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2007年7月7日 講師:高木 正朗

近代移行期の人口減対策−東北地方をフィールドとして−

 現代日本の人口減少・急速な少子化については、先進諸国と同様、その原因究明や対策の提示・提案がなされ、新聞紙上でも話題に事欠かない。しかし、出産は個人に関わる問題だし、寿命は個人の意思を超えたところで決まる。従って、「人口行動の制御は総合的なパッケージを整えて、長い目でおこなう以外に名案はない」と覚悟することが肝要だろう。
 200年前の日本でも、同様の課題に直面した国家として東北諸藩がある。その時期には、寿命つまり人口高齢化の問題はなかった。しかし、人口減とその原因である人口制限(いわゆる堕胎・間引き)と疾病対策が、焦眉の課題だった。この課題を解決しなければ、サラリーマンであった武士階級は食えなかった。大名は、幕府の課役を果たせなければ国を潰される危険があり、自ら体面を保てず失態を天下にさらすので、恐怖を感じたに違いない。そこで、東北諸藩は人口対策に本気で取り組んだ。人口減の理由は、第1に突発的な気象災害、第2は子沢山の回避、第3は米作に傾斜しすぎた農業構造による人口lossだったようだ。
 このシリーズは、江戸から明治初期(移行期)の「人口問題」を人口学の視点で読み解き、今日的課題に対するヒント・示唆をえることを目的とする。  

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