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2019年11月9日 講師: 佐々木 冠

「訛り」の彼方に見えるもの:日本語方言の文法的多様性

 方言といえば訛り、そんなふうに思っていませんか。訛りは標準語からの音のずれで、「旗」と「肌」が
東北地方ではハダとハンダと発音され、「座布団」が茨城県ではザプトンと発音される現象です。訛りだけで、日本各地の方言を特徴付けることができるなら、方言の間での逐語訳が常に成立するはずです。しかし、逐語訳が成立しないことがあります。訛りだけでは捉えきれない多様性が日本語の方言にはあります。  

  訛りに還元できない多様性には、語彙の多様性と文法の多様性があります。語彙の多様性と違って、文法の多様性はメディアで取り上げられることも少なく、使っている本人も気づかないことがあります。  
 夕方の札幌市のスーパーでお客さんがつぶやいた「半額シールが貼らさった」という文は東京や京都のことばに直訳できません。札幌市の学校で先生が生徒に言ったソージスレは標準語の「掃除しろ」から導くことはできません。南房総市で誰かが質問したイマアニシテッダを標準語に逐語訳すると「今何しているだ」という落ち着きの悪い文になります。これらは全て方言の文法的多様性によるずれです。この講演ではこのような文法的多様性のいくつかを取り上げます。


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