2016.12.26

スマートウェアを身につけるとどんなことがわかるの?

Q:スマートウェアって、なんですか?

スマートウェアとは、さまざまなセンサーを組み込んだシャツのことです。これを着ているだけで、心電図、体温、発汗量、呼吸、関節角度などを測ることができます。

▲様々なセンシング機能を持ち、外部とは無線で通信する
 photo:http://www.activeforall.jp/project/project01/ より

Q:ということは、シャツにいろいろな計測機械が付いている?

そんなシャツは着心地が悪くて、誰も着たいとは思わないでしょう。センサーは、伸び縮みしやすくて導電性のある素材でできています。これを薄くプリントするだけなので、シャツを着ても違和感はほとんどありません。

▲センサーはとても薄いので、肌に触れても気にならない

Q:計測したデータは、どのように処理するのでしょう?

小型の発信機を使い、無線通信(Bluetooth)でスマホにデータを送ります。だからスマホをみれば、心拍数や体温などを知ることができます。開発中のスマホ用アプリケーションを使えば、様々な人の健康管理に役立てることができます。研究に協力してくれている、大学院生の鶴見拓人さんと研究員の坂上友介さんの一日を通して、スマートウェアの使いみちを紹介しましょう。

▲左から被験者の鶴見拓人さん、共同開発者の坂上友介さん

起床

目が覚めると、まず体温と快眠度をチェック。といっても体温計や特別な計測機器は使ったりすることはありません。データはスマートウェアから自動的にスマホに送られているので、それを見るだけ。就寝中の心拍数から読み取られる快眠度はばっちり良好、今日も一日気分良く過ごせそうです。

測定テスト

スマートウェアを身につけた鶴見君に、ランニングマシンの上を走ってもらいます。チェックしているのは、シャツにプリントしたセンサーの状態です。心電図の波形を見て、ノイズの有無やセンサーにずれなどがないかどうかを調べています。

授業中

一生懸命に体を動かすと、どうしても疲れてしまいます。だから、その後の授業がやばい。じっと座っていると、襲い掛かってくる眠気に耐えられなくなってきて……。おっと危ない! 居眠りしたりすると心拍数が変わるから、モニタリングしている坂上さんにすぐにバレてしまいます。

休み時間

人の心拍数を見ていると、いろいろなことがわかります。鶴見君はモニターなので、今の彼の心拍数を確認すると……。おっ! なんだかかなりドキドキしている様子。もしかして、気になる女子とキャンパスで出会ったりしているのでしょうか。

データは測り続けることが重要

スマートウェアの開発目的は、体に関するデータを日常的に計測することです。体温計や歩数計、心電図などの測定機器はありますが、なかなか使い続けてくれません。そこで考えたのが、普段来ているシャツにフレキシブルな生体センサーを組み込むこと。これならわざわざ計測機器を使わなくても、シャツを着るだけで各種生体信号を計測できます。すなわち意識しなくても、毎日データを記録できるようになります。

データが教えてくれる様々な情報

スマートウェアを使えば、常に健康状態をチェックできます。心電図をみれば、体調や気分がわかります。気になる女子とあった時の胸の高鳴りなども一目瞭然です。もちろん、高齢者に身につけてもらえば、不整脈などをリアルタイムにチェックし、危険な状態を未然に防ぐことも可能です。例えば心電図に異常があった場合にアラームを発信するアプリ開発なども予定されています。

COIプロジェクト採択で実用化が目前に

この研究は、文部科学省 / 国立研究開発法人 科学技術振興機構 が実施しているCOI(革新的イノベーション創出プログラム)に採択されました。これは研究の実用化を推進するプログラムで、このスマートウェアも製品化を目指して、企業と共同研究を進めています。心電図、呼吸、発汗、体温、関節角度に加えて、加速度センサーも組み込んでいるので、体の動きや歩数なども計測可能です。日常的に使うものなので、洗濯しても何も問題はありません。

▲朝起きてから、夜寝ている間もずっと体の状態を計測できる

このスマートウェアは、体の弱っている高齢者を危険から守るだけでなく、健常者の健康維持にも活用できます。例えば、理想的な睡眠を得るための運動量には個人差があるといわれています。自分の一日の運動量を計測していれば「今晩ぐっすり眠るために一駅手前で電車を降りて歩いたほうがいい」などとスマホのアプリが教えてくれるようになるでしょう。さらに、みんなの一日中のデータをすべて集めることができれば、医療に役立つビッグデータとなります。快適に身につけてもらえるスマートウェアが開く可能性は、無限に広がっているのです。

関連サイト:アクティブ・フォー・オール
http://www.activeforall.jp/project/project01/

立命館大学 スポーツ健康科学部

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