文化遺産と芸術作品を災害から防御するための若手研究者国際育成プログラム

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派遣者報告

2011年度 海外パートナー機関との共同企画報告


■ 若手研究者国際ワークショップ

 本ワークショップは「The Future of the Past」と題して、「第4回文化遺産のための都市計画と保全政策に関する国際会議」と「第5回文化遺産のためのアーバン・ゲーミング・シミュレーションとアーバン・デザインに関する国際ワークショップ」の二部構成で実施した。
 世界中の文化遺産や都市は世界規模の環境破壊や人的活動によってもたらされる深刻なリスクに直面している。それゆえ文化遺産を保全するための効果的で迅速な対策をとることが必要である。本ワークショップの目的は、文化遺産の保全や再活性化に関する様々な関係者や分野の異なる専門家が一同に会し意見交換を促進することだけでなく、ゲーミング・シミュレーションの特質の一つであるlearning by doingによって、文化遺産保全・防災分野に関するアーバン・デザインや都市計画などを専攻する若手研究者の育成にある。
 本ワークショップは、専門家による講義、参加者(若手研究者)による研究発表と意見交換、文化遺産を有するコミュニティで課題発見のための現地調査、専門家・教員による指導のもとでの若手研究者による文化遺産保全・防災のためのゲーミング・シミュレーション・プロトタイプの開発、プロトタイプによる解決策提示へ向けた専門家・教員への成果発表という段階を経て、若手研究者育成が実施された。

開催日2011年8月24日(水)〜31日(水)
開催場所タイ・タマサート大学建築計画学部(ランシット・キャンパス)
参加者32名
立命館大学教員(1名)、タマサート大学教員(1名)、サッサリ大学教員(1名)、ユネスコ・バンコク職員(1名)、タイ・チュラローンコン大学教員(1名)、タイ・マヒドン大学教員(1名)、本ワークショップの研究対象事例であるサムチュック・コミュニティのリーダー(1名)、立命館大学ITP派遣者(1名)、立命館大学大学院生(7名)、タマサート大学若手研究者(講師・リサーチアシスタント)(5名)、京都大学大学院生(1名)、タマサート大学生・大学院生(11名)

 なお、本ワークショップの開催に当たっては、立命館大学、タマサート大学、サッサリ大学が共催し、国際シミュレーション&ゲーミング学会(ISAGA)、日本シミュレーション&ゲーミング学会、タイシミュレーション&ゲーミング学会(ThaiSim)、ISS-ISAGAサマースクールの後援とともに、若手研究者インターナショナル・トレーニング・プログラム(ITP)「文化遺産と芸術作品を災害から防御するための若手研究者国際育成プログラム」およびグローバルCOEプログラム「歴史都市を守る「文化遺産防災学」推進拠点」の支援を受けた。



■ 若手研究者国際ワークショップ

 本ワークショップは、「環境リスクの意識と責任:パブリック・スペースとしての避難場所のデザイン」と題して実施した。
 意識(awareness)は知識(knowledge)とは切っても切り離せない関係にある。その知識は、分析、洗練、推論、決定、そして行動をするための必要条件である。都市計画家が関わる分野では、決定を下す前に「知っている」ということは、デザイン・プロセスにおいて何が考慮に入れられるべきで、何が除外されるべきかを理解するために、「どのように」、「どこで」、「誰のために」、そして「なぜ」を意識して選択することを意味する。知識が不足している場合、最適なプランニングに必要な重要な要素を見逃してしまうリスクを避けられない。本ワークショップでは、グループ作業や、デザイン・プロセスにおける選択に基づいた代案シナリオ準備のためにプロジェクトに関連する分野の専門家の科学的知見を利用することの重要性と必要性を理解するとともに、環境リスク要因について議論する機会が創出される。それに加えて、本ワークショップでは専門家の倫理に関する疑問について議論する機会となる。このようなリスク課題は自然災害が発生した後でのみ表出するものであり、そのときに限って科学に基づいたプランニングやアーバン・デザインによって環境リスクを低減・回避することができる。本ワークショップでは特定の事例におけるデザイン・プロセスを通じて、あらゆる分野の専門家グループによる指導のもと、参加者育成が実施された。その専門家とは、地理学や地形学、水文地質学、気象学、都市計画、交通、心理学、コミュニケーション、リスク管理や危機管理、法学、意思決定における参加と調整に関る分野を専攻する識者である。本ワークショップの目的は、環境リスクに関わる問題の中でも、まず第一にイタリア・サルディニア島が特に直面している水文地質に関する問題を喚起することである。なお本ワークショップの成果は、2011年12月4日(日)〜12日(月)までsala of Parco di Monte Claroにおいて展示された。

開催日2011年12月1日(木)〜3日(土)
開催場所Parco del Molentargius - Saline, Edificio Sali Scelti snc, via Saline, Cagliari
(イタリア・サルディニア島)
参加者44名
建築や工学、都市計画、都市研究を先行する上級研究者や大学院生、既卒者を参加の対象とした

本ワークショップに関する詳細な情報は、以下のリンクより参照することができる。
http://www.architettura.uniss.it/Eventi/Scuole-estive-e-workshop/Workshop-rischio-ambientale