山口さんの代表作「鈴木ファイターズ」と「エイジ48」は、2016年から2017年にかけて多くの映画祭で上映されてきた。「第7回伊勢崎映画祭」では「エイジ48」が学生唯一の受賞となった準グランプリを獲得。「尊敬している映画関係者と交流することができ、たくさんの刺激を得ました」。そう語る彼は、この経験を生かしこれから佳境に入る卒業制作に意欲を見せる。

苦悩の末に見出した答え

小学5年の夏休みの自由研究。父に買ってもらったビデオカメラでヒーロードラマを撮影したのが山口さんの初作品。クラスで上映したときの友達の楽しそうな笑顔が、今もなお強く印象に残っている。一番の理解者として応援してくれている両親の協力を得ながら、その後も映像撮影を楽しんだという。

同時に走ることにも興味を持ち始め、中学では練習の成果が結果となって現れる三段跳びに青春をぶつけた。しかし、「強豪選手が集まる高校や大学で、自分が頂点に立つのは難しいだろう。これからの自分が想像できない…」と高校進学時に悩んだと振り返る。

自分を表現するツール

その彼に活力を与えたのは、映像制作だった。高校2年のとき、自ら、企画、脚本、監督、編集を務め、放送部の友人と制作したドラマ作品が創部初となる「NHK杯全国高校放送コンテスト」京都府代表に。二年連続全国大会出場を果たした。また、「京都国際学生映画祭」の高校生招待枠で3年連続出場するなど才能を発揮。周囲に認められる喜びを感じ、さらに映像の世界にのめり込んでいったという。

映像学部へ進学後、山口さんはまた苦悩の時期を過ごすことになる。「自分の色を作品で表現することと、周りに認められる作品とは違う」、焦りと苛立ちで何もかも投げ出したい気持ちになったと振り返る。自問しながらたどり着いた答えは「第一は、自分の色を表現した作品を世に出す」ということ。「ただ、それだけでは終わらず、観客に楽しんでもらえるということも追い続けること」という思いに至った。

素直に楽しめるコメディ作品を追求し続ける



「さまざまな映画祭で上映されたことは自信に繋がりました。でも会場が沸くほど笑いが起きるときもあれば、残念ながら反応が薄いときもある。全ての人に認められるのは容易いことではないとも実感しました。コメディは本当に難しい、だからこそ突き詰めたくなります。将来的な目標としては日本のみならず、国境を越えた笑いで世界中の人々を爆笑させられるような作品を作りたいです」と大きな夢を語った。

「固定概念にとらわれず、楽しさを追求する」この姿勢が彼の作品づくりの原点。今までの苦悩や挫折も糧とし、卒業制作に今までの映像人生の全てを捧げる彼は、ぶれない信念と好奇心を武器に、学生時代の集大成となる作品を目指す。

PROFILE

山口十夢さん

京都両洋高等学校(京都府)卒業。実写制作ゼミに所属し、品田 隆教授に師事する。2016年に制作した「鈴木ファイターズ」は、日本三大学生映画祭の一つである「TOHOシネマズ学生映画祭 ショートフィルム部門」や「夜空と交差する森の映画祭2016」など、全国各地で上映された。高校では3カ月間のニュージーランド留学を経験。現在も国際交流サークルCOSMEDIAに所属し、留学生と交流をしている。

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