立命館大学 大学見本市

分野

ナノテクノロジー

分子材料のナノ構造制御
-光学素子に超機能を創発

Rational Method to Control Ordered Nano-Structures in Molecular
Materials-Emergence of Super-Functions in Optical Elements

SDGs9
生命科学部
堤 治 教授

OUR FIELD

研究の概要、狙いなど

新しい機能を低コストで素材に付与する、これまでにない手法

汎用性の高い高分子材料から新たな機能を引き出す技術の開発が私たちの研究テーマです。素材開発の分野で主流である分子そのものを設計・合成し、新たな性質を持たせるという方法は環境負荷も高く、コストもかかります。合成により生み出された数多ある分子を、新たな素材へと昇華し、高機能化するためのアプローチとして、私たちが目を付けたのが分子の「並べ方」。新しい分子を作るのではなく、既存の素材の中で分子の並び方を変えたり、最適な形で配置したりすることで、素材に新しい機能を与え、性能をより高度にする方法を模索しています。

FEATURE

シーズの特徴

分子のポテンシャルを最大限に引き出して、新たな機能を生み出す「並べ方」とは?

私たちが開発した技術のポイントは、らせん状に並んだ分子の並び方を自在に制御し、三次元で配列できるという点です。分子がらせん状に並ぶという性質自体は新しい発見ではなく、100年以上前から知られていました。しかし、らせん軸の向きをコントロールし素材化する技術は成熟しておらず、機能を十分に生かしきれていませんでした。私たちが考案したのは、らせん軸を自由に動かし、配置する技術です。三次元方向でらせん軸の自在な配列を可能にしたことで、分子を配列させるパターンが飛躍的に増加しました。これまでにない配置が、新たな性能を持った素材の誕生につながっています。
例えば、分子のらせん軸を中心から外側に向けて並べた微粒子の球体は、分子の新たな配列によって生まれたプロダクトの一つ。自然光の中から特定の色と「円偏光」の情報を取り出すことができるこの素材をインクとして印刷すると、円偏光フィルターをかけなければ見えないセキュリティ印刷に応用することができます。このように、並べ方を変えるだけで多種多様な性質を持った素材を作り出せるのが、私たちの技術の最大の特徴です。

VISION

解決したい未来

夢の情報伝達手段「光学情報」の制御を可能にする

私たちが目指すのは、あらゆる分子の配列を緻密にコントロールできる手法の確立。現状では分子や素材の性状に合わせて調整を行わなければならず、材料ごとに制御方法を考える必要があります。何度も、何度も実験を繰り返し、その中から技術のエッセンスを抽出することで初めて汎用的な手法の確立が可能になります。理論が確立されていない空白地帯への挑戦にやりがいを感じています。
また、無機材料ではなく、有機材料を取り扱っている点も注目に値すると考えています。金属をはじめとする無機材料の超微細加工には、高い技術と非常に大きなエネルギーが必要になりますが、私たちが扱う有機材料は比較的簡単かつ低エネルギーで製造・加工が可能。さらに資源量という面でも、希少金属を用いない有機物のほうが持続的な素材の生産を可能にします。従来は無機素材を使用していたものの代替として、あるいはこれまで無機素材では手が出なかった分野で、新たな性質を持った有機素材を活用することが、社会のサステナブル化と高度化に貢献できるのではないかと考えています。 今、取り組んでいるのは光学情報の活用を可能にする素材の開発。光から色情報だけではなく、より高度な情報を取り出すことができるよう研究を進めています。現代社会では、情報伝達手段の主流は電気情報。光学情報を電気情報に代わる手段としてもっと利用することができれば、現在より遥かに大きな情報量を高速でやり取りできるようになります。光を自在に扱う素材を開発することで、より住みよい社会の実現に貢献できるのではないかと期待しています。

TOPページへ戻る