LIGAプロセスによる高周波厚膜磁心の開発

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近年電子機器の小型化が急速に進み、磁気素子、磁気回路の小型化、高周波化への研究開発が盛んに行われ、高周波領域における使用が見込まれている。しかし、高周波領域になると特に渦電流損失の問題が大きくなる。この損失をいかに抑えるかが、高周波領域における高性能磁気デバイス開発への鍵となる。このことから高周波における磁性材料の基礎特性や形状による特性変化の把握も必要となる。以上の背景の中、我々は磁心の形状による特性向上を試みている。

高周波領域での渦電流損失を劇的に低減させるために、多数の狭スリットを形成し磁性膜を短冊状に分割する磁心構造を検討した(Fig.1)。スリット幅は1.5μm〜5μmである。スリットのアスペクト比がかなり大きいため、LIGAプロセス(X線リソグラフィー、電鋳及びモールディングを組み合わせた技術)による試作を行った。試作した磁心の寸法は4mm角で、PMMAの厚さは100μmである。スリットは非常に長くてアスペクト比の大きな形状となっているため倒れやすい。倒れる主な原因はPMMAの現像後の拘束緩和による伸びによるものと考えられる。伸びを吸収する吸収型、伸びによる湾曲を抑える固定 型と2種類の支持を設け、スリットの倒壊防止を試みた(Fig.2)

磁心の応用としてはマイクロ電源、高周波変成器、フラックスゲートセンサをはじめとする各種センサが考えられる。

 

Fig.1 磁性膜を短冊状に分割する磁心構造

 

Fig.2 試作した磁心のSEM写真。幅3 μm、高さ100 μm、アスペクト比33