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2023/12/25

No.101「女子の進学率が低かった時代を乗り越えてきた軌跡」
●1970年卒業:奥村 ちくさ さん

薬学部から産業社会学部への進路変更

 私の長男や濃い親戚には15名の立命館卒業生がいて立命館ファミリーです。甥の一人は立命の理工を出て富士通に勤め社会人博士で東大に入り昨年化合物半導体の研究で博士号を取り40の特許申請をしたという強者です。

 さて、私の住む甲賀町は甲賀流忍術で有名ですが、近くには「茜さす…」の額田王の贈答歌で有名な蒲生野があります。蒲生野は昔、薬狩(くすりがり)という宮廷行事が行われた地でした。蒲生野の近くの甲賀町は近江商人の薬売り、売薬業を中心として発展して来ました。いくつかの薬会社があり親戚には薬学部を出た人や薬局をしている家もありました。祖母の兄の孫は薬学部で知り合った岩倉具視の子孫の方へ嫁いだという話もきき、私も薬学部を目指そうと高校時代は微分積分の数三に化学もとって受験勉強をしました。

 しかし、薬会社に用事があって行った時、動物の慰霊碑があるのに気がついて尋ねると薬会社では動物実験が必要であり、その供養塔だと言うことで私はショックを受けました。動物実験は嫌だという気持ちが強くなって薬学部をやめることにしました。その時目にしたのが前年に創設された産業社会学部でした。親からは通学圏内でしか進学は許されてなかったので進路変更としました。受験科目を効率よく勉強するだけでなく、受験科目とは関係ない勉強もし、教養となるので決して無駄ではなかったと思っております。

卒業後の活動に助けとなった「マンモス大学ゆえの人脈の豊かさ」

 大学での講義では社会心理学、労使関係論、社会教育学などが、今会社を経営するにあたって参考になっております。又、所属していた古美術研究会のサークル活動は甲賀忍術博物館の館長としての知識に役立っています。

 また、マンモス大学ゆえの人脈の豊かさが色々な場面で助けになりました。女子の進学率が低かった時代、男尊女卑を感じる社会で学歴に助けられたと感じる場面もあり、ありがたかったと70年の人生を振り返ります。中学と高校の教員資格もとりましたが、卒業してから立石電機㈱(現オムロン㈱)に入社、労働組合の会議の書記や人事や福祉などの仕事をしました。この間に衛生管理者の資格も取り役立てました。三年間勤めて結婚のため退社。子育て中に簿記三級の資格を取りました。

 昭和57年(1982年)には現存する忍術屋敷が老朽化のために壊されるということで保存をお願いに役場に頼みにいった所、予定もないし予算もないという話だったので仕方なく個人的に保存できないかと弟と考えました。保存や修復には費用がかかることから「甲賀の里忍術村」「甲賀忍術博物館」を開村してその収入を維持保存、修復に充てることになりました。私の祖父は甲賀、祖母は伊賀忍者のクウォーターです。漫画でみるような甲賀と忍者が戦ったという史実はありません。徳川家康の神君甲賀伊賀越えでも甲賀も伊賀も堺からの脱出を助けているのです。

今までの功績と、今世界へ思うこと

 草津にBKCができる時、立命館大校友会滋賀県支部の理事をしていたので桜の木を植える運動の寄付集めに協力しました。水口東高校のPTA副会長をしました。甲賀町青少年育成委員も長年勤めました。そして、40年前に保存した3つの建物は日本遺産 甲賀忍術博物館建物群として指定を受けました。

 開村から37年、歴史の中ではスペイン風邪などの疫病が大流行することがあると学んではいても現実にコロナという疫病が大流行するとは夢にも思いませんでした。令和3年には第72回全国植樹祭記念「嵯峨御流華道展㏌甲賀の里忍術村」を開催。

 令和5年には文化庁伝統文化親子教室事業甲賀の里いけばな教室を開催しました。令和4年には今までの観光事業への協力がみとめられ「滋賀県観光事業功労者賞」をいただきました。令和5年10月8日には第40回全日本忍者選手権大会を忍術村で開催いたしました。

 旅が好きでコロナの流行する前にロシアに行きました。赤の広場には戦車がずらりと並び圧巻でした。ウクライナ進攻の準備だったかもしれません。

 私達は「幸せ」でありたいと願っています。平和の上でしか「幸せ」は築けません。「遠く離れた国の戦争に対して無力な私達が何ができるのでしょうか」とテレビで質問されていた国連の方は「この戦争について話題に載せ無関心にならないことです」と仰ってました。

 一日も早く今の戦争の終わることを祈るばかりです。

●奥村 ちくさ(おくむら ちくさ)

卒業年月日 1970年3月 卒業
出 身 地 滋賀県
現 住 所 滋賀県
勤 務 先 甲賀の里忍術村 代表
(財)NINJA 代表理事
甲賀㈱ 代表取締役
甲賀忍術博物館 館長
ゼ ミ 名 後藤金十郎先生
所属サークル
団 体
古美術研究会