右京区北部の交通問題を考える
2003年7月27日
立命館大学経営学部
助教授 近藤 宏一
1.どんなまちづくり、地域づくりをめざすのか
「住民主体のまちづくり」は現実に進行しつつある
個別要求の集積だけでなく、住民自身がどんな「まち」をめざすのか積極的に議論する必要
交通問題はあくまで「どんなまちづくり」をするのかの下にある課題
2.地下鉄東西線の開通を前に-前進面と課題
(1)天神川で話を終わらせてはならない~今後の整備方向をにらんだ議論を
①京福電鉄との直通を真剣に検討すべき
嵐電を地下鉄にあわせるのではなく、地下鉄を嵐電にあわせる発想
北野線の今出川直通の実現とあわせて、都心直通のLRT化で嵐電自体の再建も
*LRT=路面電車や嵐電のような小型軽量電車を抜本的に近代化したもの。
小回りがきき、乗り降りがしやすく、建設費が低廉で快適・高速な乗り物。
*費用負担をどう考えるか
②将来の西京方面への延伸をどう考えるか
地下鉄での延伸が「絶対」ではないが、一時浮上した「モノレール」は愚策
やはりLRTでの延伸を考えるべき。その意味では道路整備も必要になる可能性。
(2)この際、思い切った公共交通ネットワークの再編を
①鉄道・幹線バス-コミュニティバス(タクシー)の柔軟なネットワーク
鉄道:都心への高速な直通、さらに遠方との連絡が可能。ただし乗り換えが必要。
幹線バス:都心へ直通する場合乗り換え不要。ただし時間がかかる。
コミュニティバス:地域内の人々の日常生活を支える、または鉄道駅や幹線バス拠点と地域の人
の暮らしを直結する。
小型バスやワゴンを使って、乗り降りのしやすさ、小回りを追求する。
地域によっては乗り合いタクシーでもよい。観光客の足にもなる。
*公共交通の利用の拡大のためには、従来のバスの問題点を大胆に解決する必要がある。
②多様な事業主体のそれぞれの利点を生かす
規制緩和によってタクシー会社、住民の自主運行など多様な事業主体が展開する可能性
行政の責任放棄は問題だが、すべて悪いことばかりではない。
③市バス財政問題をどう考えるか
大前提:異様な高コスト構造を解決し、本気で集客するなら赤字削減は可能
とはいえ:「公営企業」である限り赤字減らしの圧力は続く
→「市バス」をもたない都市の方がバスに対して積極的にお金を出している矛盾。
↓
市バス絶対ではなく、多様な運行主体を前提に行政としての責任を市にとらせる取り組みが必要。
3.道路問題をどう考えるか
(1)道路整備優先の時代ではない
モータリゼーション抑制の視点のない道路整備は、必ず禍根を残す。
例)LRT(新型路面電車)整備との関係で必要かどうか
パーク・アンド・ライド促進のために必要かどうか
*パーク・アンド・ライドとは
(2)それでも必要な道路とは
162号線:最低限の整備(山崩れ、安全対策)としては必要。
南北道路:右京区基本計画の「優先的な整備推進」はどこまで必要か?
例)桂川街道と162号線を短絡した結果、通過交通が増えないかなど
*地下鉄のLRTでの延伸を考えた場合、久世梅津北野線または梅津街道の整備は必要か。
4.住民運動に対する問題提起
(1)どんなまちづくりを構想するのか、との関係で優先順位が決まる
(2)地元要求を出発点にしながらも、トータルで具体的な政策提起を
*醍醐地区の状況からなにを考えるか
(3)息の長い運動を、広範な人々を巻き込んで進める必要
交通事業者をも巻き込む必要~嵐電、京都バス、地元タクシーなどとも積極的な話し合いを
時には住民主体の事業化を進める覚悟も