「『国際開発ジャーナル』創刊50周年記念小論文コンテスト」において、「ODA体感ツアーによる国際協力」という論文で、審査委員特別賞を受賞した山崎さんと三宅さん。二人は、インフラツーリズム※の研究を行っており、「NRI学生小論文コンテスト2017」においても、「建設前から始めるインフラツーリズム戦略~インフラ総建て替え時代への提言~」という論文で、106本の中から大賞を受賞した。

※優れた土木技術や性能の土木構造物など、インフラ施設を観光資源として活用すること

近江大鳥橋に気づかされたインフラの魅力

二人がインフラツーリズムについて研究を始めたきっかけは、「大学生観光まちづくりコンテスト2017」の「インフラツーリズムステージ」に応募するための、ゼミのグループ研究だった。題材を探していた際、滋賀県の新名神高速道路に架かる近江大鳥橋を訪れ、その魅力にひきつけられたという山崎さん。近江大鳥橋は、大津市、甲賀市、栗東市の間に位置し、日本発祥の独自の構造であるエクストラドーズド工法で建設され、鶴の姿を模したデザインとなっている。3市の観光地同士を繋ぐランドマークとして連携を図ることで経済効果を得られると考え、近江大鳥橋をモデルケースとして選んだという。グループ研究では、橋の構造について学内の専門家に意見を聞いたり、周辺の観光施設で聞き取り調査を行った。調査では、「生活道路としてしかみていなかった」という声が多数で、観光資源としての活用を考えていることを話すと懐疑的な声も聞かれた。しかし、話をするうちに近江大鳥橋の珍しさや価値を認識してもらうことができ、情報を伝えることで、人々の意識を変えることができるのではないかと感じたという。

インフラツーリズムを広めたい

研究を進めるうちに、もっとこの研究を発展させることはできないかと考えた二人。開発ジャーナル社のコンテストを知り、「国際協力-私の提案 インフラ整備」のテーマに対し、世界のインフラにも自分たちの研究を応用してみようと、論文執筆を決めた。ODAの重要性を知ってほしい、地域の経済自立を促したいという思いから、ODAで建設したインフラ施設やその周辺地域を訪れる日本人対象のODAの体感ツアーを考えたという。「NRI学生小論文コンテスト2017」では、インフラの老朽化問題、建替え問題をチャンスと捉え、ツーリズムに適したものを建設することを提案した。ストーリー性やエンターテイメント性、コンセプトの確立、景観の確立を建設前から盛り込むことで、効率的にインフラツーリズムに活用できると考えたのだ。8月末から論文の執筆に取り組み、夏季休暇中は毎日電話で連絡をとりながら議論を重ねた2人。まちづくりコンテストでの発表の準備も並行しながらの執筆は大変で毎日遅くまで続いたという。

受賞を受け、三宅さんは「インフラツーリズムは先行研究が少なく、論文も2人で模索しながら作り上げていきました。賞をいただき、自分たちの方向性は間違っていなかったと思い、嬉しかったです」と喜びをかみしめる。研究を通して目指すのは、「観光客、施設を管理する人や周辺地域の人々に楽しみや経済効果を生み出すようなツーリズム」と話す。一方山崎さんは、「インフラをランドマークにすることで周辺の観光地域の連携を強化し、地方創生の仕組みを作っていきたい」と話す。2人の熱い思いが、インフラツーリズムの可能性を広げてくれることだろう。

PROFILE

山崎優斗さん

石川県立野々市明倫高等学校(石川県)卒業。ディベートと英語を学ぶため、2016年夏からRPDC(RitsumeikanParliamentaryDebateClub)に所属。マレーシアやフィリピンへ短期留学し、2018年2月から2週間、ディベートを学ぶためロンドンへ留学予定。

三宅浩太さん

兵庫県立御影高等学校(兵庫県)卒業。2017年4月からRPDCに所属。高校時代は卓球部で活動。2017年の春に短期留学で訪れた中国に興味を持ち、2018年3月から半年間、中国の大連へ留学予定。

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