「いつか声のプロフェッショナルになりたい、そのために声について学び、研究を続けています」としっかりとした眼差しで話す近藤さん。学部では産業社会学部の音声メディアゼミで刑務所ラジオについて、現在は臨床心理学領域で「声の癒し」に着目し、研究に励んでいる。研究の傍ら、学部時代から地域のイベントやコンサートでの司会に取り組んでいる近藤さんは、ラジオのDJとして活動してきた経験を持ち、常に自分の声と向き合い、学びを深めてきた。

ラジオから始まった夢と研究

ラジオは、両親が好きで、幼い頃から身近な存在だった。声だけで伝わるものがある点が好きで、いつかは声に関る仕事がしたいと考えていたという。アナウンス技術は独学で学び、大学入学後はオーディションを受け、ラジオDJとしてコミュニティFMで音楽番組を担当。司会の仕事もこなした。ラジオや司会の仕事を通して、自分が話していることが誰かの助けになっているのかずっと考えていたため、ラジオと癒しについて研究したいと思ったという。4回生の時、新聞記事で興味を持った、富山刑務所で受刑者向けラジオ番組のDJをしている方に連絡を取った。それから、月に1度放送される刑務所ラジオの生放送現場を見学するため富山に足を運び、卒業論文では、「ラジオは人を『癒す』のか」をテーマに刑務所ラジオの設備や制度、役割についてまとめた。

音声メディアから心理学の道へ

研究を進めるうち、社会学の観点では解明できない人の内面的部分を心理学で学びたいと、分野の異なる臨床心理学の道に進むことを決意した。現在は、富山での刑務所ラジオでの調査を続けながら、修士論文で話し手の心の動きや感情などについて研究を進めている。修士論文と刑務所ラジオの研究とは直接的に関係ないのではないか、といわれることもあるという。しかし、近藤さんは、「私の中では、2つの研究も声の仕事も全て、声のプロフェッショナルになるという1本の軸につながっている」と話す。

さまざまな経験や研究を通して、言葉の選び方が変わったり、ただ原稿を読むだけでなく自分の言葉で話せるようになり、ひとつの言葉でもさまざまな本で調べるなど、一言がどれだけ人に影響を与えるのかを考えるようになった。また、インタビューする上でも自分がラジオや司会の仕事をしていたため、話し手のことを理解したり、話もスムーズに進めることができるようになったという。

研究をする上で大切にしていることは、本を読み知識を固めるだけでなく、先入観を持たずにまずは研究に関係する人に会うこと、そして周囲の人のおかげで研究できていることに感謝すること。感謝を相手に伝えることで、研究が嫌になったりしても中途半端なところでは終われない、とモチベーションにもつながっているという。後期課程への進学も視野にいれており、「声の研究と刑務所ラジオに関する研究を1本の論文としてまとめたいです。そして、生涯“声”について突き詰めていきたいです」と今後の夢を語った。

PROFILE

近藤優佳さん

仁愛女子高等学校(福井県)卒業。産業社会学部では、坂田謙司教授のゼミにて学ぶ。現在は、森岡正芳教授の臨床心理ゼミ所属。中学では放送部に所属し、高校では演劇部で脚本を担当。趣味は散歩や寺社仏閣巡り。

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