立命館大学 大学見本市

分野

シニアライフ(高齢社会)

数値的指標に基づく
訓練が可能な
口腔ケアシミュレータ

Oral care simulator capable of training based on numerical data

SDGs3
理工学部
松野 孝博 助教

BACKGROUND

研究の背景

口腔ケアのテクニックを数値化する看護理工学の取り組み

近年、新たな発展を見せている看護理工学。工学の考え方を導入し、医療分野の知識や技術をデータとして次世代に残すための研究を行う分野です。その中で、私が取り組んでいるのが「歯の健康」。歯の状態は人間の体全体の健康につながるということが立証されています。例えば、高齢者の死因として多く見られる誤嚥性肺炎は歯を失い、食べ物をかみ砕けないために誤って飲み込んでしまうことが原因で起こっています。また、歯の健康はコミュニケーション能力にとってもプラスとなり、健康寿命を延ばす一つの要因となっています。このように非常に重要な歯の健康ですが、維持するためのノウハウは経験値に基づいた感覚的な知識に頼りがちです。こういった現状に対して、医療現場から「体系的に学びたい」という要望があったため、本研究に取り組むことを決めました。ベテラン歯科衛生士のテクニックをデータとして蓄積し、初心者に対してそれらを活用した指導ができる技術の開発を目指しています。

FEATURE

シーズの特徴

より小さく、より高性能に。口腔ケアシミュレータに起こすパラダイムシフト

現在特に力を入れているのは、新型の口腔ケアシミュレータの開発です。既存のシミュレータは人の口腔内を模したモデルの全ての歯にセンサを付ける、もしくはセンサ付きの専用歯ブラシの使用が不可欠でした。歯1本1本にセンサを取り付けるため、実際の人間の口のサイズよりかなり大きくなってしまっていました。また、センサが埋め込まれているためパーツ数が増え、故障が多発したことも実用化の障壁に。これらの問題を解決し、誰でもトレーニングしやすくしたのが、私の新型シミュレータです。口腔模型や歯ブラシそれ自体ではなく、模型を置く台座にセンサを取り付けることでデータを収集することを可能にしたのです。歯の模型に力が加わると、その力は模型が載っている台座にも伝わります。その情報を計算で解析し、モニター上に「どの歯に、どれだけの力が、どれくらいの時間、どの方向に」かかっているのかを表示。歯磨きのテクニックをデータとして収集することを可能にしました。また、このセンサを搭載した台座さえあれば、あらゆる口腔モデルが使用できます。子どもの口腔モデルや歯の抜けた口腔モデルなど、様々な歯の状態に応じた磨き方を計測できるようになりました。現在はノイズを除去するアルゴリズムを検証し、さらに高精度なデータ収集ができるよう、改良を重ねています。

VISION

解決したい未来

理想の口腔シミュレータの姿を目指して

このシミュレータが歯科医や介護士の口腔ケアテクニックの向上につながり、ひいては健康寿命の延伸に貢献するのが究極的な目標。そのために、よりリアルで、誰でも使えるモデルにすることが今後の課題です。例えば、現場から上がっているのが舌や頬も再現してほしいという要望。口腔内の要素が増えることで接触点が増加し、計算が複雑化しますがケアを考える際には避けては通れない部分です。不要なノイズを取り除き、正確なデータだけを取り出すことができるアルゴリズムの生成に目下取り組んでいます。結果を表示するインターフェースも重要な要素。コンピュータが無くても使用できるモデルが理想ですね。電源を入れるだけで使えるよう、歯にLEDを埋め込んだり、専用のモニターを実装したりといった方法を模索しています。現場の方々と協力し、フィードバックをいただきながら、医療現場で実際に活用してもらえるよう日々試行錯誤の連続です。

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