6月10日    中村 和則氏

トップ アイコントップページヘもどる

JASRAC寄付講座

コンテンツ産業論 I
直線上に配置
直線上に配置

 

第八回目は、株式会社オフィス・ヘンミ取締役の中村和則氏より「テレビ番組・水戸黄門にみる時代劇コンテンツと利害関係」をテーマに講義が行われた。(以下はその要約)

<水戸黄門について>

 昭和48年に、賞が取れるような芸術作品(番組)を作り上げるという風潮がプロデューサーの間で広がった。その結果、視聴者との間に距離ができて、視聴者が離れていくという事態が起こった。そして、この事態を救ったのが「水戸黄門」であった。「水戸黄門」は現在も続いており、作品数は1000本を突破している。

 「水戸黄門」と言えば“印籠が出されてその場にいる人達が土下座をする”というシーンが有名であるが、長い放送歴のうちこのシーンを放送しない回が2回あった。そしてその回の視聴率は、通常よりもよくなかった。このことから、視聴者が「水戸黄門」にこのシーンを求めていることがわかる。製作側はこのシーンのように視聴者が求めているものを掴むことが大切だ。

<マスコミ業界のタブー>

 マスコミ業界で絶対にしてはいけないことは“引き抜き”である。なぜならば、スターを引き抜かれたプロダクションは採算が取れなくなるからである。プロダクションにおいてスターに成長するのは1000人中3人程度で、そのスターの3人に残りの997人分の稼ぎもしてもらわなければならないからだ。また、“引き抜き”に関してはどのプロダクションの見解も厳しい。“明日は我が身”という考えから、業界全体が引き抜かれたプロダクションに見方をするので、もし“引き抜き”をすると、業界全体を敵に回し商売ができなくなる。将来マスコミ業界に入って、もしも“引き抜き”の話を聞くことがあったら、「知らん顔」をしておくのが得策だ。

<メディアで一番大切なこと>

 メディアで一番大切なことは、“お客を喜ばせること”である。芸術作品賞を受賞するような立派な作品ではなくても、お客が“泣いた・笑った・感動した”と言ってもらえれば最高の作品といえる。反対に、芸術的に優れていたとしても、視聴者にとってわけのわからない作品(番組)は駄目で、視聴者にとって面白いもの、視聴者が喜んでもらえるものでないと駄目なのである。

<将来メディアに携わる皆さんへ>

 今の若者はメディアやハードに慣れている。ゆえにその環境を活用して、新しいマーケットを作ることを期待している。具体的には、お年寄りにもわかる簡単なメディアやパソコンが簡単に使いこなせるような何かを作り出して欲しい。

 人生には“チャンスとセンス”が必要だ。“チャンス”とは“機会”のことであり、“センス”とは“努力”のことだ。チャンスは自ら得られるものではないが、センスは自分で磨き上げるものなので、たくさん勉強してたくさん経験を積んで磨き上げて欲しい。具体的には過去の大作は一通り知っておくべきで、本で読んだり映像があれば必ず見ておいて欲しい。そしてチャンスとセンスを掴み取り、その知識と経験によって放送しては駄目なものを見極め、駄目なものは駄目と言えるようになってくれることを期待する。