小学生の頃学校には飼育小屋があり、そこにはウサギや、ニワトリ、インコが
飼育されていた。小学校5年生から、その飼育小屋の世話を割り当てられるのだ
が、私はその飼育係になることを志願した。飼育係の人の様子を見てすごく楽し
そうに思えたからだ。
飼育係には、他に2人にいた。たくちゃんと、高本さんだ。
全員飼育係をするのははじめてだが、皆で協力して何とか上手くやっていけた。
とは言っても、私とたくちゃんは、ほうきでニワトリの「光太郎(オス)」
(二人で名づけた)と格闘してばかりだったが・・・・。そんな僕らを高本さん
はいつも呆れ果てた目で見ていた。
そんな感じで、1週間が過ぎた・・・・・・・・・・・・。
1週間後のある日のことである。
その日は、朝早くから飼育小屋に行かなくてはならなかった。
私はたくちゃんと一緒に学校に行くことにした。朝、たくちゃんが家に迎えに来
てくれた。その手にいっぱいの草を持って。
「ウサギにあげるんだ」と嬉しそうに私に言った。いつもはニワトリや、ウサギ
と格闘しているたくちゃんだけど、やさしい所もあるんだなあと、私も嬉しくな
った。急ぎ足で学校に向かい、飼育小屋に向かう。
と、飼育小屋に着いた時。たくちゃんの右手に持っていた草が、突然「どさ
っ!!!」と落ちた。そうして、たくちゃんの動きが止まった。飼育小屋の金網
に、ぽっかりと穴が空いていたのだ・・・。
穴の大きさは、ちょうどそこらの野良犬が入れるぐらいのものだった。私は最
初何が起こったのか理解できなかった。恐わばったたくちゃんの顔を見て『どき
っ』とした。
嫌な予感がした。
恐る恐る、飼育小屋の中を見るとウサギ達が横たわっていた。
ぴくりとも動かない。光太郎の姿も見えない。ウサギは一匹残らず死んでいたの
だ。光太郎も、もう一羽のニワトリもどこにもいない。
ただ、インコだけが無事でいてくれた。
飼育小屋から少し離れた所に、光太郎の羽が無惨にも散らばっていた。『きっ
とここで、殺されたに違いない』私はショックが大きすぎて、涙すら出なかっ
た。
無言の時間が非常に長く感じられた。
みんなで、ウサギを学校にある小さな山の裏に埋め、たくちゃんの持ってきた
草も、そのまま一緒に埋めた。
ウサギたちの体は、棒のように固くなっていた・・。
高本さんの目には涙がいっぱい浮かんでいた。僕らだけでなくクラス全員が悲し
かった。
光太郎達の思いがけない死に、僕らの心にも飼育小屋に空いていたような穴
が、ぽっかりと空いた。
やり場のない怒りを僕らは、
どこにもぶつけようがなかった・・・。
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