2017/3/30
1988年篠田ゼミの卒業生で鈴木浩幸といいます。
在学中、「産社って何をするところ?」と尋ねられ、いつもうまく説明できませんでした。ところが最近、産業社会学部のある先生が、北野天満宮を例に、「天満宮の歴史や文化は得意でないかもしれないが、天満宮の境内にさて牛は何頭いるでしょう?という発想は産社の学生ならでは」と冗談半分におっしゃるのを聞いてすっかり納得、「産社とは何か」という謎が一気に解決しました。
この牛の例え話には異論のある方もいらっしゃるでしょうけど、とらわれず自由、真面目と遊びの境界が曖昧、それでいて妙に真理をついている。これが「産社」なのだろうと思います。
社会に出ていくつめかの会社として京福電気鉄道にお世話になり、静かで地味な事務員で終わるつもりでした。が、たまたまのめぐり合わせで、嵐山駅の駅舎をデザイナーの森田恭通さんと一緒にリニューアルしたり、駅に足湯を作ったり、比叡山のレジャー施設建設、名古屋や福岡の飲食店事業など、思いがけない仕事をすることとなりました。
既存セクションで担当できない雑多なものが常に舞い込んでくる立ち位置に居続け、結果、何一つとしてプロにはなれませんでしたが、「これといった専門もないので、役に立たないかもしれませんが、僕でよければ何でもやりますよ」という仕事上の基本姿勢は、枠を作らず枠に収まらず、常に好奇心にあふれた「産社」の精神が、知らず知らず身についた結果なのかもしれません。
大学のすぐ近くを走る「嵐電」の会社に勤めながら、これまでは嵐電や沿線地域と程遠い分野の仕事ばかりしてきました。が、近年の嵐電の事業基盤の強化、昨年(2016年4月)の「撮影所前」駅新設、先週(2017年3月)の阪急西院駅と嵐電西院駅のエレベータによるバリアフリー結節など、の中で、近年ようやく「沿線の」立命館大学さんとミッションをともにする機会に恵まれるようになりました。
今の衣笠キャンパス、ハードは本当に上品で立派です。
でも、大学はちまちまと小綺麗に整理整頓されていてはだめで、あちこち綻びながら、とらわれず、みずみずしく、わくわく感がなければ。
僕らは生涯アマチュアです。わかったつもりになったら終わりです。
すてきなアマチュアリズム、これがすなわち「産社イズム」なんだと思います。
●鈴木 浩幸(すずき ひろゆき)
卒業年月日 | 1988年3月 卒業 |
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出 身 地 | 静岡県 |
現 住 所 | 京都府 |
勤 務 先 | 京福電気鉄道㈱ |
ゼ ミ 名 | 篠田武司ゼミ |
所属サークル 団 体 |
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「嵐電・嵐山駅。森田恭通氏がデザインした京友禅の光の柱が600本。何とかこれを実現させたくて、初めて役所に持ち込んだ時には、良い悪い判断の範疇に入らないそもそもありえない物体、と門前払いされてしまいました。今では「地球上にふたつとない駅」としてにぎわっています」