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2018年11月17日 講師:佐藤 渉

オーストラリア文学に描かれた日本人真珠貝ダイバー
――ハーバートの短編「ミス・タナカ」とロメリルの戯曲『ミス・タナカ』

 みなさんはオーストラリア文学と聞いて思い浮かぶ作家がいるでしょうか。邦訳されている作品が比較的少ないため日本ではあまり知られていませんが、オーストラリアでは多様な文化的背景を持つ作家たちが活躍し、国境を超えて注目を集めています。オーストラリアは1970年代に多文化主義政策を採用し、さらにアジア太平洋地域へのかかわりを強めていることもあって、アジア系作家の活躍が顕著であり、アジアを描いた作品も少なくありません。 今回の講演ではオーストラリアの作家が日本人を描いた作品を紹介します。日本とオーストラリアの関係は、戦火を交えた太平洋戦争以前にさかのぼります。20世紀初頭、オーストラリア北部地域の主要産業となっていた真珠貝採取業に、多くの日本人移民が契約労働者として従事していたのです。真珠貝採取業の拠点のひとつ、ダーウィンの日本人社会をユーモアたっぷりに描いたザビア・ハーバートの短編「ミス・タナカ」(1933)と、この短編を換骨奪胎し、現代の視点から当時の社会を再構成したジョン・ロメリルの戯曲『ミス・タナカ』(2001)を読みくらべ、時代の変化に伴う日本人像の変遷をたどります。


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