立命館土曜講座 開催講座一覧


2019年6月22日 講師:福本 繁樹

南太平洋に民族美術を訪ねて

  経済成長がめざましかった日本の1960年代は、1964年の海外渡航自由化もあり「探検の時代」といわれ、各大学が競って世界の辺境の地へ調査隊や探検隊を派遣した。私は京都市立美術大学が1969年に派遣したニューギニア未開美術調査隊のメンバー6名の一員だった。まだ学生だった私は、パプアニューギニアの奥地で、闊達で躍動的な民族美術と衝撃的な出合いを体験した。当時日本ではオセアニア美術についての情報はきわめて限られていたが、ヨーロッパでは100年以上前からシュルレアリストと呼ばれる芸術家などがオセアニア美術を熱狂的にもてはやし、各地の博物館に充実したコレクションもある。しかし当時の欧米では絵画や彫刻ばかりがアートだといわんがばかりに、オセアニア美術としても仮面や彫像ばかりもてはやし、土器・染織・装身具・貨幣などの工芸品にはほとんど無関心だった。魅力的な民族美術が未調査で手つかずのままだった。そのため私は知られざるオセアニア美術を求めて十数回、のべ2年余りの探査行をくりかえすこととなった。今回その体験談とともに、私が現地で観たオセアニア美術の概要を紹介したい。

前のページに戻る

このページのトップへ