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2017年度北海学園大学アンケート調査報告

2018/02/05

 アンケート結果をまとめるのに時間がかかってしまい申し訳ありません。
 以下に、2017年10月20日金曜日に北海学園大学の徳永良次先生の講義で実施させていただいた北海道方言の動詞形態法に関するアンケートの結果を示します。131名の北海道出身者と4名の道外出身者から回答を得ることができました。このアンケート調査は北海道方言の自発述語に関するもので、語形のゆれや関連する述語との使い分けを調べることを目的としたものです。予想通りだった結果が得られた質問項目と意外な結果がわかった質問項目があります。いずれにせよ、大変考えさせられるデータを得ることができました。ご協力いただいた徳永良次先生と北海学園大学の皆さんに御礼申し上げます。


 アンケートでは、意味的に同じことを指す複数の形式を示し、その中で自分でも使うと思う項目を選択してもらいました。全ての項目で複数回答可としました。選択肢の内の一つがインターネット上にあった実在の文で、他の文は述語の形式を一部変えてあります。なお、以下に示す数値は北海道方言話者59名の回答によるものです。道外出身者の回答は数値に含まれていません。

 最初の質問項目は使役述語に関するものです。自発述語が主な調査対象ですが、自発述語の形式上のゆれを考える上で使役述語、とりわけ一段活用動詞の形式を知る必要があると考えました。選択肢は以下の通りです。北海道の伝統方言では、一段活用動詞に「らへる」または「らせる」をつけて使役述語を作ります。一方、標準語では一段活用動詞に「させる」を付けて使役述語を作ります。(1)のaとbは伝統方言の形式、cは標準語の形式です。

(1) またごっちとカール・ゴッチ
a. たまごっちに体を鍛えらへるとカール・ゴッチになるというのは本当ですか?
b. たまごっちに体を鍛えらせるとカール・ゴッチになるというのは本当ですか?
c. たまごっちに体を鍛えさせるとカール・ゴッチになるというのは本当ですか?

 以下のグラフに示すように、標準語的な形式を選択した方が圧倒的多数でした。伝統方言の形式でも「鍛えらへる」を選択した方はいませんでしたが、「鍛えらせる」は19名の方が選択しました。
一段活用動詞の使役形

 次の質問項目は一段活用動詞をもとに結果状態を表す場合にどのような述語を用いるか尋ねるものです。対象の変化を表す場合、自発述語(〜らさる)に「ている」を付けるのが北海道の伝統方言の特徴です。自発述語(〜らさる)は標準語にはない語形です。最近では「〜らさる」ではなく「〜ささる」を付けた自発述語も見られるようになりました。以下の画像をご覧ください。2017年9月20日に地下鉄東西線で撮影したものです。ご覧になった方も多いかもしれません。ジョブキタの編集部に確認したところ、北海道出身の方が考えたコピーだそうです。
mi-sasar-u
 標準語の形式を使って結果状態を表すこともできます。その場合は、受動態に「ている」を付けるか、「動詞+てある」という述部を使うことになります。(2)の選択肢のうち、aとbは北海道方言の自発述語を使ったもので、cとdは標準語でも使う形式です。

(2) 筋肉の状態
a. 毎日トレーニングしたので、筋肉が鍛えらさっています。
b. 毎日トレーニングしたので、筋肉が鍛えささっています。
c. 毎日トレーニングしたので、筋肉が鍛えられています。
d. 毎日トレーニングしたので、筋肉が鍛えてあります。

 以下のグラフに示すように、受動態に「ている」を付けた形式を選択する方が圧倒的多数でした。しかし、自発述語を選択した方も少なくありません。aの「鍛えらさっています」を選択した方は23名、bの「鍛えささって」を選択した方も15名いました。標準語ではよく見かけるdの「鍛えてあります」を選択した人は18名でした。
kitae-rasar-u

 次の質問項目は、サ変動詞で結果状態を表す場合にどのような述語を用いるか尋ねるものです。この場合も自発述語に「ている」を付ける方法と、標準語のように受動態に「ている」を付けたり「動詞+てある」を使う方法があります。サ変動詞の自発述語の形式としては、「ささる」と「しらさる」があることが1990年代までの研究でわかっています。一方、最近では「しささる」という形式も耳にするようになりました。どの形式がどれだけ使われるのかこの項目で調べることにしました。

(3) インターネットのトラブル
a. 掲示板検索してたら変なアダルトサイトに登録ささって3日以内に9万とか言われた(笑)
b. 掲示板検索してたら変なアダルトサイトに登録しらさって3日以内に9万とか言われた(笑)
c. 掲示板検索してたら変なアダルトサイトに登録しささって3日以内に9万とか言われた(笑)
d. 掲示板検索してたら変なアダルトサイトに登録されていて3日以内に9万とか言われた(笑)
e. 掲示板検索してたら変なアダルトサイトに登録してあって3日以内に9万とか言われた(笑)

 これまでは標準語でも使う形式が圧倒的多数でしたが、サ変動詞の結果状態の場合はそうではありませんでした。以下のグラフが示すように、cの「登録しささって」が最も多く選択されました。それに続くのが、標準語でも使われる「登録されていて」で、次に北海道の伝統方言の形式である「登録ささって」が続きます。そして、「登録してあって」「登録しらさって」と選択した方の数が減って行きます。「登録しささって」が「登録しらさって」よりも多かった、それも圧倒的に多かったのが意外でした。
si-sasar-u

 自発述語(〜らさる)の用法の一つに主語になったものの属性を記述するものがあります。可能の用法としても知られるものです。次の質問項目は、主語の属性を記述する際に述語がどのような形式をとるかを聞くものです。(4)のa〜cは、形式は微妙に違いますが、自発述語を使ったものです。一方、dは標準語でも用いられる可能動詞を述部とするものです。最後のeはいわゆる「レタスことば」です。

(4) 漫画ついての解説
a. サッカー漫画なので、テンポよく読まさる。
b. サッカー漫画なので、テンポよく読まらさる。
c. サッカー漫画なので、テンポよく読まささる。
d. サッカー漫画なので、テンポよく読める。
e. サッカー漫画なので、テンポよく読めれる。

 以下のグラフが示すように、標準語でも用いられる可能動詞を述部とする文(d)を選んだ方が最多でしたが、伝統方言の「読まさる」(a)を述部とする文を選んだ方はその次に多く、51名いました。一方、未然形に「らさる」「ささる」が付いたbおよびcを選択した方は「レタスことば」(e)を選択した方よりも少数でした。
yom-asar-u

 次の質問項目は五段活用動詞で結果状態を表す場合にどのような形式を使うかを聞いたものです。選択肢は基本的に一段活用動詞で結果状態を表す場合と同じですが、自発述語に「書かさっている」「書からさっている」「書かささっている」の2種類があることにより選択肢が一つ増えています。

(5) 自動車についているロゴ
a. 車の横っ腹に病院名が書かさっている。
b. 車の横っ腹に病院名が書からさっている。
c. 車の横っ腹に病院名が書かささっている。
d. 車の横っ腹に病院名が書かれている。
e. 車の横っ腹に病院名が書いてある。

 標準語形が多く選択されたのは一段活用動詞の場合と同じでしたが、「動詞+てある」が受動態に「ている」が付いたものよりも多く選択されている点が違います。また、自発述語を選択した方が標準語形を選択した方よりも少ない点は一段活用動詞と同様ですが、自発述語「書かさって」(a)を選択した人は、それなりに多く、64名いました。未然形に「らさる」「ささる」が付いた自発述語を選択した方は少なく、それぞれ3名と5名でした。
kak-asat-te


 次の(6)と(7)は、「積もる」と「積もらさる」の使い分けに関する質問項目です。二つの項目で一体になっているので、ここではまとめて示します。

(6) 積雪に驚いた様子
a. いつの間にか雪が積もらさっている。
b. いつの間にか雪が積もっている。
(7) 窓から降雪を眺めている。
a. だんだん雪が積もらさってきた。
b. だんだん雪が積もってきた。

 (6)、(7)とも、標準語でも使われる「積もっている」を選択した方が多く、それぞれ126名と129名でした。自発述語を含む「積もらさっている」を選んだ方は、(6)が23名、(7)が16名でした。現場を確認する文脈(7)よりも意外性を感じる文脈(6)で自動詞「積もる」の自発述語が用いられる傾向があるようです。ただし、(6)と(7)は意外性だけでなく、結果状態(6)と進行中の出来事(7)を表す点でも違いがあります。これが選択の原因になっている可能性もあります。(8)と(9)のデータを見ると、結果状態の方が進行よりも「ている」が付いている自発述語と相性がよいようです。

 (8)と(9)も、「積もる」と「積もらさる」の使い分けに関する質問項目です。(8)は進行中の出来事を表す文です。一方、(9)は結果状態を表す文です。

(8) 雪が静かに{積もっている・積もらさっている}。
(9) 雪がすっかり{積もっている・積もらさっている}。

 ここでも、標準語でも使われる「積もっている」を選択した方が多く、それぞれ122名(8)と105名(9)でした。自発述語を含む「積もらさっている」は結果状態を表す(9)では、28名が選択し、進行中の出来事を表す(8)では、9名が選択しました。「積もらさっている」は進行中の出来事よりも結果状態を表す場合に使われる傾向があるようです。

 自発接尾辞(らさる){-asar, -rasar (, -sasar)}には他動詞から自動詞を派生する用法があります。「誰かが大きな丸を描いている」は主語と目的語をもつ他動詞文ですが、「大きな丸が描かさっている」は目的語がありませんので自動詞文です。「積もらさる」はもともと自動詞である「積もる」に自動詞化の機能をもつ「らさる」が付いており、自発接尾辞「らさる」の役割が大変わかりにくい形式です。しかし、上のデータを見ると「積もる」と「積もらさる」は意味的に完全に同じではないことがわかります。

 次の質問項目(10)と(11)も、結果状態と進行中の出来事に関するものです。標準語の「溶けている」は意味的に曖昧で、氷が溶けきって水になった状態と氷がかたちを崩しながらもまだ完全には水になっていない状況の両方を指します。実際には、「だんだん」や「すっかり」といった副詞を添えることによって、進行中の出来事と結果状態を区別します。北海道の方言には「溶ける」とう自動詞があるだけでなく、他動詞「溶かす」から派生した自発述語「溶かさる」があります。この二つがどのように使われているかを調べるのが、(10)と(11)です。

(10) 氷がだんだん{溶けている・溶かさっている}。
(11) 氷がすっかり{溶けている・溶かさっている}。

 ここでも、標準語でも使われる「溶けている」を選択した方が多く、それぞれ123名(10)と109名(11)でした。「溶かさっている」を選んだ方は、進行中の出来事を表す(10)で8名、結果状態を表す(11)で24名でした。(8)と(9)と同様、結果状態の方が進行中の出来事よりも自発述語と「ている」の組み合わせと相性がよいようです。

 自動詞「乾く」と他動詞「乾かす」から派生した「乾かさる」の使われ方を調べる調査項目(12)と(13)でも、(8)〜(11)で見たのと同様の傾向が見られました。

(12) 洗濯物がだんだん{乾いている・乾かさっている}。
(13) 洗濯物がすっかり{乾いている・乾かさっている}。

 ここでも、標準語でも使われる「乾いている」を選択した方が多く、それぞれ117名(12)と106名(13)でした。「乾かさっている」を選んだ方は、進行中の出来事を表す(12)で15名、結果状態を表す(13)で29名でした。やはり、結果状態の方が進行中の出来事よりも自発述語と「ている」の組み合わせと相性がよいようです。

 次の(14)と(15)は、動作主の関与に関して、自動詞「抜ける」と他動詞「抜く」から派生した自発述語「抜かさる」の使われ方を調べるための質問項目です。(14)の「手を抜く」は動作主が不在ではあり得ない出来事を表します。これに対して、(15)の文が表す抜け毛は動作主がいなくとも成立する出来事です。

(14) 手を抜かないつもりでも、歳がいって、手が{抜けていく、抜かさっていく}のです。
(15) 自分で抜かなくとも、髪の毛が{抜けていく、抜かさっていく}のです。

 ここでも、標準語でも使われる「抜けていく」を選択した方が多く、それぞれ95名(14)と112名(15)でした。「抜かさっていく」を選択した人は、(14)で37名、(15)で21名でした。動作主を必ず含意する出来事の方が自発述語と「ていく」の組み合わせと相性がよいようです。

 次の(16)と(17)も動作主の関与に関する質問項目です。(16)が表す地球の自転は動作主不在の出来事です。一方、(17)が表す独楽の回転は動作主なしではあり得ません。問題となる形式は自動詞「回る」と自発述語「回らさる」の「ている」形です。

(16) 地球が{回っている・回らさっている}。
(17) 独楽(こま)が{回っている・回らさっている}。

 これらの質問項目でも標準語でも使われる「回っている」を選択した方がほとんどで、(16)で129名、(17)で128名でした。「回らさっている」を選択した人は非常に少なく、(16)で2名、(17)で3名でした。ここでも動作主がないと成立しない出来事の方が自発述語を含む形式を選択した人が多かったことにはなります。もっとも、その差は1名ですが(自発述語を選択した方の人数が何倍かという観点で見ると、(14)は(15)の1.76倍、(17)は(16)の1.5倍です)。

 次の(18), (19), (20)も動作主の関与に関する質問項目です。(18)の消灯は動作主がいないと起きにくい出来事です。停電などで明かりが消えることもあり得ますが、その場合は(18)のような発言はしないでしょう。一方、(19)の憎しみは何かが原因で消えることはあっても意図的に消すのが難しいものです。(19)では憎しみが消えた原因を副詞節で表しています。(20)の虹は人間にはコントロールしがたい自然現象です。

(18) まだ9時なのに隣の家の明かりが{消えている・消ささっている}。
(19) あの人もかわいそうな人なんだと思ったら、憎しみが{消えた・消ささった}。
(20) さっきまで見えていた虹が{消えた・消ささった}。

 これらの質問項目でも標準語でも使われる「消えている、消えた」を選択した方がほとんどで、(18)で125名、(19)で129名、(20)で129名でした。「消ささっている、消ささった」を選択した人は非常に少なく、(18)で6名、(19)で2名、(20)で2名でした。ここでも動作主がないと成立しない出来事(18)の方が自発述語を含む形式を選択した人が多かったことになります。

 次の(21)と(22)も動作主の関与に関する質問項目です。同じくものが凍るにしても(21)の池の水の凍結は人間にはコントロールできないことです。一方、(22)の冷蔵庫での凍結は人為的に引き起こすことができることであり、動作主が関与します。

(21) 池の水が{凍っている・凍らさっている}。
(22) 冷蔵庫に{凍っている・凍らさっている}チーズケーキがある。

 ここでも、標準語でも使われる「凍っている」を選択した方が多く、(21)で112名、(22)で114名でした。自発述語の「ている」形である「凍ららさっている」を選んだ方は、(21)で22名、(22)で16名でした。ここでは、動作主が関与できない出来事を表す(21)を選んだ方の方が多く、意外な結果となりました。

 次の(23), (24), (25)は、動作主の関与と再帰性に関する質問項目です。(23)が表す豆が水に浸かった状態は、人間が料理を前提に生じさせたものであり、たとえ動作主を明示しなくとも動作主は含意されます。(24)も温泉に入るという意図的な動作を表しています。それと同時に動作主は温泉に浸かる対象でもあり、出来事は再帰的です。再帰に関する研究ではautocausativeに分類されることと思います。これに対し、(25)の車両への浸水は意図的に引き起こすことではなく、動作主を想定できません。

(23) 一晩水に{浸かった・浸けらさった}豆を煮る。
(24) 疲れたので温泉に{浸かった・浸けらさった}。
(25) 車が水に{浸かって・浸けらさって}故障した。

 これらの質問項目でも標準語でも使われる自動詞「浸かった、浸かって」を選択した方がほとんどで、(23)で126名、(24)で130名、(25)で122名でした。自発述語「浸けらさった、浸けらさって」を選んだ方は、(23)で5名、(24)で1名、(25)で9名でした。動作主を想定できない(25)で自発述語を選んだ方の人数が、動作主を含意する文である(23)と(24)を選んだ方の人数より多く、(14)と(15)の対でみられた傾向の逆になっています。

 次の(26), (27), (28)も、動作主の関与と再帰性に関する質問項目です。牧草ロールは、牧草を巻き付けたものです。人間が意図的に作らなければできないものですので、(26)が表す自体は動作主が前提となります。(27)は(24)と同様、主語が動作主であると同時に対象でもある再帰的な出来事を表しています。(28)は意志が自然にどこかにある状態を示すもので、動作主を含意しません。

(26) 牧草ロールがたくさん{転がっている・転がさっている}。
(27) 猫が{転がって・転がさって}おなかを見せる。
(28) その辺に{転がっている・転がさっている}石を持ってきてください。

 これらの質問項目でも標準語でも使われている「転がっている」を選択した方がほとんどで、(26)で122名、(27)で126名、(28)で120名でした。自発述語の「ている」形である「転がさっている」を選択した方は、(26)で10名、(27)で5名、(28)で11名でした。再帰的な出来事を表す(27)が他の文の2分の1しか選択されませんでした。動作主を含意する(26)と自然に生じた出来事を表す(28)はほぼ同数でした。

 次の(29), (30), (31), (32)も、動作主の関与と再帰性に関する質問項目です。(29)の骨折は、非意図的な出来事で、他動詞を使うと「僕は骨を折った」のような再帰的な意味の文になります。非意図的で再帰的な出来事を表す文です。(30)で描かれている桜の木の枝が折れたことは、自然に生じた現象です。(31)の文では鉛筆の芯が折れたことが描写されていますが、非意図的ではあるものの行為者を含意します。ナプキンを三角に折ることは動作主なしには生じ得ませんから、(32)は動作主を含意する文と言えます。

(29) 転んで骨が{折れた・折らさった}。
(30) {折れた・折らさった}桜の枝を見たら、腐っていた。
(31) 力を入れて書いたら、鉛筆の芯が{折れた・折らさった}。
(32) 三角に{折れた・折らさった}ナプキンがテーブルの上にあった。

 これらの質問項目でも標準語でも使われている「折れた」を選択した方がほとんどで、(29)で119名、(30)で119名、(31)で116名、(32)で85名でした。自発述語の「ている」形である「折らさった」を選択した方は、(29)で12名、(30)で11名、(31)で17名、(32)で48名でした。ここでは、動作主を含意する文(32)で自発述語が最も使われることがわかりました。次に来るのが非意図的な行為者を含意する文(31)です。再帰的な意味を持つ文(29)がそれに続き、自然に生じた出来事を表す文(30)が最下位でした。ここでは(14)と(15)の間で見られたのと同様の傾向が見られます。


 今回の調査から、他の動詞と異なり、サ変動詞では/-sasar/という自発接尾辞の異形態を含む語形(しささる)が最もよく使われていることがわかりました。1990年代までの研究では「しささる」という語形は存在を指摘されていませんでした。比較的新しく生じた語形だと思います。/-sasar/を含む語形は他の動詞でも見られますが、まだ少数派に留まっているようです。このような違いがどのようにして生じたのか、これから追求したいと思います。実は、サ変動詞でも伝統方言の自発形式「ささる」を選択する数が最多になると予測していました。ここでは、予想が裏切られたことにより新しい研究課題ができました。
 (6)以降の質問項目への回答を見て、自動詞と自発述語の使い分けが一部明らかになったと思います。自発述語は、結果状態を表す際に使われる傾向があるようです。動作主を含意する出来事どの「相性」については、(14)と(15)で指摘した傾向が当てはまらない例もあるので、慎重に検討する必要がありそうです。意外性については、結果状態と重ならない条件の文で検証する必要があると思います。
 課題も含めてここに述べたことがわかったのは、調査に協力してくださった皆さんのおかげです。この場を借りて感謝の意を表します。
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