SCM435鋼のギガサイクル疲労特性における焼戻し温度の影響

Effect of Tempering Tempareture for Giga-cycle Fatigue Property of SCM435 Steel

従来,金属材料,特に鉄鋼材料の疲労特性について,N=105106回程度の応力繰返し数でS-N曲線は水平に折れ曲がり,明瞭な疲労限度が現れると考えられてきました.しかし,最近の研究により,多くの高強度鋼や表面処理鋼について,N=105回程度の寿命域でS-N曲線が一旦水平になった後,N=107回程度の高サイクル域でこのS-N曲線が再び低下する“2段折れ曲がり現象”を示すことが明らかにされています
 また,高サイクル域におけるこの特異な疲労特性が,表面起点型破壊と内部起点型破壊の各破壊形態の
S-N曲線が,別の場所にずれて現れる“二重S-N特性”として解釈されるべきものであることが明らかにされつつあります.
 このような現象は,耐久設計のような疲労限度を基にした設計の危険性を意味します.機械・構造物などの信頼性を保証するためには,金属材料のギガサイクル域にわたる疲労試験を実施し,基礎疲労データの蓄積,およびこの領域における特異な疲労特性の解明が必要です.
 これまでの研究で,
SUJ2SNCM439といった高強度鋼ではこの特異な現象が確認されています.またS35Cなどの低強度鋼では,ギガサイクル域においても従来通りの明確な疲労限度が確認されています.

そこで本研究では,二重S-N特性がどの強度レベルから現れるのかを明らかにすることを趣旨として,強度の異なる材料を用いて回転曲げ疲労試験を行っています.供試材はSCM435鋼で,焼戻し温度を変えることにより,強度に変化を持たせました.試験終了後,全ての試験片についてSEM(走査型電子顕微鏡)による破面観察を行い,疲労メカニズムについて,焼戻し温度や強度レベルの影響を考慮しながら考察しています.