マイクロマシニングを応用したセンサ、アクチュエータおよび微細機会システム(以後マイクロマシンと呼ぶ)が盛んに研究されている。現在の研究動向は、「いかに作るか」の段階から「何を作るか」の段階に入っているといえる。しかしながら、マイクロマシンの研究開発には半導体プロセスを基本にした高価な設備とそれらを使いこなす高度のプロセス技術が必要である。その結果、若手研究者が独創的なアイデアを持っていても、それを実証する段階で高い経済的な障壁が存在し提案段階で棚上げされているのが現状である。
一方、我が国の半導体プロセス技術は世界をリードする高い水準を有していることは周知の通りである。マイクロマシンの研究者がこの長年培った高度の半導体プロセスの技術資産を利用出来れば、高精度で信頼性の高いマイクロマシンの開発が可能となる。
そこで、マイクロマシンの研究者・技術者が集い、共同して半導体プロセスの技術資産を活用し、高水準のマイクロマシンを低コストで試作するための基盤整備を目指し1996年より本学会・E部門・マイクロマシン技術委員会内に「マイクロマシニング・マルチチップサービス共同研究委員会」(略してMMCS委員会)が設立され活動が開始された。2年間の活動を通じ、Bi-CMOSを用いたセンサ周辺アナログ回路ICの共同試作を実施し、またポリシリコン・サーフェスマイクロマシンの試作準備を行い、一定の成果をあげることが出来た。
本共同研究委員会はこれらの成果を基に、さらに機能向上を目指したマイクロマシン機能チップの開発基板の構築を図ることを目的にするものである。
このようなサービスとしては、米国Microelectronics Center of North Carolina (MCNC) の「Multi-User MEMS Processes(MUMPs)サービス」が最も有名である。高い水準のIC製造設備を有し、マイクロマシン、MEMSを含めた電子デバイス試作サービスを行っている。20以上の研究機関、大学の研究者が参加している。最近ではLIGAの試作サービスも行っているようである。欧州ではフランスのCircuts Multi-Projets(CMP)が商用サービスを行っている。CMOSを基本とし、サーフェスマイクロマシニング
異方性エッチングが利用可能である。またIMM(Institute of Microtechnology Mainz)が中心となりLIGAネットワークが作られ欧州10カ国の12機関が参加している。
一方、国内においては、1996年5月より東京大学に大規模集積システム設計技術教育研究センター(VDEC)(鳳紘一センター長)が設置され全国の国公私立大学、高専を対象にVLSIの試作支援サービスが開始された。
しかしながら、マイクロマシンを対象にしたこの種のサービスは現在国内では行われていない。欧米に比べ研究開発の遅れが懸念されるところである。
(1)マイクロマシン機能チッププロセスサービス基盤整備
(2)マイクロマシン周辺回路チッププロセスサービス基盤整備
(3)LIGAプロセスサービスの基盤検討
予想される効果.
(1)高価な半導体プロセス設備・装置の共同利用・活用
(2)リスクの分散、大幅な試作コストの低減
(3)企業、大学等研究機関 研究者の創造的研究の早期着手、促進
委員会活動.
委員会構成
委員長 杉山 進 (立命館大学)
幹事 庄子 習一 (早稲田大学)
幹事 前中 一介 (姫路工業大学)
委員 44名
活動期間:平成10年1月〜平成11年12月(2年間)
活動予定:委員会6回/年
会費:10000円(1人)/年