第10話 《おまけの逆襲》

 人は調子に乗るととんでもないことをしでかす事がある。私もその一人であ

る。幼稚園の年長の時だった。幼稚園児というは、お菓子や、キャラメルが大好

きで、お母さんと買い物に行くと必ずといっていいほど、それらを買ってもらお

うと一生懸命アピールするものだ。私が買ってもらったのは、キャラメルだっ

た。上に小さな箱が付いていて、その中には当然おまけが付いていた。

 自分の部屋で、クリスマスのプレゼントを開けるかのようにワクワクしながら

そのおまけを開けた。

 中に入っていたのは、小さな“笛”だった。ちょうどたばこを少し短くしたぐ

らいの大きさで、「ピーッ、ピーッ」とかわいらしい音がした。

 そうして、得意げになってその笛をいじくったりしているうちに、笛の音を出

す部分だけがとれてしまった。それは、さらに小さくて、1cmぐらいの長さ

で、すごく細かった。

 私は、それをくわえて再び音を鳴らして遊んだ。何でもはまれば凄い私だが、

この時ばかりはさすがにすぐに飽きた。

 そうして、何かおもしろい事はないかといろいろ考えたあげく、私はすばらし

いアイデアを考えついたのだ・・・・。

 そのアイデアとは、笛を口で吹くのではなく、鼻で吹くというものだった。早

速鼻に笛をさした私は吹いてみることにした。「ピーッ、ピーッ!!!」と口で

吹くのとは違った少し高い音がした。調子に乗ってさらに鳴らし続けた。「ピー

ッ、ピーッ、ピーッ!!」

 と、その時だった。

「ピーッ、ピーッ、ピッ!?・・ビビッッ!!??」

 なんと小さな小さな笛は、私の鼻の穴の奥底へと紛れ込んでしまったのだ。急

いで指で取り出そうとしたが、それがさらに奥へと押し込んでしまった。

 慌てふためいた私は、どうすることも出来なかった。もはやお母さんに助けを

求めるしかなかった。お母さんはあきれ果てながらも、ピンセットで鼻の奥の笛

を取り出してくれた。ピンセットがけっこう奥まで潜入してきて私はびびった。

しかし、踏んだり蹴ったりの私にさらなる不幸が訪れた。「ドボドボ」と大量の

血が流れ出てきたのだ。素早くティッシュを詰め込んだが、すぐにティッシュも

真っ赤に染まってしまい、何度も何度も詰め直すはめに。

 いっこうに血が止まらないので、仕方なく、私はティッシュを詰めたままお母

さんの買い物について行ったのだった。

 もちろん、再び、スーパーでおまけ付きのお菓子を買ったことは言うまでもな

い。

 私は昔から懲りない人なのである。

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