2016/5/12
保育所待機児問題が連日マスコミを賑わせています。私は東大阪市で、その渦中の認可保育所経営に携わっています。1970年代、待機児童の父母たちが部屋を借り、保母(当時)を雇い、なんとかお金を工面して続けられてきた「共同保育所」で、バザーや廃品回収や行商で運営費を稼ぎながら、大人たちが子どもたちとともに育つ不思議なメカニズムに魅了されてきました。旧児童福祉法第24条に基づく公的な保育責任について、「共同保育は歴史の証人」を合言葉に、正規の保育所に入所できなかったことに対する行政不服審査請求、保育所整備にかかわる行政の不作為についての行政裁判など、全国で初めての取り組みも作り出しました。
そしてついに2001年4月社会福祉法人を設立し、認可保育所となることができました。法人理事長は、東大阪在住で当時立命館大産業社会学部教授だった鈴木良先生にお願いしました。私は、奈良女子大附属中・高で鈴木先生に歴史を習い、部落問題研究会を設立してご指導いただいてから長い長いご縁があります。
職場は認可されて運営は格段に楽になりましたが、親たちと一緒に建てたプレハブ園舎はそのまま。たちまち3歳児が卒園したらまた待機児童になってしまいます。厚労省は、認可後10年以内の建替えにはビタ一文出せないというので、再び卒業生や支援者に呼びかけて、数千万円の寄付を集め、5歳までの保育園を自力建設しました。
大学院で学びたいと思ったのは、その園舎の完成が間近になった2003年のことです。乳幼児の発達保障の全面的な学び直し、増えてきた軽度発達障害の早期発見と家族支援など、専門的な知識の裏付けの必要に迫られていました。立命館大学大学院が社会人入学を幅広く受け入れ、夜間講義も含め便宜を図ってもらえたことで、私はあこがれのキャンパスを闊歩して、2年間で30単位ギリギリを稼ぐことができました。55歳の出来事です。
櫻谷眞理子先生には本当にお世話になり、歴代のゼミ生との交流や、カナダの子育て支援の視察など、夢のような時間をいただきました。櫻谷先生は、東大阪市の教育研究所にお勤めだったころ、私たちの共同保育所にご長男を預けていた保護者でもあります。保育所運営の苦労もよく知って下さっています。超多忙な日常から遠く離れたしばしのアカデミックな時間は、私の生涯の宝物です。
鈴木良先生は、2015年2月に東大阪の病院で急逝されました。部落問題の解決課程の研究で最終資料をまとめておられた途上でした。東大阪では、私たちと一緒に様々の市民運動を手掛けて下さり、最後は育鵬社の歴史教科書の採択問題で市民的な勉強会をしている最中でした。
遺された私たちは、良先生の多面的な人間像にほんの少しでも迫りたくて、別添のような偲ぶ会を予定しています。
どなたでも当日参加できますので、ゆかりの方はどうぞお越しください。
●乾 みや子(いぬい みやこ)
卒業年月日 | 2006年3月 博士課程前期課程修了 |
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出 身 地 | 奈良県 |
現 住 所 | 大阪府 |
勤 務 先 | 社会福祉法人どんぐり福祉会 |
ゼ ミ 名 | 櫻谷眞理子ゼミ |
所属サークル 団 体 |
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【 良先生と私たち ~この街に 歴史家 鈴木良がいた~ 】
日 付: 2016年6月19日(日)
時 間: 開場13:00 開演13:30
場 所: 大阪府立中央図書館 ライティホール
入場料: 協力券一般 1,500円 学・障 1,000円