演習I・演習II 伊勢 俊彦

1. プロフィール

 哲学的問題としては、認識や行為の主体としての個人の特徴--たとえば合理性、自由が、どのように他者との関係や社会的文脈に埋め込まれているのかに関心があります。この問題を考える上で、ヒューム(18世紀スコットランドの哲学者)の道徳哲学、特にその約束論(下記の論文「自然と規範」を参照)の理解が重要だと思います。その他、こちらを参照してください。

2. 演習テーマ

哲学における個と普遍

3. 内容

 「個と普遍」がテーマといっても、「普遍」の問題にかんするセミナーを行なうわけではありません。受講者各人が取り扱う主題の領域(たとえば知識論か道徳論か)や、対象とするテキスト(哲学的著作)の時代や学派には特に制約を課しませんが、問題の哲学的意義を把握すること、哲学的に考えること、それらがどういうことなのかを理解し実践することを共通の目標とします。そのさい有効なのが、「個と普遍」という視角--問題のもつ個人にとっての意味と一般的な意味の双方を視野に入れることだと思います。たとえば、デカルトの『方法序説』が新しい学問のための普遍的な道筋を示すものであると同時に、ルネ・デカルトという個人の精神の歩みを語るものであることに注目することによって、神の存在論や心身関係の問題を「生きられる」哲学の問題として理解することができるのではないでしょうか。

4. 運営方法

 基本は、受講者ひとりひとりによる発表とそれについての全員による討論です。特に最初は、テーマの設定のしかた、文献の見つけかた、読みかた、内容のまとめかた、レジュメ(配付資料)の作成のしかたなど、発表にいたるまでの準備過程の指導に重点を置きます。3、4回生ともに、夏休みと年度末にレポートを作成、提出すること、4回生は、前期、後期に1回ずつ合計2回、3回生は年度を通して少なくとも1回の発表を行なうこと。

5. テキストおよび参考書

 共通のテキストは使用しません。各自の研究課題に即した参考書類は、授業の進行の中で適宜指示します。

6. 注意事項

 毎回の授業から、何かを得るために--自分が発表するときに、きちんと準備をするのはもちろん、他の人が発表するときにも、傍観者的態度にならないよう、たがいに気をつけたい。他人の考えを理解すること、自分の考えを理解してもらうことへの関心を高める努力を。

 

7. 演習担当者の主な著書・論文

「道徳はすべての人のために、だがこの私はこの私でしかなく」『唯物論研究年報』4号226〜231、1999
「現代アメリカにおける教育の古典的理念と文化の多元性」『立命館教育科学研究』13号167〜174 、1998
「自然と規範--ヒュームの約束論における--」『科学哲学』30号107〜122、1997
「言語の本性と社会性」梅林誠爾・河野勝彦編『心と認識』昭和堂127〜164、1997
その他、こちらを参照。

8. 演習の時間の延長は行ないません。

9. 春期課題

 提出を求める課題はありませんが、発表・レポートで取り上げる予定の主要文献をいまから読み始めること。何を読んだか聞くよ。