インディーゲームの祭典として知られる「BitSummit」が京都市勧業館みやこめっせで開催されました。その熱気あふれる会場には、通常のゲームイベントの枠には収まらない、魅力的な世界観を体験できるブースが数多く存在します。その中でも、ひときわ異彩を放ち、来場者の目を引いていたのが、リアルファンタジーイベント団体が展開する「魔法学院」ブースでした。
学院を思わせる装飾が施された空間では、訪れた人々が“魔法の世界”ならではの体験を楽しむ姿が見られました。世界観に合わせたフードを味わいながら生演奏に耳を傾ける来場者の姿もあり、料理と音楽、空間演出が一体となって、この場所が単なる展示にとどまらないことを感じさせます。
このような一見ゲームとは異なるアプローチの体験型コンテンツが違和感なく受け入れられ、盛り上がりを見せているのも、BitSummitがこれまで培ってきた特徴の一つだと言えます。
今回は、ファンタジーイベントを企画する団体「ギルドバハムートⅢ」を率いる代表エスタ氏(以下、エスタ氏)に、なぜインディーゲームの祭典で「魔法学院」というテーマに挑んだのか、そしてその先に見据える今後の展望についてお話を伺いました。
ギルドバハムートⅢについて
ギルドバハムートⅢは、小規模イベントから大型企画まで、テーマに合わせた世界観や空間演出を手がける団体です。オリジナル企画に加え、他社IPや作品世界の演出にも対応しており、誰もが一度はアニメやゲームなどのファンタジー作品で憧れたことのある「ロマン」を現実世界で感じ、体験できるような空間づくりを追求し続けています。
2025年のBitSummitでは、「冒険者酒場」をコンセプトとした「猫とまきがい亭」を出展し、ブースの一部に本格的なファンタジー武器を展示することで、大きな話題を呼びました。
そのギルドバハムートⅢが、なぜ2026年はまったく異なる「魔法学院」というテーマを選んだのか。まずはその出展した意図から伺いました。
迷いながらも出展したBitSummitへの挑戦
なぜ「BitSummit」へ出展したのですか?
もともと当団体のメンバーの一人が、長年にわたりBitSummitで海外来場者の対応スタッフを務めていました。そのメンバーから、2024年頃よりボードゲーム分野の出展も行われていると聞き、「ビデオゲームの会社ではない私たちも、ファンタジーイベントを企画する団体として参加できる可能性があるのではないか」と考えたことが、出展を検討するきっかけでした。
その後、そのメンバーを通してBitSummit副理事の小清水さんをご紹介いただき、私たちの活動についてお話しする機会をいただきました。そこで「面白そうだから、フードブース周辺を盛り上げてよ」と声をかけていただいたことから、BitSummitへの参加が始まりました。
昨年の「冒険者酒場」に続き、今年は「魔法学院」をテーマに、我々にしかできない方法で爪痕を残そうと全力を注いでいます。
コンセプト「魔法学院」に込めた意図
昨年とまったく異なる「魔法学院」というテーマで挑戦しようと思われたのは、どのような理由からなのでしょうか?
理由はシンプルで、分かりやすさを一番に考えたからなんです。昨年は「武器屋」をコンセプトにして、実際に触れたり構えたりできるファンタジー武器を50種類ほど並べ、そこで自分の好きな武器を持って写真を撮るという体験を提供したところ、ありがたいことにものすごい反響をいただきました。
その経験を踏まえ、「武器の次にみんながワクワクするものは何だろう?」と考えた時、「次は『魔法』だな」と。その直感から、今年は「魔法学院」というテーマで企画を立ち上げました。
既存の有名な作品の模倣にならないよう、我々が持つ独自の世界観をベースに構築しています。
例えば、魔法学院内にある「セルペンス・オステア」は、蛇と骨を意味する名前です。制服のカラーリングや校章に至るまで詳細な設定を作り込んでいますが、これらはあくまでお客様が気づいた時に楽しめる「隠し味」のようなものです。すべてを理解してもらうことよりも、まずはその場に立った瞬間の世界観を大切にしています。
なるほど、世界観を大切にしているということですね。それでは、企画や運営を通して、うれしかった点と大変だった点を教えてください。
企画を考えている時間はとても楽しいのですが、実際にシステムや衣装、テキストとして形にしていく作業は想像以上に大変です。
そのためイベント当日は、「お客様に楽しんでもらえているだろうか」と不安と緊張でいっぱいで、実は自分自身はほとんど楽しめていません(笑)。
それでも、しばらくしてブースからお客様の楽しそうな歓声が聞こえてきた瞬間、「この企画は間違っていなかった」と確信し、イベントの成功を実感できるんです。
空間と演出のこだわり
実際にブースを拝見しましたが、キャストの皆さんの佇まいも含めて、一体感が素晴らしいですね。今年の空間づくりや演出面で、特にこだわったポイントを教えてください。
「説得力」こそが重要だと考えています。中途半端なコスプレの延長線に見られないよう、キャストの衣装の着こなしや、現場での立ち振る舞い、言葉遣いには徹底的にこだわってディレクションしています。
私自身、そのキャストに似合っていない衣装を着せることはしたくないので、時には僕が直接、動き方やセリフの言い回しを指導することもあります。
その徹底ぶりが、あの没入感を生み出しているわけですね。今回、来場者が実際に体験できるコンテンツについても教えていただけますか?
これは去年の反省点でもあったんですけど、BitSummitって、どこのブースに行っても魅力的なチラシやステッカー、ちょっとしたノベルティがもらえますよね。でも、去年のうちはお配りするノベルティが一切なかったんです。だから、今年は何か用意したいよね、となって。
じゃあテーマが「魔法学院」なら、何を渡したら一番喜ばれるだろうと考えたんです。「魔法の帽子」とかは予算的に配るのは難しい。だったら、カードくらいのサイズ感がベストだなと(笑)。
そこから思考を深めていって、「せっかく魔法学院に来たんだから、自分の『魔法属性』が何なのか知りたいよね」って思ったんです。そこで、ただ診断するのではなく、ちょっとしたゲーム感覚で楽しめるクエスト形式にして、ブースの体験の中に組み込みました。
ただカードを配るんじゃなくて、ブース全体を巻き込んだ『属性診断クエスト』というゲーム形式にしちゃおうと。クエスト自体は、そんなに頭を悩ませるような難しいものではなくて、とにかく「分かりやすさ」を重視しています。
『属性診断クエスト』の様子




料理と音楽による没入感
料理・音楽を楽しんでもらうためにどのような工夫をしていますか?
もともとレストランオーナーの経験があるため、フードメニューも世界観の一部として考えました。
今回は魔法学院というテーマに合わせ、ソースの彩りなどにこだわったパンケーキを提供しています。ただ、ソースがたれてきちゃって、写真だとちょっと分かりづらいんですけどね(笑)。
また、新しい試みとしてライブ演奏を導入しました。新しく立ち上げたバンドの初披露の場でもあります。スチームパンクやファンタジー、民族音楽(フォークミュージック)をミックスしたオリジナル楽曲を演奏することで、音楽の面からも別の世界への旅を演出しています。実は僕もステージの中心に立って演奏しています。



夢は数万人規模のファンタジー野外フェスを日本で開催すること
今後の目標と夢はございますか?
我々の活動は、まだコラボレーションの経験が少ないのが課題です。今後は企業との連携や、VRコンテンツとの融合など、活動の幅をもっと広げていきたいと考えています。
また、今のリアルファンタジー文化は30代後半〜40代がコア層になっており、若い世代がまだ少ないという業界のリアルな課題を感じています。だからこそ、「若い子たちにもこのロマンを体験してほしい」と考えています。
そして、個人的な最終目標は、海外で見られるような数万人規模のファンタジー野外フェスを日本で開催することです。8年前から「リアルファンタジーRPG」の文化を少しずつ広めてきたのは、この夢を実現するためです。
日本にファンタジー文化を根付かせ、いつか皆さんと一緒に衣装を着て、広大なフィールドで楽しめる日が来ることを強く願っています。
取材後記
「企画を考えている時が一番楽しい」と語るエスタ氏の目は、まさに冒険者のようでした。
そして、その裏にある膨大な準備と努力が、BitSummitの会場で多くの人を惹きつける魔法の正体なのだと深く感じさせられるインタビューでした。
ギルドバハムートⅢのキャスト紹介




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次回開催イベントのご案内
ギルドバハムートⅢの次回イベント「クリスタルマルシェ ~ユールの贈り物市~」は、2026年12月5日(土)・6日(日)に大阪ベイタワー2階アトリウム広場で開催! 北欧の冬至祭“ユール”とファンタジーをテーマにした、体験型マーケットイベントです。
