2018年4月から、特定非営利活動法人国際ボランティア学生協会(以下、IVUSA)の学生約4,000人の代表を務めている八巻さん。6月の大阪府北部地震と7月の西日本豪雨では、災害救援のため、自らが先頭に立ち現場に足を運び続けている。

大阪府茨木市と高槻市での災害救援では、お宅訪問などをして復旧作業を行った。屋内は、家財の運び出しやずれ直し、部屋の片付け、廃材の運搬などを行い、屋外は、屋根の瓦が落ちて雨漏りしているなどのニーズについて、他のボランティアの方や社会福祉協議会の方と協力しながら対応した。岡山県倉敷市真備町では、床上浸水の被害が深刻で、7月に八巻さんたちが災害救援にむかった時は人手が足りておらず、溜まった泥の撤去作業が進んでいなかった。「あと5人、ボランティア学生を連れて来られていたら、もう一軒のニーズを解決できたのにと、とても悔しい気持ちになりました」。多くの時間と人手を要する復旧作業のゆえ、自分たちができることに限界があることに対し悔しさを滲ませる。

目的を常に明確化させる

炎天下のなか体力を要する作業に疲れ、余裕がなくなり自己本位になる人も多いそうだが、八巻さんは「すべては現場のために」と思っているため、辛いと思うことが一切ないという。また、リーダーとして現場に入っている以上、冷静に、責任感を持って災害救援に取り組むことを心に決めており、一緒に取り組むメンバーには現場のことを第一に、「なぜ自分たちの力が必要なのかを考えてもらいたい」と伝えているそうだ。たまに意見が食い違い、言い争いになることもあるようだが、「本音でぶつかったあとは大体冷静になるので、目的を見失わずに済みます」と語る。

それぞれの色を活かし、仲間を輝かせる

昨年は、琵琶湖に増殖を続け水質や漁業などに影響を与える特定外来生物(水草)を手で引き抜いて乾燥し焼却する「琵琶湖オオバナミズキンバイ除去活動」を行った。そこで八巻さんは隊長を務め、ボランティアに参加する学生それぞれの個性を尊重しながら得意分野を活かせるよう工夫した。「ボランティア活動はチームワークで、仲間の力を最大限発揮させることが一番大事だと思っています。この活動の時は、隊の中にはとにかく明るく元気な班長、班員の意見を聞き現場の作戦を考えられる班長など、色んな個性を持つ人がいました。皆がその個性を認め合い、自分の役割を分かった上で活動に取り組んだことで強い信頼感が生まれ、活動にも勢いが増し、好循環を生むことができたと思います」と当時のことを振り返る。この除去活動は今年9月にも同様に行う予定で、ボランティア学生を2000人集めることが目標だ。「ボランティアを通して得る感動、達成感を味わいながら、仲間とともに学生の持つ力を最大限に発揮したいです」と力強く語った。

PROFILE

八巻誉人さん

宮城県仙台第三高等学校卒業。中学3年生だった2011年に東日本大震災を経験し、ボランティアの人たちに勇気付けられたことがきっかけにボランティア活動を始め、大学入学前には、東南アジアの貧困地域を1人で回った経験をもつ。谷徹教授のゼミでTPOに合わせて変化する自分の姿はどれが本来の姿なのかを哲学目線で研究し、「人のもつ顔」というテーマで卒業論文を制作中。

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