近年、フランスやベルギー、英国、ドイツなどの欧州諸国では、イスラーム過激派の犯行とみられるテロやテロ未遂事件が相次いでいます。
「イスラーム国」やアル・カーイダの拠点となっている中東諸国から地理的に離れ、これまで比較的「安全」と考えられてきた欧州諸国でのテロの頻発は、
これらの国々において、テロ対策のあり方や移民をめぐる政治的論争を引き起こしています。
2015年11月のパリ同時多発テロ事件のように、人口密集地や交通機関などの社会の脆弱な拠点を攻撃し、メディアを通じて犯行を誇示するイスラーム過激派の
行動は、心理的闘争としてのテロリズムの性質を最大限に利用したものだと言えます。一方、欧州の市街地でなぜこのようなテロが実行できるのか、
なぜ事件が頻発するのか、といった理由を考えることは、脅威の実態を冷静に把握し、効果的な対策を進めるためにも重要だと言えるでしょう。
今回は、近年の欧州におけるテロ事件の頻発と関わりを持つ、一般市民が過激なイデオロギーの影響を受けてテロの実行へと踏み出す
「過激化(radicalization)」の問題を紹介します。「過激化」の問題は、欧州にとどまらず、テロ対策の国際的な課題として、近年急速に認知されつつあります。
欧州における実際のテロ事件を例に、そのメカニズムと対策について考えてみたいと思います。
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