4月22日        垂石 克哉氏

 第二回目は、オリコンエンタテイメント代表取締役社長の垂石克哉氏より「音楽ソフトのマーケティングー音楽ランキングの過去・現在・未来―」についての講義が行われた。(以下はその要約)


 音楽産業は規模としてはそれほど大きくない。年商で言うと、一企業であるTDKが6000億円、Pioneerが7300億円であるのに対して音楽産業は全体で4000億円だ。その中でオリコンは大変知名度が高い。調査では国民の97%が名前を知っていて、その内の68%がランキング情報を利用している。
 オリコンは昭和42年に小池聰行により設立され、オリコンチャートは“人間の人気を数値にしたい”という小池の発案により誕生した。当初は全国にある300店のレコード販売店に電話をかけて、口頭で売上を聞き、それを手計算で集計をしていた。その後70年代に入ると、ファックスにより情報を受け取れるようになったが、それでも集計は手計算だった。そして90年代に入り、POSシステム(バーコード)が導入され一日一回レコード店からオリコンへ売上データが届くようになった。全国に5000店あるレコード店のうち、2900店からデータが届くようになった。
 当初オリコンチャートは各店のレコードの売上をただ並列しただけだったが、音楽業界から“集計をして欲しい”という要望があり現在のようなオリコンチャートが誕生した。そして今ではオリコンチャートは音楽業界では大きな影響力を持つものとなった。その表れとして、CDは水曜日に発売されることが多いという事実がある。これはオリコンが毎週月曜日から日曜日の集計をするということに起因する。一見月曜日に発売するのが最良に感じるが、実際月曜日に発売しようとすると、商品のCDが金曜日に納品されてしまい、金曜日に発売となり、売上の記録が2週に分離されてしまうのだ。そして水曜日に発売すると、CDの納品が月曜日より早まることはないので、発売には最良な曜日となった。
 年代別シングル1位作品売上枚数の視点から見ると、1975年に歴代群を抜いた記録の450枚を売り上げたのは“およげ!たいやきくん”であった。その後1985年から1987年にかけて売上枚数が50万枚まで落ちたが、これはアナログからコンパクトディスクへの改革によるものだった。そして1991年にまた250万枚のヒットを出した。これは、カラオケとタイアップの影響だ。曲は小田和正の“ラブストーリーは突然に”で、月曜日21時のドラマ“東京ラブストーリー”の主題歌だった。
 オリコンの当初の役割は、音楽産業界にマーケティングデータを知らせるというものだった。その役割は果たされ、オリコン雑誌は毎週一冊4900円という高値で刊行されているにもかかわらず、約一万部売れている。次にオリコンは一般紙を発刊し、オリコンランキングを音楽業界だけでなく、一般の人にも提供できるようにした。そしてオリコンの最近の役割は、“いい医者ランキング”や“ニュースな人ランキング”など様々なランキングを提供することである。今後は音楽配信・着うたフルのランキングを提供していくことを予定していて、今年中には提供できるようになるだろう。
トップ アイコントップページヘもどる

JASRAC寄付講座

コンテンツ産業論 I
直線上に配置
直線上に配置