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手嶋研究室研究テーマ

立命館大学 理工学部 ロボティクス学科 手嶋研究室


研究室概要

手嶋研究室では、障害者及び高齢者に対する福祉工学の基礎的研究、及び、それに基づいた福祉機器の開発を行っており、「高齢者や障害者に優しい機器」の開発に必要な要素技術の解明を目指している。これまで行ってきた主な研究内容は以下の通りである。
Photo of Voice-control Wheelchair

音声認識装置の効率的な使用方法に関する研究

四肢麻痺者や高齢者にとって、音声入力は将来の有効な福祉機器の操作手段となりうる。しかし現状の音声認識装置では、登録したコマンドを認識するだけであり、コマンドを覚える必要があることや、音声のあいまいさ(人間の感性)の部分が反映されないため、使いやすいものにはなっていない。
そこで、人間のあいまいな音声指令に対して適切に判断することにより、効率的に機器を動作させるためのアルゴリズムの開発を行っている。最終目標は、「あれとって」と言われれば、「あれ」を判断して正しいものを持ってくるようなシステムを目指す。
現在は、@電動車いすを音声で動かすための効率的な操作法に関する研究およびAマウスカーソルの効率的操作法に関する研究を行っている。
 @では,音声認識ソフトウエアを搭載したパソコンを市販の電動車いすに接続し,様々な実験を通して効率的な操作法を解明しようとしている。これまでに,音声認識のための遅れ時間が車いすの操作性に悪い影響を与えること,比較的広い空間では慣れによってこの遅れ時間の影響をある程度除くことができるが,狭い空間では慣れても操作が難しく頻繁に衝突してしまうこと,この衝突を防ぐためにはユーザーが操作可能であれば非常停止スイッチのように即座に停止するスイッチが有効なことなどを明らかにしている。
 Aでは,音声認識ソフトウエアでマウス操作をできるパソコンを試作し,実験を行っている。これまでに,マウスカーソルを停止命令がくるまで動かす操作法では,時間遅れのために細かなカーソル操作が不可能であること,短い距離のマウス操作では一定距離を進んで停止する操作法が有効なことなどを明らかにした。

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Photo of Earring device

ファッション性を考慮した頭部操作デバイスの開発

四肢麻痺者がパソコンやロボットなどを操作する際に、頭の動きは最も有効な操作手段となる。しかし、頭の動きを測定する方法は、頭に不格好な装置をとりつけたり、その装置から信号やエネルギーのためのケーブルが延びていることがほとんどで、見た目も悪く、使用の際もケーブルの接続などで使いやすくない。そこで、見た目がよく、ワイヤレスで頭の動きを測定する入力装置の開発を行っている。
測定装置は、車いすのバックボードにおく発振回路と超音波受信回路、それと両耳に取り付けるイヤリング型のセンサより構成される。イヤリングは、コイルと超音波発振回路よりなり、超音波の伝播時間遅れからイヤリングの位置を計測するのが基本原理である。現在までにこの基本原理を確認する実験を終え、十分な精度で頭の動きを測定できることが確認されている。
本原理は、イヤリング以外の形状でも実現可能であり、男性用の測定装置も同じ原理で開発可能である。
なお、本研究は国立身体障害者リハビリテーションセンターとの共同研究であり,現在財団法人テクノエイド協会の補助を受けて実用化を目指している。

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聴覚障害者用コミュニケーション装置の開発

Photo of STENOPCON聴覚障害は、音声による情報が入手できなくなる点が最も重要な問題である。これを解決するため、音声を通訳者が手話や文字などに変換して伝達することが行われている。これを情報保障と呼ぶ。しかし、情報保障には、人手がかかること、いつでもどこでも利用できるわけではないこと、通訳者に健康問題が生じやすいこと、などの多くの問題がある。そこで、聴覚障害者のよりよい情報保障を実現するためのコミュニケーション装置として音声情報のすべてを即座に文字化して表示するシステムを開発し、ステノプコンと名づけた。
ステノプコンは速記を使用してすべての音声を記録し、記録された速記記号をパソコンを用いてリアルタイムで日本語文字に変換することにより、音声のリアルタイムでの文字化を実現している。このステノプコンは聴覚障害者団体の会合などを中心に、これまでに200回以上実験的に使用し、評価してきた。その結果、表示される文章中の漢字が少ないこと、長い間連続して読むと疲れること、コストがかかること、速記者という特殊技能者が必要なためいつでもどこでも使用できるわけではなく、大勢の聴覚障害者への情報保障に適していること、などの問題点が明らかになったが、基本的な有効性は十分に立証することができた。
なお、本研究は、国立身体障害者リハビリテーションセンターとの共同研究であり、一部は厚生省厚生科学研究費によって行われた。

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Photo about robot for eating noodle

食事用マニピュレータによる麺類摂食アルゴリズムの開発

四肢麻痺者は介護者に食事を介助してもらうが、自分のペースで食べられない、自分の好きな順番に食べられないなど、自分の意志で食事をしたいという要望は大きい。これを実現するために食事用マニピュレータが研究されている。しかし、まだ満足いくものとはなっていない。「あらゆる食べ物が食べられる」ことを実現するための研究のひとつとして、麺類摂食アルゴリズムの開発を行ってきた。特定のロボットに依存した形ではなく、一般化した形で各種の麺を食べるための実用的な方法を解明するため実験をおこなっており、確実性はまだ乏しいが、汁に浸った麺(うどん、そばなど)を比較的容易にマニピュレータを使用して食べることが可能になっている。しかし,麺類の好きなユーザーの要望は,途中でこぼすことも無く,残さずに最後まで食べることであり,そこまでの実現には至っていない.現在はビジョンを使わずに行っており,将来的にはビジョンの導入も含めて検討している.

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福祉ロボットの安全性に関する基礎研究

福祉ロボットは、障害者や高齢者の自立や介護者の負担の軽減を目的に、大きく期待されている技術であるが、実用化の際に最も重要な課題である安全性に関しては、まだほとんど研究されていないに等しいのが現状である。特に安全性に関する体系的な研究が不足している。そこで、福祉ロボットの安全に関する各種の検討を行っている。
現在までの成果としては、一定以上の力が加わったら受動的な機械要素だけでその力を逃がし,その力が除荷された際には緩やかに自動的に復帰する力制限機構を開発した(特許出願中)。現在はこれを使って人に衝突しても怪我をさせないマニピュレータの試作を試みている。

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福祉ロボットの心理的影響に関する基礎研究

福祉ロボットで重要な点のひとつは、福祉ロボットが使用者に受容されることである。福祉ロボットの動作が不安を覚えさせたり、不快感を覚えるようでは長期間にわたって使ってもらうことは難しい。また福祉ロボットの表面性状や形状も、重要な因子になると考えられてはいるが、実験的検討は十分ではない。
そこで、福祉ロボットが受容されるための動作や形状等に関する実験的検討を行ってきた。これまでに、ロボットアームを顔の直前で動作させ、顔までの距離や動作速度、ロボットアームの動きを見ているかどうか、などをパラメータとして、福祉ロボットの心理的影響を実験的に調べている。しかし心理面は個人差が大きく,一般的な結論を見出すことは容易ではない.

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ロボット形状の親和性に関する基礎研究

近年人型ロボットであるヒューマノイドがブームであるが,本当に人にそっくりなロボットが人間にとって受容し易いのかどうかを明らかにする調査を行っている.まだ調査方法に問題があるため厳密な結果には至っていないが,ロボット形状の好みには年齢・性別によって差があること,一般に女性や高齢者は人間そっくりなものよりはぬいぐるみのようなものを好む人が多いこと,顔の無いロボットを好む人も数十%はいること,などを明らかにしている.

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介助者用省力化装置の開発

寝たきり者を移乗介護する際の省力化装置の開発を行っている。危険で使いにくい大型介護ロボットでは役に立たないので,目標は介護者が腰にぶら提げて持ち運びできるような大きさで,使用時には簡単に介護者の補助をできる装置である。様々なアイデアをもとに多数の装置を試作しているが,現在までにはまだ十分な成果は上がっていない。

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Photo of Gait Training

機能回復訓練における意欲向上に関する研究

高齢者には機能回復訓練を積極的に行う意欲が欠けている人が多い。そこで,音声・音楽を使って高齢者の歩行訓練の意欲を促進し,高齢者がいつのまにかつらい訓練をしているような機器の開発を行っている。これまでに,理学療法士の訓練時の声かけの分析をもとにどのような声かけが有効かについての検討,高齢者の意欲向上測定法の検討,高齢者歩行訓練における音楽の影響の検討,高齢者歩行における意欲測定方法の検討などを行っている。
なお,本研究の一部は厚生科学研究費によって行われている.

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Photo of Experiment about Amusement for the Elderly

高齢者に適したアミューズメントに関する研究

これからの超高齢社会において,高齢者用アミューズメントは一つの大きな産業になりうるであろう。しかし,現在の高齢者のアミューズメントは,ゲートボールやパチンコ,TV,俳句や囲碁など限られている。高齢者用のアミューズメント作成するには高齢者の特性を考慮したアミューズメントの要素技術の解明が必要であろう。
これまでに,高齢者に適するアミューズメントに関するいくつかの仮説に基づいて機器を試作し,高齢者に遊んでもらい評価した。まだ断定できる結果は出ていないが,いくつかの知見を得ており,分析を進めている。
例えば,改造して高齢者にも遊べるようにした「イライラ棒」ゲームで痴呆のある複数の高齢者に遊んでもらったところ,失敗して鳴る大きな音のベルによって注目していなかった周囲の高齢者が注目するようになり,コミュニケーションが促進されるなどの効果が確認できた. また,健康な高齢男性にラジコンを使って遊んでもらった結果,ほぼ全員が楽しく,今後も遊んでみたいと答えており,高齢者がこれまでにラジコンに触れる機会が無かったために遊ばなかっただけであり,ラジコンのような遊びでも一定の配慮すれば高齢者にも十分楽しめることを確認した.

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断端の動きによる電動義手の制御法に関する研究

筋電義手は発汗時に動作が不安定になり易いなど多くの問題点がある。それを解決することを目的に,前腕の断端の筋肉の動きを制御信号として電動義手を操作する方法を提案し,試作・実験を通して評価を行った。現在の方法ではまだ誤動作が多く実用には時間がかかるが,その潜在的可能性を明らかにした。

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高齢者の座位保持装置に関する研究

車いすを使用している高齢者の多くは正しい座位が取れていない.肢体不自由者に対する座位保持装置にはいい製品が販売されているが,必ずしも高齢者に適するものではない.本研究では高齢者が車いす上で正しい座位を取るための簡便な装置の開発を目的としている.まだ始めたばかりであり,さまざまな疾病を持った高齢者の座位姿勢データの収集から行っている.

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高齢者に適するパソコン用入力装置に関する研究

近年高齢者にもITブームが高まり,多くの高齢者がパソコン教室に通い始めた.しかし高齢者にはパソコンを習得しにくいさまざまな障壁がある.そのひとつがキーボードである.本研究では高齢者に適したパソコン入力装置を開発することを目的として,高齢者にいくつかの入力装置を使ってもらう実験を通して検討を行っている.

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ご意見・ご感想等をtejima@se.ritsumei.ac.jpまでお願いいたします。
Last modified: Mon July 16 2001