- 研究概要
- 「建築情報技術の利活用による人間科学をふまえた建築都市デザイン」
CAD・CG・BIM・GIS・シミュレーション・機械学習・心理統計を用いた計画手法の構築に関する基礎・応用研究を行っています。主に,①空間の定量化及び数理的計画,②心理実験・行動観察の統計処理による空間認知・行動特性の把握,③空間の定量化に②を反映させることによる空間認知の推定とデザインの提案,について取り組んでいます。
空間デザインに関する研究には,人がある地点に立った時に何がどれくらい見えて,見たものにどのような印象を抱くのかを推定し,印象評価が高くなるようなデザインをパソコンの中で予め検討する,という例が挙げられます。
都市計画に関する研究では,病院をどこに配置すると地域全体の救命率は最も高くなるか,人が人を助けるという行為の確率に応じてAEDはどこにいくつ必要なのか,といった例が挙げられます。
- 研究室紹介
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- 研究テーマ
- 「3次元モデル・画像処理を用いた空間の定量化」
- 「空間認知・心理評価の可視化と推定」
- 「シミュレーションやオペレーションズ・リサーチを用いた計画」
- メッセージ
- 「建築情報技術の未踏の可能性
-建築都市デザインの新天地へ,未来の可能性の想像と試行-
」
今,目指していること誤解を恐れずに短く表現するならば,「建築家を殺す,建築を殺す」です。この意図を記して研究者からのメッセージとします。
建築都市デザイン分野に限らず,情報技術に大きな関心が寄せられています。機械学習・深層学習といった要素技術からなら人工地知能が顕著な例でしょう。
デザインと称される分野においても例外ではありません。デザイナー・建築家は人工知能に殺されない聖域とする言説もありますが,そうでしょうか。パソコンの中に作られたシステムは将棋や囲碁をするだけなく,絵を描いたり,作曲したり,物語を書いたり,いわゆる創造と称される行為をはじめました。勿論,未完成の部分も多く,過去の学習セットの延長と言えばそうです。しかし,これにより特定の優れた作家をパソコンの中に誕生させることが出来るかもしれません。そうしたら歴史上著名な作家二人で共作して貰うことも出来るかもしれない,そう考えると何が生まれるのか,ワクワクしてきませんか。
これは建築家には当てはまらないのでしょうか。そうかもしれませんが,他分野と比して研究自体が少ないのが現状です。たとえ建築家には適用出来ないとしても,人工知能の冬の時代にも研究を蓄積させ人工知能を社会に届けた研究・研究者のように,遠い将来の礎にはなるかもしれません。研究業績にあるような近い将来に役に立つための工学的な研究だけでなく,未踏の可能性に挑み,もしかしたら頓挫してしまうかもしれないけど,新境地を拓くかもしれない,そんなワクワクする研究にも取り組みたいと思っています。
つい長くなりましたが,殺されるかもしれない対象は建築家だけでなく,建築都市そのものにも当てはまるかもしれません。仮想空間への没入技術・感覚共有を一例に,個人の体験の検索と共有を目指す技術が飛躍的に進歩するなか,物理的に存在する建築都市はVR・AR・MR・感覚刺激に殺されるかもしれません。今や触覚は電気的な刺激により機械的に再現されています。これらの技術を受け,仮想空間を対象とした建築家が誕生するかもしれません。実はこのような仮想空間デザインを今のデザイナー,特に建築家が行うことは困難かもしれません。物理・法規・コストといった制約を受けない中で,人が快適と感じる空間とは?を純粋に問い空間を創造することは,これまでの建築都市デザインとは似ているようで異なるからです。10年後,20年後の空間デザインとは?建築とは?建築家の役割とは?このようなSFのような可能性についても楽しみながら真剣に取り組みたいと思っています。
ただ,「建築家を殺す,建築を殺す」ためには建築家,建築というドメインを読解する必要があります。高度な思考を行う建築家,建築家がアウトプットする総合芸術である空間を読み解き,尊敬を持って殺すような研究をしたいと思っています。また矛盾するようですが,実はこのような取り組みが大好きな建築家と建築の価値を相対的に高めること,活かすこと,とも思っています。
長々と書きましたが,このような思いも持ったのがここ2年のことであり,まだ何も出来ていないのが本当のことです(笑)