ」メニューから「waste」を選べば再び縦横マス目にぎっしり数字が記入された表が再び出てくる.この「waste」というブックには,2枚のワークシートが綴じられている.左下端の「1994年度」や「1991年度」と記された見出しをクリックすることで,異なるデータが見えるようになっている.いずれのシートも1行目に変数名・単位が入力されており,2行目から数値(データ)が記入されている.1行が1サンプル(標本)のデータの集まりであり,このファイルにおけるサンプル(標本)とは「日本全国の市制自治体」である.対象標本数は657,すなわち,この「waste」というExcelファイルには,日本全国の657の市制自治体における様々な地域特性がデータとして集計されている.3行目の「札幌市」から658行目の「沖縄市」までびっしりデータが入っていることを,右側のスライドバー(縦方向)をマウスでドラッグしながら確認してみよう.右下のスライドバー(横方向)をマウスでドラッグすると画面が横に動くが,データの入っている列数(行と直角に並ぶ縦の列の数)が少ないので,少ししか見えない.これからいろいろな計算を進めてデータの入る列数が増えると,右下のスライドバー(横方向)が活躍するようになる.

 このような地域データは,様々な社会調査によって集計された結果を誰か(多くの場合,公的機関もしくはそこから委託されたコンサルタント会社等のスタッフ)がコンピュータに入力したものである.入力された元データ(生データとも言う)を解析することにより,新たな地域計画やそれに基づく公共事業が企画されることになる.かつては,ごく簡単なデータ処理についても専門家によるコンピュータ・プログラミングを必要としていたが,現在ではあらゆる分野でExcelのような表計算ソフトが普及しており,専門的なプログラミングを知らなくても様々なデータ解析手法を駆使することができる.このExcel演習はまさに「専門的なプログラミングを知らなくても様々なデータ解析手法を駆使する」ための実践的なトレーニングである.扱うデータ(今見ている「waste」というファイル)は,本物である.地域(日本全国の市制自治体)ごとの社会経済特性の違いや環境側面(例えば,廃棄物の排出量など)について「本物の」データをあれこれ分析しながら,それぞれの地域における建設環境分野の将来を考えてみよう.

(3)マイデータの作成

 さあ,「本物の」データ処理に挑んでみよう.その前に,いきなり日本全国の657市制自治体(市だけでも本当はもっと多い.町村まで入れると3000以上)を相手にするのも荷が重い(かもしれない)ので,自分が生まれ育った都道府県(外国で生まれ育った人は,日本で住み始めた最初の都道府県にしよう.以下,「ふるさと都道府県」と記す)の自治体だけにしてのんびり作業を始めることにする.このような場合は,元のワークシートを「複製」してから必要なデータを絞り込んでいく.「waste」の「1994年度」というワークシートを表示させたまま,タブ上で右クリックして現れるメニューの「移動またはコピー」をクリックする.「シートの移動またはコピー」という小さなウィンドウが出てくるので,「コピーを作成する」にチェックを入れてからOKボタンをクリック.すると,新たに「1994年度 (2)」というワークシートが出てくる.中身は元の「1994年度」というワークシートと全く同じ.このようにして,ワークシートそのものの「コピー」を作ってデータ処理を進めることで,失敗したときや始めからやり直したいときにいつでも元に戻れる体勢を作っておく.

さて,いまコピーして新しくできたばかりの「1994年度 (2)」というワークシートの中で,ふるさと都道府県のデータを残しながら他のデータを消していこう.ひとつの自治体=ひとつのサンプル(標本)=1行というデータなので,ふるさと都道府県の自治体のデータが入っている行だけを残して,他の行をすべて「削除」する作業である.2列目(B列)の「自治体コード」の上2桁が都道府県コード(j北海道01から沖縄県47まで)になっているので,これを参考に探す.ワークシート左端に縦に並んだ数字が行の番号を表しており,この数字をクリックすることで,その行全体が選択される.例えば,左端の行番号の中から「5」をクリックすると,5行目(旭川市)が選択されて画面上の色が反転する.

このまま「編集」メニューの「削除」を選ぶと「旭川市の行」全体が消えて「室蘭市」が新しい5行目のデータとして上がってくる.なお,「編集」メニューの「削除」を選ぶ代わりに「クリア」→「すべて」を選ぶと,中身のデータだけ消えて空白のセルが残る.北海道出身の人は,札幌市を消すわけにはいかないので,もっと下の方の行で試すこと(もう遅いか).間違えて自分が生まれ育った都道府県の自治体データ(行)を消してしまった場合は,始めの「元のワークシートのコピー作成」からやり直す.失敗したワークシートは不要となるので,「編集」メニューの「シートの削除」でワークシート全体を消しておくこと.ワークシートがやたら増えると後でうっとうしい.

日本全国の657市制自治体からふるさと都道府県の自治体のデータだけを残すために,他の都道府県の自治体のデータを1行ずつ消していく?,600行以上もこつこつ消していく?,ということはない.例えば,滋賀県の自治体のデータだけを残すためには,いま札幌市を消したばかりのワークシートにおける3行目(函館市)から400行目(久居市)までを「一括選択」してから,「編集」メニューの「削除」を選ぶと「一瞬のうちに」大津市のデータが3行目(データの入った行の先頭)に飛び出してくる.後は,守山市のすぐ下の行である京都市から最下行の沖縄市までを「一括選択」して,「編集」メニューの「削除」を選ぶと「滋賀県だけのワークシート(7行だけ)」の出来上がりである.さてその「一括選択」の方法だが,例えば「5行目から16行目」を「一括選択」したいときは,左端の行番号の中から「5」をクリックして5行目を選択したままで,「shift」キーを押しながら左端の行番号の中から「16」をクリックする.これで,5行目から16行目までが連続的に一括選択されて画面上の色が反転する.選択範囲の上で右クリックして現れるメニューから「削除」を選ぶと,5行目から16行目までが一気に消える.一括選択する行数が膨大になって画面におさまりきれないときも,右側縦方向スライドバーを使ってスクロールしてから「shift」キーを押しながらクリックすることでOK.

このようにして,ふるさと都道府県の自治体のデータだけのワークシートができたら,ワークシートの名前を「1994年度 (2)」から「1994年度 (都道府県名)」に書き換えよう.左下端の見出しのところをダブルクリックすると,ワークシート名の色が反転して文字入力可能になる.Wordのときと同様の日本語変換機能を使って,自分が選んだ都道府県名を入力する.さらに,今までの作業を無駄にしないために,「waste」というファイルそのもの(ブック全体)を保存しておこう.「ファイル」メニューの「上書き保存」,「名前を付けて保存」のいずれでもOK.「名前を付けて保存」を選んで新しい名前のファイルを持っておく方が,いつでも元の「waste」ファイルが使えるという点でbetter.なお,日本語入力のOn-Offについていつも注意を払うこと.この後始める数値や式の入力では常に日本語入力Offとする習慣をつけた方がいい.数字は日本語モード(全角文字)で無理矢理打っても入るが,なんとなく気持ちわるいかも.

都道府県によりデータのある市制自治体の数が異なっており,4〜5行しかない都道府県から20行以上もある都道府県までいろいろだが,気にしないように.また,元データの整理の都合で始めから掲載されていない自治体もいくつかある.さらに,市町村合併等により現状とは異なる形で掲載されているデータもあるが,今回は細かいところを気にしないで演習を進めよう.もしも,自分が生まれ育った自治体の名前が無いときは,がっかりしないで近隣の市に思いを寄せよう.

(4)四則演算
 
 既に習ったように,Excelのワークシートの中では,数字や文字が記入された「ひとつひとつのマス目」のことを「セル」と呼び,マウスでクリックして選択したセルのことをアクティブセルと呼ぶ.マウスでクリックしてセルを選択する(アクティブセルにする)ことで,セルの中に文字や数字や数式を入力できる状態になる.試しに,空白のセルをクリックして「アクティブ」にした後,任意の文字や数字を入力してみよう.もちろん,Wordのときに身につけた漢字変換を使って日本語も自由自在.ちなみに,セルに入力している内容は,画面最上部メニューバーの下に随時表示されている.セルに何かを入力している最中は,この「セル内容表示部分」の左側に「v(チェック印)」と「×」が見える.入力中に「v(チェック印)」をクリックすると入力内容が確定し,「×」をクリックするとキャンセルされる.

 さてここからが本番.計算をしよう,計算,ようやく計算ができる.アクティブセルに入力するときに,まず半角文字で「=(数式で使うイコール記号)」を入れてから簡単な足し算を数式のまま入れてみよう.例えば,「=1+2」と入れてEnterキーを押すと,そのセルには数式ではなく計算結果の数値(この場合は,たぶん「3」)が表示され,アクティブセルはひとつ下の行に移動する.面白いのは,いま数式を入力したセルをクリックして中身を表示させてやると,メニューバー下の「セル内容表示部分」には「=1+2」が表示されているのに,セルそのものには「3」と表示されていることである.すなわち,セル内容の先頭に「=」がある場合は数式が入っていると見なされて,セルそのものには数式で計算した結果の数値が表れるということ.試しに,「=9*9」を入れると「81」が出てくるし,「=6/3」を入れると「2」が出る.キーボードには「÷」のキーがないので,割り算は「/(スラッシュと読む)」を使う.先に述べたように,数値や式の入力では常に日本語入力Offとする習慣をつけておこう.

 このような単純な四則演算だけだと,単に非常に高価な電卓に過ぎない.ここからほんとにほんとに計算計算,すごい計算が始まる.既に入力されてあるデータを組み合わせて思ったとおりに計算させてみよう(計算するのは,不平を言わないコンピュータ.ただし,文句(エラーメッセージ)は言うかもしれない).例えば,いま見ているマイデータ(ふるさと都道府県の自治体のデータ)の中の「面積」データの合計を計算してみよう.まず,「面積」の列(上に並んだ列記号の中の「D」列)の下の方の適当な空白セルをクリックしてアクティブ(入力可能状態)にする.「画面いっぱいで空白なんか無い」というときは,右側のスライドバー(縦方向)をドラッグして空白セルをみつけよう.この空白セルに「面積」の合計を計算して表示させるには,上に並んでいる「面積の列(D列)」のセルの数値をどんどん足していけばいい.セルに表示されている数字を改めて全部打ちこむ?,そんなことはない,それなら電卓使ったほうがまし.ここでは,「セルごと」どんどん足していこう.まず半角文字で「=」を入れてから数字の代わりに足したい数値が入っている「セル」をクリック. 例えば,「=」の後に「面積の列(D列)」の2行目のセルをクリックすると,セル内容表示は「=D2」になる.続けて,「+」を入力してD列3行目のセルをクリックすると,セル内容表示は「=D2+D3」に.さらに,「+」を入力してD列4行目のセルをクリックすると,セル内容表示は「=D2+D3+D4」に.こうやって,「+」を間にはさみながら足したいセルを全部クリックしていって,「セルごと足し算」の数式が完成したら,Enterキーを押す.おめでとう.面積の総和がセルに表示されました.

 自治体数(データが入っている行数)が4つ5つの人は涼しい顔をしているけど,20行も30行もある人は「ちょっとこまった」って顔をしてるかも?.とにかく,ここは我慢のしどころ.後になればなるほど楽になるのが情報処理演習.ここでは,なんとしても「セル」ごと足したり引いたり掛けたり割ったり自由自在に計算できることを身体で覚えよう.

 ところで,セル内容表示のところで,例えばD列4行目のセルが「D4」と表示されることを頭の隅に置いておこう.Excelのような表計算ソフトにおいて,データを入れるセルの「住所(番地)」がどのように扱われているかを理解することが,より高度なデータ処理能力を身につけるポイントとなる.京都市内の住所表記を連想してみよう.すなわち,四条通りと河原町通りが交差するポイントを「四条河原町」と呼ぶがごとく,Excelのすべての「セル」は列(A列から始まるアルファベット)と行(1行から始まる整数)で決められた番地でデータをやりとりすることができることを忘れないように.ちなみに,アクティブセル(マウスクリックして選択したセル)の住所は常にワークシート左上隅のところにひっそりと表示されている.ということで,なんだかんだ言いながら,まだまだ「手取り足取り」は続く・・・.

(5)平均値

 統計処理の基本は,標本集団の「平均と分散」である.この場合の「平均」とは,一般的には「算術平均」,すなわち,「各標本データの総和をサンプル数で除した結果」.さて,さっきからいろいろと計算を試し始めているマイデータ(ふるさと都道府県の自治体のデータ)の中で,「面積」データの算術平均を求めるにはどうすればいいだろう.さっきみたいに「セルごと足して足して」をして合計を計算して標本数(自治体数)で割る?,それはちょっとめんどう.

 そこで登場するのが「関数」という道具である.早速,算術平均を一瞬で計算してくれる「average」という関数を使ってみよう.さっきと同じように,「面積」の列(D列)の下の方の適当な空白セルをクリックしてアクティブ(入力可能状態)にする.まず半角文字で「=」を入れてから「average」という文字(半角アルファベット)を打ちこみ,さらに「(」,半角カッコ開ける印を打った後で「算術平均を求めるデータの入ったセル」を一括選択する.「面積」データなので,D列2行目のセル(D2)からD列でデータの入ってる最後のセル(D?)までを一気にドラッグすればOK.

ドラッグするにはセル数が多くて大変な場合は,いったんD列2行目のセル(D2)をクリックした後,「shift」キーを押しながらD列でデータの入ってる最後のセル(D?)をクリックすると一括選択完了.この「shift」キーを使った一括選択方法は,マイデータを作るときに複数行を一気に消したときと同じ.最後に「)」,半角カッコ閉じる印を打って「Enter」キーを押すと「算術平均」計算結果が現れる.

 同じ手順で,「average」の代わりに「sum」という関すを使えばデータの総和(さっきまで足して足してで苦労して計算してた),「counta」という関数を使えばデータの個数(正確には,空白でないセルの個数)が出てくる.「stdev」はおなじみ標準偏差,「max」は最大値,「min」は最小値.いずれも「関数名」の後の「()」半角カッコの中に対象となるデータの範囲を「セルごとまとめてドラッグして一括選択」することで,どんなに膨大なデータが相手でも一瞬のうちに計算結果が出てくる.じゃあさっきまでの「足して足して・・・」の面倒な作業はいったい何だったんだと言わないように.物事を知るには手順というものが・・・.

(6)割り算で地域の指標をつくる

 ここでは,再び基本的な「足して引いて掛けて割って」に戻ろう.といっても,もう「面倒な作業」ではない(はず).改めて,市制自治体ごとの社会経済特性データの意味を考えてみる.例えば,「面積」と「人口」のデータを見ているうちに「人口密度」という指標が思い浮かんでくる(?).さすがは,環境都市系.人口密度の高いところは都市的土地利用の割合が高いから収入も商店の売り上げも高いとちがうかなあと考えるようになってくる(?).物がたくさん売れるということは,ごみもたくさん出るのかなというところまで考えがおよんでくる(?).そうは言っても,人口が多い自治体の総収入金額が多いのは当たり前なような気もするし,人がいっぱい住んでいればごみも多いというのも特にめずらしくはなさそう・・・そうか,わかった.元のデータを人口1人あたりの比率として計算してみたら面白いかもしれない(と思うようになれば,一人前の環境都市系).

 ということで,ここではひたすら「割り算」マニアになりきる.名付けて,「割って割って割って割って延々と割り続けて考えてみよう,地域の社会経済指標」大作戦.これまでのように「縦方向にデータを組み合わせて(同じ列にあるデータを使って)計算する」のではなく,「横方向にデータを組み合わせて(同じ行にあるデータを使って)計算する」というところに注目.すなわち,標本ごとの(自治体ごとの)元データを組み合わせて計算することにより,標本ごとの(自治体ごとの)新たな変数をつくるということ.ここで言う「新たな変数」とは様々な地域の社会経済特性を表す地域指標である.

 まずは,「人口密度」.マイデータ(ふるさと都道府県の自治体のデータ)の中の2行目(最初の自治体)について,右端の空白セル(住所はM列2行)に人口密度の計算結果を表示させてみよう.例によって,始めに「=」を入れた後で「セルごと」割り算だから,「人口(E列2行)」/「面積(D列2行)」そのまんまセルをクリックしながら入力(=E2/D2)してEnterキーを押すと,出ました人口密度.単位はもちろん「人/km2」だから,1行目に単位を付け足しておこう.さて3行目(次の自治体データ)以降も同じ手順で人口密度を計算していこう.といっても,もう「面倒な作業がない」というのは約束通り.「今度は割って割ってを何十回も繰り返すの?」と思った人も大丈夫.便利な「コピー&ペースト」を身につけよう.

 既にワードを使った文章編集でおなじみの(はずの)「コピー&ペースト」だが,Excelの中の「コピー&ペースト」はさらに強力.早速だが,いま人口密度計算式を入力したばかりの2行目右端のセル(M列2行)をクリックしてアクティブにしよう.そのままアクティブセル上で右クリックし,「コピー」を選ぶ.そして,同じM列の4行目の空白セル(M列3行)をクリックしてアクティブにした後で右クリック,メニューから「貼り付け」を選ぶ.3行目の人口密度が計算できている.しかも,3行目の計算結果の数字がコピーされたのではなく,ちゃんと3行目の人口密度計算式(=E3/D3)が「セル内容表示」に出ている.Excelでは,中身が計算式のセルをコピー&ペーストすると,計算結果の数値ではなく「計算式」そのものが「計算対象セルの相対的な位置関係」を保ったままコピーされるということ.とにかく,言葉で理解するよりも身体で覚えよう.何が起きているのかが解るまでひたすら「セルごとコピー&ペースト」を繰り返してみよう.


(7)連続一括計算

 「コピー&ペースト」を理解したとは言え,何十行にもわたって(全国データだと657行!)コピー&ペーストするのは結局「面倒な作業」じゃないか?.大丈夫,約束通りイージーな道はいつでも開かれている.コンピュータというものは基本的に面倒くさがり屋が発展させてきたものであり,「どうすればもっと楽ができるか?」という気持ちを忘れなければ,情報処理能力はどんどん磨かれていく(勉強しなくていいということではない,誤解しないように).「えーっ,ひとつひとつコピー&ペーストして地道に作業してしまいました.どうして,いつも便利なやり方を後になって教えるのですか?.」と言っている人の努力も無駄にはならない.人生は長い.3行目以降の人口密度計算を瞬時に完成させる方法は,以下の通り.始めに人口密度計算式を入力したセル(M列2行)をクリックしてアクティブにした後で,「shift」キーを押しながら同じ列(M列)の一番下のセル(データの入っている最終行のセル)をクリックする.これで,人口密度の計算結果を出したいセル全部を一括選択したことになり,一括選択範囲の先頭に計算式が入力済みの状態となっている.ここでおもむろに, キーボード左下にある「Ctrl」キー(コントロール・キーと呼ぶ)を押しながら「D」を押す

 何が起きたか解ったかな?.人口密度の計算結果が表示されているセルをひとつひとつクリックして,「セル内容表示」を確かめながら何が起きたかしっかり理解しよう.今使った方法は,「下への連続コピー」.一括選択された複数セルを対象に,いちばん上の行のセル内容を縦方向下に向かって連続一括コピーするという「表計算ソフト独特のセル連続コピー」と覚えておこう.「Ctrl」キーといっしょに押した「D」は「down」の「D」.世の中,縦があれば横もある.一括選択された複数セルを対象に,「いちばん左の列」のセル内容を「横方向右に向かって」連続一括コピーするというコンビネーションも用意されている.面積の合計や平均値を計算したセルを使って確かめてみよう.画面の下の方にある既に計算式入力済みのセル(面積の合計などを計算したところ)をクリックした後で,「shift」キーを押しながら同じ行の右端セル(さっき計算したばかりの人口密度列の下の方)をクリック.どきどきしながら(というほどでもないが),「Ctrl」キーを押しながら「R」を押す.もはや説明不要.もちろん,「R」は「right」の「R」.

  いろいろやっているうちに, 「########」のような「桁がオーバーフローして数値が表示されないセル」が出てくるかもしれない.そのときは,「足したり引いたり掛けたり割ったり」で習ったように,「セルの横幅(列の幅)」を広げてやるとOK.それから,小数点以下の桁数がやったら多くなってうっとうしいときは,「書式」メニューの「セル」を選び,「表示形式」を「数値」として「小数点以下の桁数」に適当な数字を入れればOK.実は,小数点以下の桁数をコントロールするための「らくらくボタン操作」が画面上方に並んだ印の中に隠れている.たまには自分で探してみよう.

(8)データの並べ替え

 ついでに,「データの並べ替え」というのも知っておこう.例えば,いま見ているマイデータの中で「いちばん面積の広い自治体」をどうやって探すか?.「目で見たらわかる?」・・・確かに,4つ5つからせいぜい20個ぐらいのデータ見ていちばん大きい数値を探すのにコンピュータは不要.でも,日本全国657市制自治体のデータから各変数(社会経済特性)の最大や最小を目で見て探す?.そうそう,最大見つけるなら「max」,最小見つけるなら「min」という関数を使えば簡単.じゃあ,君の故郷の街の「1人1日あたりのごみ排出量」が国内の都市で何番目に多いかを知るには?.

  そこで登場するのが,メニューバー「データ」のところの「並べ替え」.マイデータの入っているワークシート左端の「行番号」クリックで自治体データの入っている行を一括選択しよう.まず,2行目(いちばん始めの自治体データ行)の行番号(2)をクリックした後で, 「shift」キーを押しながら最後の行(いちばん下の自治体データ行,その下の合計や平均値を計算した行は入れない)の行番号をクリック.このような,「データ並べ替え対象を一括選択」した状態で,「データ」リボンを選択,「並べ替え」をクリック.

  「並べ替え」という小窓が開く.並べ替え小窓の右上にある「先頭行」のところで「データ」が選択されていることを確認し,選択されていない場合にはクリックして選択する.最優先されるキーのところを「面積」とする.そのすぐ右の並び替えのキーは「値」とし,順序では「降順」を選ぼう..これで「面積(D列の数値)の大きいデータ(自治体)から順に並べ替える」準備が整った,最後に「OK」ボタンを押す.

  何が起きたか解ったかな?.面積の数値のところだけが大きい順に動いたのではなく,面積の数値の大きさの順番に従って,自治体名も他の変数も連動して「行」ごと順番が並べ替えられたところに注目しよう.これで,データ数が何百でも何千でも何万でも「君の故郷○○市の1人あたりの預貯金残高は,日本の市制自治体の中で何番目に多い?」という問いに瞬時に答えられるようになった.聞きたくもない話かもしれないが,情報処理演習の成績評価が「A+」になるか「A」になるか,はたまた「?」か「?」か,よもや「?」には・・・などという極限状態においても,この「データ並べ替え」は本領発揮している.



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