内閣府SIP第2期フィジカル空間ディジタル処理基盤サブグループIII

CPS構築のためのセンサリッチ柔軟エンドエフェクタシステムの開発と実用化

(2018年度~2022年度)

 

研究責任者

川村貞夫 立命館大学 教授

株式会社チトセロボティクス 取締役 副社長

 

共同提案者

古川英光 山形大学 教授

金岡克弥 株式会社人機一体 代表取締役 社長

西田亮介 株式会社チトセロボティクス 代表取締役 社長

 

 

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本プロジェクトの趣旨にご賛同いただきご協力ご支援を頂いている企業様

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プロジェクトの背景

状況

製造業を中心に多くのロボットが利用されている.多くの場合は,ロボットの作業環境を確定化し,大量に同一製品を製造する.また,ハンドリング作業では対象物の形状は,剛体で定型である場合が多い.このような条件に合致せず,ロボットによる自動化が困難な現場も多く存在する.その結果,労働生産性の低い産業現場となっており,今後の我が国の労働人口減が深刻な問題を発生すると予想される.

 

問題分析

ロボットでの自動化が遅れ,労働生産性が低い作業現場の特徴を以下と分析する.

  • 多品種少量生産で段取り変えが多く,大規模製造ラインとして実現できない
  • 現状の剛体ロボットの教示再生方式では不確定な環境へ対応できない
  • 対象物の多様な形状,柔軟性,摩擦などの特性や作業の高速性の要求の理由からハンドリングが困難となる

 

工学的問題設定

このような問題を工学として分析して問題として以下のように整理する.

 

①認識問題

多種多様な対象物と取り扱く必要がある.また,大規模な工場ではなく小規模で変動する環境が多く,ロボットの外部の環境認識を従来よりも高度に達成する必要がある.このために,一般にセンサの種類と数を増やす必要がある.さらに,得られたデータに基づく認識技術が必要となる.

 

②機構/制御問題

多様な形状,多様な粘弾性/摩擦特性を有する対象物を確実に把持する必要がある.現状の工業用ハンドでは,達成できない.さらに,多くの場合に高速性が必須条件となっている.

 

③実用化問題

弁当製造などを想定すると最終的な商品の価格の上限が設定され,内容変更が頻繁に生じるので,高価格な自動化システムの導入は困難であり,自動化システムを低価格で実現する必要がある.また,製造数が多く時間制約があるため,高速作業が要求される.自動化システムの運用,保守点検などの担当者を置けない小規模事業や現場が分散する場合などがある.

SIPプロジェクト

本プロジェクトは,内閣府SIP第2期 フィジカル空間ディジタル処理基盤 サブグループIII「CPS構築のためのセンサリッチ柔軟エンドエフェクタシステムの開発と実用化」である.前述の問題が複合的であるので,本プロジェクトでは以下のような複合的な解決法を提案している.

 

①認識問題解決

・積極的接触利用による変動環境認識

エンドエフェクタ(ハンド)を柔軟化して,変動環境から生まれる幾何情報誤差を柔軟性によって吸収し,ロボットと対象物間に大きな力の発生を避ける.また,逆に積極的に対象物や環境に機械的接触から画像では得られない粘弾性や摩擦などの情報を取得する.

・力/接触の情報を加えたAI/IoT技術

従来の視聴覚情報に力/触覚情報を加え,エッジコンピューティングによる認識やクラウドでの認識を行う.

 

②機構/制御問題解決

・柔軟体の構造設計法

高分子材料を利用してハンドを柔軟化する.その際の,柔軟体の構造設計法を開発する.この結果を用いて空気圧駆動のソフトハンドを開発する.

・摩擦現象の確実化技術

油や水が付着した場合の対象物体の摩擦係数を安定化させるために,高分子材料の材料選定や表面形状設計技術を開発する.

・多次元データ入手のためのセンサリッチ技術

ハンドに種々のセンサを装着して,フィジカル空間の情報を多く入手することによって,困難とされてきたハンドリングと実現する.モータ駆動の場合にトルクセンサ利用による柔軟化を実現する.軽量柔軟な高分子材料センサを開発し,力/触覚情報を入手する.

・ビッグデータ/IoT活用による確実化技術

AIなどを利用して,確実なハンドリングを達成する.

 

③実用化問題解決

・プリンティッドエレクトロニクス技術

柔軟ハンドなどに適したセンサや配線をプリンティッドエレクトロニクス技術により実現し,小型軽量化と利便性の向上を図る.

・高度3Dプリンタ技術

マルチマテリアル3Dプリンタを利用して,多様な粘弾性材料を利用した複雑構造体を製作する.

・IoTによる保守点検技術

遠隔保守点検作業を可能とするようにIoT技術を利用する.

 

このように,本プロジェクトでは,材料,デバイス,システム,IoTなどの技術を統合して,センサリッチ柔軟エンドエフェクタシステム(以下SSESと記述)を開発する.以上の内容は,図1にまとめられる.

図1 研究プロジェクト概要

研究開発推進体制

本プロジェクトは,内閣府SIP第2期 フィジカル空間ディジタル処理基盤 サブグループIII「CPS構築のためのセンサリッチ柔軟エンドエフェクタシステムの開発と実用化」である.前述の問題が複合的であるので,本プロジェクトでは以下のような複合的な解決法を提案している.

図2 協力支援企業体制

 

協力支援企業としては,以下のような条件としている.

役割(以下の一つでよい)
・情報提供 ・材料提供 ・機器提供 ・技術者協力 ・実証実験フィールド提供 ・その他
条件
・NDAを結ぶ ・研究費負担なし ・知財発生無し ・参加をHP等で公表
メリット
・SIP協力企業としてSIP関連のHPなどに掲載
・公開シンポジウムなどに優先的招待
・実用化の優先順位が高い

分析された問題の各具体的課題は,図3に見られるように本プロジェクトの分野担当メンバーに振り分けられる.その結果,一つの課題に対して,図4のような1ユニットが形成される.

 

図3 ニーズ駆動研究開発

 

研究成果をまとめる際には,大学を中心とする各要素を統合して,試作レベルを完成する.次の段階の製造からユーザまでの実利用までは,共同メンバーであるチトセロボティクス,人機一体,協力支援企業が進める.このような推進体制によって,30程度のユニットが現在進行している.

図4 ユニット研究体制

活動状況

第2回公開シンポジウム

タイトル これからの食産業と食文化に科学と技術は貢献できるか?
日時 2020年9月28日(月)13:00~17:30
会場 オンライン開催(Zoomウェビナー) 事前受付制
定員 定員1,000名

 

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第1回公開シンポジウム

タイトル SIPシンポジウム ―食産業とIoT/ロボティクスが拓く、新たな潮流―
日時 2019年11月19日(火)13:00~17:40(懇親会18:00~19:30)
会場 第1~2部 京都リサーチパーク 西地区4号館 地下1階 バズホール・バンケットホール
第3部 京都リサーチパーク 東地区1号館 1階 アトリウム
定員 300名(先着順)
費用 第1~2部 無料(第3部 懇親会 1,000円)

 

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