第6話【黄金の右足】

 小学生の頃は、いろいろなクラブがあった。そのクラブというのは、誰かが、

勝手に作って、入りたい人なら誰でも入っても良いというものだった。私も、そ

んなクラブにいくつか所属していた。

 その日は、天気も良く、絶好のクラブ日和だった。私の入っていたサッカーク

ラブはその日、私の家の近くの太田公園で活動することになった。もちろん私

は、参加した。

 公園に着いたら、けっこうな人数が集まっていた。女の子も男の子も、みん

な、ごちゃ混ぜで、チームを組み、早速試合開始の笛が鳴った。私はなぜか、す

ごくはりきっていた。自分をまるで、キャプテン翼のごとく、思っていた。『絶

対に、俺が、点を入れてやる』と意気込んでいた。

 試合開始から、15分ほど経過しようとしていた時。絶好のチャンスが到来し

た。私の所にボールが来て、しかも、ゴールまで、前には、誰もいなかったの

だ。

『いけぇぇぇぇぇっっっ!!!!!』

 私は、渾身の力で、シュートした。まさに、キャプテン翼君バリだった。私の

稲妻シュートは、真っ直ぐ、ゴールに向かって飛んでいく、はずだった・・・。
 

 しかし、私の蹴ったボールは、私をあざ笑うかのように、ゴールを越えて、向

かいの喫茶店の窓めがけて、飛んでいったのだ。

『うおぉぉぉぉ!!そこだけは行かないでくれぇぇぇ!!!』

必死の思いも虚しく、ボールは、窓を突き抜けた。

 その時のゴールというのは、公園の金網のフェンスで、高さがなかった。ゴー

ルにしては、あまりにも低すぎたのだ。

 幸い、窓は開いていて人も座ってはいなかったが、窓の内側に、木製の網目状

の物が、取り付けられていて、それを破壊してしまった。

 私は、逃げ出したかった。そうして、ただ、ひたすら、

「ごめんなさい」を繰り返すことしか出来なかった。店の人が、

「お母さんか誰か呼んできて」と言って、私は、びびった。『絶対に殺され

る!!』と思ったからだ。

 家について、お母さんに事情を話し、ついてきてもらうことにした。その途中

に、たくちゃん(飼育係の)が、こう言った。

「おばちゃん、あんまり、怒らんといちゃってな」

『なんて良い奴なんだ。君こそ私の心の友だ』と、真剣に思った。

 お店について、お母さんともう一度、謝って、何とか、許してもらえた。

 後で、お母さんが、お酒を持って再び、誤りに言ってくれた。

家が酒屋で良かった。それと、私自身は、そんなに怒られなかった。

 それからというもの、サッカーは苦手になったのである。
 

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