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2007年8月25日 講師:角田 将士

歴史教科書問題の脱構築−歴史解釈論争を超えて−

 歴史教科書は「どのような記述を是とするか」という視点からではなく,「その教科書を用いてどのような歴史授業を創造していくのか」という教科教育学的視点から吟味されるべきである。
 そもそも歴史は「解釈」されたものとして存在しており,一つの事象についても多様に解釈することが可能である。それゆえ「誰もが納得する」形で歴史を記述することは不可能なのではないか。
 これまでの歴史教科書問題は,決着困難な歴史解釈論争に終始するあまり「どのような歴史授業を行うのか」という基本的な,しかし教育である以上最も重要であるべき視点を欠いたまま議論が展開されてきたといえる。
 戦前教育の反省の上に立ち,民主主義社会を支える市民を育成する教科として成立した社会科は自主的自立的な思想・生き方形成を支援することをねらいとする。学校教育における「歴史」はそのための手段となっていかねばならない。そのための授業は,教科書の内容を真理としてとらえ,それらを子ども達に一方的に受容させていくようなものではなく,子ども達がその妥当性を批判的に検討し,自らの歴史認識を構築していくための場を保証するものになっていくべきではないか。  

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