文章講座
分かりやすい文章を書くにはどうしたらよいか。以下、いくつかのコツを書いておきます。例示は、学生諸君の書いた文章からとってあります。
文章チェック1:「読点」のつけかた
N君の文章を例にして、読点(「、」)のつけ方について説明します。

<まず常任理事国にアジアや南米、アフリカなどの国々を入れるべきです。>

「まず」の後に読点を入れ、<まず、常任理事国にアジアや南米、アフリカなどの国々を入れるべきです。>とした方がよい。
 この文は「入れるべきです」に「まず」、「常任理事国に」、「アジアや南米、アフリカなどの国々を」という3つの語句が係るという構造になっています。このような場合、
長い語句から順番に並べるというのが分かりやすい文にするための原則です。つまり、<アジアや南米、アフリカなどの国々を常任理事国にまず入れるべきです>というのが原則に従った並べ方です。ある語句をとくに強調したいなどの理由で語順を変える場合、その語句の後に読点を打つことになります。「まず」を前に出したから、その後に読点が来るわけです。

<それにヨーロッパと北米だけでは真の意味の国際化にはなっていないと思います。だからもう少し常任理事国の数を増やすのも一つの手だと思います。>
 これもまったく同じケースで、「それに」、「だから」の後に読点を打った方がよい。
文章チェック2:漢字では書かない言葉
 「こと」、「また」、「ない」、「ために」、「できる」、「なぜ」などを「事」、「又」、「無い」、「為に」、「出来る」、「何故」と表記している人が何人かいます。これらの言葉をひらがなで書くか漢字で書くかは時代によって違い、どちらが正しいか一概には言えないのですが、現時点ではひらがな表記が普通です(たとえば新聞)。
 ページ数表記で、「P 10」というように書くのは誤りです。正しくは「p. 10」。
pは小文字、その後にピリオド、半角分空けて数字(半角)
 DPを「です・ます」調で書いている人がまだいます。以前指示したように、
レポート類はすべて「である」調で書いてください。

文章チェック3:長い語句から並べろ
O君の文章を例にして説明します。

<もっと自由に行動できる軍隊を備えようと改憲しようと言う動きが出てきている。>

「言う」と漢字を交えた表現は、実際に発言する行為について用います。上の文のように「・・・・・・という」の場合の場合の漢字はもともと「云う」で、現在ではふつう「いう」とひらがな表記します。

<しかし、私は憲法第九条は世界に誇れる憲法なのではないかと思う。>

前回説明した読点の打ち方が問題です。「私は」は「思う」に係っており、この2つの間に「憲法第九条は・・・・・・」という長い語句がはさまっています。このような場合は次のようにした方がわかりやすくなります。

<しかし私は、憲法第九条は世界に誇れる憲法なのではないかと思う。>

あるいは、
長い語句から順に並べる、という原則に従い、

<しかし、憲法第九条は世界に誇れる憲法なのではないかと私は思う。>

文章チェック4:「やつ」は下品だ
 <訂正したやつを再投稿しときます>というのはあまり品のよくない話し言葉です。たとえば<訂正したものを再投稿しておきます>と書く。通常の話し言葉と文章による表現を区別できない人がふえています。

<ここではこの質問と同時に、「大半の米軍基地を持つ沖縄」と繋げて答えたいと思います。>
 「ここでは」は「思います」に係り、その間に長い語句が連なっている。こういう場合は「ここでは」の後に読点を入れる。「質問と同時に」と「繋げて」のつながりが奇妙。むしろ、「大半の米軍基地をもつ沖縄に焦点をあてて、この問題を考えたい」とでもすべきところか。なお、Discussion Paper(およびレポート類)は
「です・ます」調ではなく「である」調で、というのもすでに指摘したところです。投稿はこの二つがごっちゃになっている。
 
<なぜなら、逆に米軍基地がなければ冷戦下でソ連は日本に対して、何も行動(社会主義化)を起こさなかったのだろうか?
と考えれば、ソ連にとっても極東の日本を手中に収めようとすることは必然的と思えてもおかしくないと思う。>
 「起こさなかったのだろうか?」の後で改行するのはおかしい。また、レポート等の文章に「?」は用いないのが普通。ここは、「起こさなかったのだろうか、と考えれば」とすればよい。ただし、より大きな問題は、「なぜなら」で始まりながら、「からである」等、
理由を説明する文末表記になっていないこと。この誤りは、残念ながら多くの人に見られます。

<上記のとうり>
 「上記のとおり」あるいは「上記の通り」です。

文章チェック5「である」ができない
M君へ:すでに注意したことですが、DPを含めレポート類はすべて「である」調で書いてください。その上で、ついでの文章チェック。

<それは言葉を統一することは難しいと思うからです。>
「それは」は「思うからです」に係っており、その間に「言葉を統一することは難しいと」という長い語句が入っている。こういう場合は、「それは」の後に読点を入れる。
→「それは、言葉を統一することは難しいと思うからです。」
 ただし、文のつながりを考えると、そもそも「それは」はなくてもよい。

<19世紀後半にユダヤ人のザメンホフに世界言語としてつくられたエスペラント語が・・・・・・>
「ザメンホフに」は「ザメンホフによって」の誤り。「エスペラント語」という言い方は普通せず、たんに「エスペラント」と言っていると思う。その上で、この文はまず、「つくられた」という語に、「19世紀後半に」、「ユダヤ人のザメンホフによって」、「世界言語として」という3つの語句が係り、さらにその全体が「エスペラント」に係るという構造になっている。以前書いたように、こういう場合、
修飾語は長いものの順に並べるという原則に従うとよい。
→「ユダヤ人のザメンホフによって19世紀後半に世界言語としてつくられたエスペラントが・・・・・・」