2017.03.31

チョコとビスケットを使ってチョコボールを作る方法って?

ここは情報理工学部でロボットを研究する李周浩教授の研究室(情報理工学科 実世界情報コース)です。3回生の施真琴(せい・まこと)さんが、何やら真剣にパソコンのモニターを眺めています。

いったい何を眺めているかというと……。数年前に高校生たちの間で話題になった「チョコスナック菓子から、チョコボールを作る」という映像でした。実際にやってみた人の動画がネットにいくつも上がっています。そのうちの一つを見てみると、男の人が、スナック菓子をひたすら振り続けています。30分後、袋を開けると、確かに巨大なチョコボールができていました!

でも30分って、ちょっと時間がかかり過ぎだよね。疲れるし……。

人力で振るんじゃなくて、ロボットに振らせたらもっと早くチョコボールができるかもしれない。

施さんは、さっそく研究室の李教授に相談してみることに。

先生、チョコスナック菓子をひたすら振ってチョコボールを作るロボットを作ってみたいんですが、できますか?

できると思いますよ。まずは紙とペンで、どんなロボットを作ればいいか、構造を考えてみましょう。
電気で動くモーターを動力にしたいから、スナック菓子を振るためには、回転運動を直進運動に変換する必要がありますね。
そのとおりです。繰り返しモノを直線方向に動かすのなら、『クランク機構』を使うのがいちばんです。『振る』ということは、運動の方向が急激に逆方向に変わることになります。箱の中のスナック菓子には大きな加速度が発生しますから、繰り返し箱に当たって、小さな欠片になっていくはずです。
そしてチョコが摩擦で溶けて一つに固まっていくんですね。
固まった一つの塊が、袋の中で転がっていくことで球体になっていくと考えられます。スナック菓子を砕くときと、転がすときでは、段階に応じて振るスピードを変える必要もありそうですね。

次は紙に描いた構造図をもとに、お菓子の重さや振り幅などのパラメータを入力して、コンピュータでシミュレーションを行います。

クランクの長さを変えたり、モーターの回転速度を変化させるとどうなるか。実際に実験してみなくても、コンピュータで計算することで、箱の中のスナック菓子の動きが予測できるんですね。
もっと複雑なロボットの作り方も、基本的に同じです。まずは頭の中のアイディアを紙に書き出してから、コンピュータでシミュレーションします。必要なパーツが決まったら、そういった電子部品や機械部品を売っているショップに注文したり、3Dプリンターで製作したりして、組み立てていきます。

そうしてできた「チョコボールを作るロボット」がこちら!

チョコスナック菓子がなかったので、研究室にあったチョコレートとビスケットで実験してみることに。なかの様子がわかりやすいよう、透明の袋と容器を使用することにしました。

チョコボールを作るロボットに容器をセット。

スイッチを入れると、1秒間に約9回の高速で平行にチョコとビスケットが振られます。

2分後・・・

音が変わりましたね。もうそろそろ取り出してみましょう。

容器から取り出して袋を開けると、

見事に大きなチョコボールができていました!

人間が振って作ったときは30分以上かかったのに、このロボットではたった2分でチョコボールができました。来年からは私も先生のゼミで、自分でテーマを決めてロボットをゼロから作る予定ですが、今回の実験はとても勉強になりました!
ロボット作りは、実際にやってみると予想もできなかった事態がよく起こります。今回の実験でも、最初に作ったロボットが運動に耐えられず、チョコとビスケットをセットした土台がレールから飛び出してしまうというトラブルがありました。土台を補強することで何とか成功しましたが、うまく行かない原因を分析して、対策を考えて改良することの繰り返しが、成功を導きます。がんばってくださいね。

この実験を振り返って

この実験では「チョコとビスケットを振ってチョコボールを作る」ことを目標としました。なぜこのような実験を行ったかといえば、施さんに「世の中のさまざまな問題や不便を、あらゆる知識と技術を組み合わせることで解決する、『システムインテグレーション』を実体験してほしいと思ったからです。
システムインテーグレーション(SI)というと、一般的には企業を相手に情報システムを提供する会社のことをそう呼びますが、本来の意味は、「他領域にまたがる学問や知識を融合して、今までなかった新しいものを生み出すこと」を言います。ロボットは、そのシステムインテグレーションの代表例です。ロボットの製作には、機械工学、電子工学、情報工学やプログラミングの知識が必要なのはもちろんのこと、人間とロボットがスムーズなコミュニケーションをとる上で、心理学や人間工学の知識も必要になってきます。
今回の実験で作ったロボットも、チョコとビスケットの特性を理解し、システムインテグレーション的に考えた結果、最適にモーターとパーツを組み合わせてこの形となったわけです。
ゼミでは学生に、このシステムインテグレーションの考え方と共通することをいつも伝えています。それは映画でも本でも、自分が好きなものをただ見て楽しむだけでなく、「これを応用したら何ができるだろう?」「別の何かと組み合わせることで、この問題が解決できるのではないか?」といった意識を持つことが大切だということです。
これからの時代、ロボット産業はもっとも発展が期待される分野の一つです。従来の産業用ロボット分野だけでなく、農業などの一次産業や、介護などの分野でも多様なロボットが活躍し、一般の人々の生活のなかに溶け込む時代が近い将来やってくることは間違いありません。
さまざまなジャンルに好奇心を持ち、「自分の手で世の中を変えたい」「今までにないものを実現したい」と思っている学生にとって、ロボット工学はこれ以上無いほど面白い研究分野だと思います。
立命館大学 情報理工学部

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