Astrophysics Science Division, NASA/Goddard Space Flight Center


多波長で見る銀河:専門家向け解説

raw data gif
銀河系の中心域のChandra画像
提供: NASA/MIT/F. Baganoff et al.
このページでは:
 画像について
 原データについての情報
 画像のパラメータ
 関連するサイトへのリンク
 画像の強度スケール (別ページ)について記述されています。

多波長銀河系プロジェクトのこの「専門家向け」ページは天文学コミュニティに向けて書かれています。そのため、「教育向け」ページにはない文献やデータへのリンクが含まれています。

ここには銀河系を10の波長域で見た地図が示されています。地図は銀河面から10度以内に限られています。地図の下に参照図があります。

それぞれの地図の左にある地図の名前をクリックすると、その波長における銀河系の説明にリンクします。(このページをスクロールしていくことによっても見ることができます。)説明には文献やデータのオンラインアクセスへのリンクも含まれます。

興味のある領域をクリックすると、拡大図が表示されます。拡大は二段階用意されています。

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Products:

電波 (0.4 GHz)
水素原子
電波 (2.7 GHz)
水素分子
赤外線
中間赤外線
近赤外線
可視光
X線
ガンマ線
参照図     

画像

私たちの銀河(天の川)は一般にSbcタイプの銀河だとされています。星の集まる中心のふくらみ(バルジ) と、円盤上にガスと星からなる渦状腕からできています。私たちは銀河を実質上円盤面近くの端から見ており、銀河中心から二万八千光年離れています。ここ数十年で銀河の天文学は、地上および宇宙空間の観測装置により、とてつもなく広い範囲の電磁波のスペクトルの恩恵を受けることになりました。上記は十四桁以上の振動数範囲にもわたる銀河面付近のスペクトル線および連続波による画像です。画像はいくつかの宇宙空間および地上におけるサーベイ観測から得られたもので、その多くはNASAゴダード宇宙飛行センター(Goddard Space Flight Center, GSFC)にある国立宇宙科学データセンター(National Space Science Data Center)から手に入れることができます。

それぞれの画像は平面から10度以内の銀河を360度にわたり擬似カラーで示したものです。画像は銀河座標にのっとっており、画像の中央が銀河中心になります。スケールは縦が天球面上の月の大きさの40倍、面積が天球全体の六分の一に相当します。参照図の画像は、IRAS 100μm地図にCOBE DIRBEの3.5μm等高線を重ねたものです。

これらのリンク付き画像はDr. Seth DigelとMr. Jay Friedlander (SSDOO Visualization Lab Task Leader)によって作られました。

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原データのファイル

これらの地図を定量的に調べたいユーザは、ほとんどの画像に対応する原データををanonymous ftpからダウンロードできます。 データファイルは以下で引用するサーベイに由来し、たいていの場合分解能に合うようにサンプルされ、銀河座標の格子点に合わせて変換・内挿されています。

ファイルは誤りを含んでいるとは知られていませんが、ユーザは元のデータで結果をチェックするよう忠告しておきます。また、バックグラウンド、感度、分解能などデータの解釈については元の文献を参照してください。

ファイルは圧縮され、天文学で広く用いられるバイナリフォーマットであるFITS画像フォーマットになっています。赤外、近赤外、X線の画像はポスターの対応する帯域に対応する三つの平面を含んでいます。可視光画像は大きいので銀河系の象限四つに分かれています。FITS標準の手引きや、FITS画像を読んだり表示したりするソフトウェアはNASA/GSFCのFITS Support Officeで手に入ります。

それぞれの地図の作成についての情報はファイルのヘッダ部分に記述されています。

元のサーベイのデジタル版のいくつかや、いくつかの領域の画像は、 SkyView サービスから取得することができます。 サーベイの中にはすべてのデータをWebからダウンロードできるものもあります。 該当するセクションのリンクをご覧ください。

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地図の説明


連続電波(408 MHz)

地上の電波望遠鏡サーベイによって得られた銀河系内の高エネルギー荷電粒子からの連続電波放射の強度。 (Jodrell Bank Mark I and Mark IA, Bonn 100-meter, 及びParkes 64-meter). この振動数では、星間磁場をほぼ光速で動く電子からの放射がほとんどです。超新星爆発で生じる衝撃波によりこのような高速まで電子が加速されるため、放射強度はそのような天体の付近で強くなります。銀緯110度付近の超新星残骸Cas Aからの放射は特に強いために、望遠鏡の電波受信機を支える脚の回折模様が十字型に見えています。

参考文献:
Haslam, C. G. T., Salter, C. J., Stoffel, H., & Wilson, W. E. 1982, Astron. Astrophys. Suppl. Ser., 47, 1

オンラインデータアクセス:
http://www.mpifr-bonn.mpg.de/survey.html

振動数: 408 MHz

強度: 10-4250 K

角度分解能: 51'

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水素原子

水素の21cm遷移線の電波サーベイ観測から光学的に薄いという仮定の元に求めた水素原子の柱密度。21cm線は「冷たくて暖かい」星間物質のトレーサーであり、大局的には数百光年までの大きさのガスとダストの拡散雲で構成されています。画像のほとんどはDwingeloo 25-m 電波望遠鏡を用いたLeiden-Dwingeloo銀河中性水素サーベイに基づき、Bonn大学の協力でサイドローブの混入を補正してあります。

参考文献:
Burton, W. B. 1985, Astron. Astrophys. Suppl. Ser., 62, 365
Hartmann, Dap, & Burton, W. B., "Atlas of Galactic Neutral Hydrogen," Cambridge Univ. Press, (1997, book and CD-ROM)
Kerr, F. J., et al. 1986, Astron. Astrophys. Suppl. Ser.

オンラインデータアクセス:
Atlas of Neutral Hydrogen (1997)

振動数: 1.4 GHz

柱密度: 10 x 1020 -230 x 1020 cm-2

角度分解能: 45-60'

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連続電波 (2.4-2.7 GHz)

Bonn 100-meterおよびParkes 64-meter電波望遠鏡で得られた、銀河内の熱いイオン化したガスと高エネルギー電子から放出される連続電波の強度。ここに示した銀河のほかの画像と違い、これらのデータは銀河面から銀緯方向に5度までに限られています。画像に見られる明るい放射の大部分は熱いイオン化した領域か、磁場中を動く高エネルギー電子によるものです。408MHzの画像に比べ分解能が高く、銀河系の天体がより詳細に示されています。銀河の特徴や天体をはっきり見せるために、408MHzの画像に顕著に見られるような銀河の電波放射の明るい「縁」を引き去っていることに注意してください。

参考文献:
Duncan, A. R., Stewart, R. T., Haynes, R. F., & Jones, K. L. 1995, Mon. Not. Roy. Astr. Soc., 277, 36
Fuerst, E., Reich, W., Reich, P., & Reif, K. 1990, Astron. Astrophys. Suppl. Ser., 85, 691
Reich, W., Fuerst, E., Reich, P., & Reif, K. 1990, Astron. Astrophys. Suppl. Ser., 85, 633

オンラインデータアクセス:
Survey data from the Max-Planck-Institut fuer Radioastronomie
http://www.atnf.csiro.au/database/astro_data/2.4Gh_Southern

振動数: 2.4-2.7 GHz

強度: 0-430 K

角度分解能: 10.4'

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水素分子

星間物質の冷たく濃い部分の標準的なトレーサーである一酸化炭素のJ=1-0輝線の強度から推測した水素分子の柱密度。このようなガスは独立した「分子雲」として渦状腕に集中しています。分子雲の多くは星が形成される場所です。分子ガスはそのほとんどがH2ですが、H2は星間の状態では直接検出することが困難なので、二番目に多い分子であるCOが代わりに観測されます。H2の柱密度とCOの放射強度が定数に比例するという仮定の基に柱密度が導かれます。

参考文献:
Dame, T. M., Hartmann, Dap, & Thaddeus, P. 2001, Astrophysical Journal, 547, 792

オンラインデータアクセス:
CO data (1987 Dame et al. composite survey) from ADC archives

振動数: 115 GHz

柱密度: 12 x 1020 -285 x 1020 cm-2

角度分解能: 9-30'

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赤外線

国際赤外線衛星(Infrared Astronomical Satellite、IRASによって12, 60および100μm波長帯で観測された中間赤外から遠赤外の強度の合成画像。それぞれ青、緑、赤の強度に対応させて擬似カラー画像として示しています。放射のほとんどは星の光を吸収して暖められた星間塵からの熱的なもので、星間雲中の星形成領域が含まれます。ここで示すのはIRAS全天サーベイ地図のモザイク画像です。地図の作成の際には太陽系内の惑星間塵からの放射(黄道光)をモデル化して差し引いてあります。

参考文献:
Wheelock, S. L., et al. 1994, IRAS Sky Survey Atlas Explanatory Supplement, JPL Publication 94-11 (Pasadena: JPL) Order: CASI HC A08/MF A02

オンラインデータアクセス:
IRAS pages at IPAC
ADF/IRAS interface to all released IRAS data products

振動数: 3.0 x 103-25 x 103 GHz

強度: 0.25-100 (12 μm), 1.5-750 (60 μm), 12-750 MJy sr-1 (100 μm)

角度分解能: 5'

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中間赤外線 (6.8 -10.8 μm)

Midcourse Space Experiment (MSX)衛星のSPIRIT III装置で観測された中間赤外放射。この波長域の拡散放射のほとんどは、石炭や星間分子雲でよく見られる多環芳香族炭化水素と呼ばれる複雑な分子からのものであると考えられています。赤色巨星、惑星状星雲およびまだ若くて母分子雲に包み込まれたままの重い星が小さな明るい点々となってここに見えています。他の多くの画像と異なり、この画像は銀河面から5度以内までしか示されていません。

参考文献:
Price, S. D., et al. 2001, Astron. J., 121, 2819

オンラインデータアクセス:
http://irsa.ipac.caltech.edu/Missions/msx.html

振動数: 2.8 x 104-4.4 x 104 GHz

強度: 2.8-107 MJy sr-1

角度分解能: 0.4'

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近赤外線

Cosmic Background Explorer (COBE)衛星のDiffuse Infrared Background Experiment (DIRBE)装置によって観測された1.25, 2.2および3.5μm波長帯の近赤外線強度の合成。それぞれ青、緑、赤の強度に対応させて擬似カラー画像として示しています。これらの波長帯での放射のほとんどは銀河系の円盤とバルジにある低温K型巨星によるものです。星間塵による吸収はこれらの波長帯での放射をあまり邪魔しません。従って地図は銀河をずっと突き抜けて放射をトレースしますが、銀河中心方向では1.25μm帯で顕著な吸収が見られます。

参考文献:
Hauser, M. G., Kelsall, T., Leisawitz, D., & Weiland, J. 1995, COBE Diffuse Infrared Background Experiment Explanatory Supplement, Version 2.0, COBE Ref. Pub. No. 95-A (Greenbelt, MD: NASA/GSFC)

オンラインデータアクセス:
COBE data from the COBE Home Page

振動数: 86 x 103-240 x 103 GHz

強度: 0.5-9 (1.25 μm), 0.35-20 (2.2 μm), 0.22-4.5 MJy sr-1 (3.5 μm)

角度分解能: 42'

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可視光

写真撮像サーベイによる可視光 (0.4〜0.6 μm)の強度。星間塵の強い吸収効果のため、銀河系のスケールにおいてはごく近傍である二、三千光年以内にある星からの光が主になっています。拡がった明るく赤い領域は輝く低密度ガスから生み出されます。暗いまだらな領域は、水素分子赤外線の地図では放射領域として見えているガスや塵による吸収によるものです。星は色、質量、大きさ、明るさが個々に異なります。星間塵は青い光をよく散乱し、星の光を本来の色から赤くして、拡散した青い輝きを生みます。この散乱と塵による一部の光の吸収のため、光の強度が減少します。パノラマ画像はDr. Axel Mellingerにより35mmカメラとカラーネガフィルムによって撮影された16枚の広角写真から合成されました。撮影は1997年7月から1999年1月にかけてアメリカ合衆国、南アフリカ、およびドイツで行われました。画像処理とモザイク処理については以下の引用文献に示されています。画像はA. Mellinger氏の好意により提供されています。

参考文献:
Mellinger, A., Creating a Milky Way Panorama

振動数: 460 x 103 GHz

オンラインデータアクセス:
http://home.arcor-online.de/axel.mellinger/

強度: 未較正

角度分解能: 1.5'

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X線

Röntgen衛星(ROSAT)のPosition-Sensitive Proportional Counter (PSPC)装置で観測したX線強度の合成画像。0.25 , 0.75及び1.5 keVを中心とする三つの軟X線波長域を、赤、緑及び青に対応させています。銀河系では、熱く、衝撃波を受けたガスからの拡散した軟エックス線が検出されています。特に低いエネルギーでは、星間物質がX線を強く吸収し、星間ガスの冷たい星雲が背景のX線放射の影となって見えています。色の変化は吸収または放射領域の温度の変化を示しています。黒い領域はROSATサーベイの欠測域です。

参考文献:
Snowden, S. L., et al. 1997 Astrophys. J., 485, 125

オンラインデータアクセス:
ROSAT All-Sky Survey at MPE
ROSAT data archives at the HEASARC

振動数: 60-360 x 106 GHz

強度: 0-20 (0.25 keV), 0-10 (0.75 keV), 0-10 x 10-4 photons arcmin-2 s-1 (1.5 keV)

角度分解能: 12'

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ガンマ線

Comptonガンマ線天文台衛星(CGRO)Energetic Gamma-Ray Experiment Telescope (EGRET)により観測された高エネルギーガンマ線の強度。画像は300 MeV以上エネルギーを持つすべてのガンマ線を含んでいます。このような高いエネルギーでは、ほとんどのガンマ線は宇宙線と星間雲中の水素原子核との衝突で作られます。銀経185度、195度および265度付近の明るくコンパクトな天体は、それぞれかに星雲、ゲミンガ及びほ座パルサーに関連した高エネルギー現象を示しています。

参考文献:
Hartman, R. C., et al. 1999, Astrophys. J. Suppl., 123, 79
Hunter, S. D., et al. 1997, Astrophys. J., 481, 205

オンラインデータアクセス:
EGRET Home Page from the Compton Observatory SSC

振動数: >7.2 x 1013 GHz

強度: 3.2 x 10-6 - 5.5 x 10-4 photons cm-2 s-1 sr-1

角度分解能: ~120'

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参照図

銀河系の主な構造(赤)可視光H II領域(青)電波源(緑)OB星の集合(紫)を示した説明図。画像はIRAS 100μm強度地図にCOBE DIRBE 3.5μm等高線を重ねたもの。説明図の軸に銀径・銀緯を記してある。

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関連するサイト

Canadian Galactic Plane Survey

Multiwavelength Atlas of Galaxies

NRAO Galactic Plane Surveys at 8.35 and 14.35 GHz

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このサービスはNASAゴダード宇宙飛行センター(NASA Goddard Space Flight Center, GSFC)の天体物理学科学部門(Astrophysics Science Division, ASD))により提供されています。

これらの画像はDr. Seth DigelとMr. Jay Friedlander (SSDOO Visualization Lab Task Leader)によって作られました。


Web Curator:
Dr. Beth Brown: beth.brown@gsfc.nasa.gov

Responsible NASA official:
Dr. David Leisawitz: leisawitz@stars.gsfc.nasa.gov

Version 2.0, September 2005

日本語版作成 M.Mori, November 2006;更新 January 2009