文化遺産と芸術作品を災害から防御するための若手研究者国際育成プログラム

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派遣者報告

2012年度 海外パートナー機関との共同企画報告


■ 若手研究者国際ワークショップ

 ITP派遣中の若手研究者2名が中心となって、ロンドン大学SOASの日本宗教センター(Centre for the Study of Japanese Religions)との共催のもと、国際ワークショップ「芸術が儀礼と出会う場所:日本における美学的また宗教的実践をめぐって(Where Art Meets Rituals: Aesthetic and Religious Practices in Japan)」を開催した。
 このワークショップは、文献やイメージ、さらには実際の儀式の分析を通して、日本における儀礼の宗教的また芸術的な諸相を明らかにしようと試みられたものである。必ずしも仏教や神道などの狭義の枠組みに当てはまらない「儀礼」という幅広い概念を用いることにより、研究発表は多岐に渡った。
 一部はいずれも仏教にかかわるもので、高橋伸城氏(立命館大学)は大英博物館所蔵の英一珪筆《八刀毘沙門天像》を取り上げ、その図像のもつ美術史的また宗教的な意義を論じた。Benedetta Lomi氏(ロンドン大学SOAS)は六字天という特殊な図像の変遷を文献とイメージの双方から分析、またMikael Bauer氏(リーズ大学)は発表者自ら参加した維摩会と慈恩会の次第から、興福寺の儀礼的空間を再構築した。
 二部は「儀礼」というより広い概念のもと、多彩な発表がなされた。桐村喬氏(立命館大学)はGPSなどを用いて、現代における浄土真宗の本願寺派と大谷派の地理的分布を明らかにした。李増先氏(立命館大学)は曲水宴という題材を取り上げ、イメージや文学の中に生きてきた儀礼のあり方を分析した。Taka Oshikiri氏(ロンドン大学SOAS)は江戸期に行われた茶壺道中に注目し、これまで十分に研究されてこなかったその全容について報告した。
 質疑応答も活発に行われ、かつて行われていた儀礼を現代に再構築することの意義、また仏画など宗教にかかわる視覚物がそれ本来の文脈から切り離されて鑑賞されていることの是非など、議論もそれぞれの若手研究者にとって有意義なものとなった。

開催日2012年10月5日(金)
開催場所ロンドン大学アジア・アフリカ研究スクール(SOAS)
参加者34名
若手研究者ITP派遣者2名、立命館大学・教員2名、立命館大学・PD1名、立命館大学・大学院生1名、ロンドン大学SOAS・教員5名、ロンドン大学・大学院生14名、オックスフォードブルックス大学・教員1名、ケンブリッジ大学・教員1名、リーズ大学・教員1名、大英博物館・職員2名、セインズベリー日本芸術研究所・研究員1名、在野研究者1名、一般参加者1名、立命館大学・職員1名


 




■ ITP Joint ARC-HPU-UHM Research Workshop on Japanese Performing and Visual Arts

 本プログラムによる派遣者の研究活動の目的・意義を、文化財を所蔵するホノルル美術館および美術館所在地であるホノルル市で活躍する日本学研究者に周知し、文化財の保全にかかわる意識の底上げを図ることを目的に開催した。
 ホノルル美術館所蔵品のうち、本事業派遣者の研究課題である浮世絵、とりわけ歌舞伎をテーマにしたものを取り上げ、ハワイ大学演劇学部、日本学研究センターと共同で、その価値と文化史的な意義をめぐる研究発表の場を設けた。国際ワークショップでは、現地の大学院生および研究者、ならびに本学側からこれまでにホノルル美術館に本事業を利用して派遣された若手研究者らが発表をし、本プログラムの総まとめとして位置づけるに相応しいものとなった。
開催日2013年3月2日(土)
開催場所ハワイ大学(マノア校)
参加者30名
若手研究者ITP派遣者1名、立命館大学・教員1名、立命館大学・PD1名、ホノルル美術館・学芸員4名、ハワイ大学・教員4名、ハワイ大学John Young Museum・学芸員1名、ハワイ大学・研究員1名、ハワイ大学・大学院生5名、ハワイ大学・職員2名、ハワイ・パシフィック大学・教員2名、ハワイ・パシフィック大学・助手1名、ハワイ・パシフィック大学・学生2名、日本学術振興会・特別研究員1名、セント・メアリーズ・カレッジ・オブ・メリーランド・教員1名、Tomoe Arts・アーティスティックディレクター1名、立命館大学・職員2名