実現した本の出版

スピーカーの製作や改造などに取り組む音響工学研究会に所属する左右田さんが、2018年9月、学外の人との共著、「自作スピーカーエンクロージャー設計法 マスターブック」を自費出版した。「自分の本が店頭に並んでいるのを見て、『いつかスピーカー製作の基本的な技術をまとめた本をだしたい』という1回生の頃からの夢の実現を実感しました」と、笑顔で語ってくれた。

専門学校で学んだ知識と学部での学びを生かして

高校時代、軽音部に所属していた頃から、装置の改造や機械を扱うことに興味を持っていた左右田さん。その後、専門学校で2年間ギター製作について学び、アンプやエレキギターなどの電子機器の修理の仕事に就いていた。しかし、電子機器の扱いは専門学校で学んだ知識だけでは足りず、「もっと専門的に学びたい」と大学進学を決意し、入学後は音響工学研究会に入部した。

板を組み合わせる順序によっても精度が変わってしまうほど、木工の技術はスピーカーを作る上で欠かせないもの。各加工方法の難易度を把握することも、設計を考える上で重要だと話す。左右田さんは、専門学校で学んだ知識や木工の技術を部員に広めた。それは、音響光学研究会にとって新たな契機となり、“木工に強い立命館”と他大学などからいわれるようになった。

左右田さんは、スピーカー製作での一番のこだわりは「見た目」と言い切る。「どんなに音がよくても見た目が気に入ったものでなければ、置いておくのが嫌になります。生活の一部になじむよう、自分の好みのデザインにできるのは、自作スピーカーならではです」と話す。しかし設計の段階で完成までの手順など木工や電気回路など複合的に考えて製作しなければ、好きなようにデザインしたスピーカーを作ることは難しい。また、大きさと形状によって音の良し悪しが決まってしまうため、デザインだけを追究しては理想とする音をだせないこともある。デザインと性能を両立させることに日々挑戦中だという。

舞い込んできたチャンス

理科サークルフェスタ※などを通じて知り合った学外の人から、2017年の春、スピーカーの本に関する技術相談を受け、夏にはその相談を受けた本の校正と新しい本の執筆依頼が舞い込んだ。いつか本を書きたいと思っていたものの、出版に関するノウハウがなかったため、「今しかできないチャンスだと思った」と当時を振り返る。左右田さんは主に、スピーカーの構造や原理、製作方法の部分を担当。技術的な内容であるため、あいまいなことは書けない、としっかり裏づけをとった。電気回路の面では、大学での学びを生かすことができたという。執筆期間は約8カ月にも及んだ。その後、2人の著者と全体の校正を繰り返し、識者の校正を経てようやく本ができあがった。

※12月に各大学の学術系団体やサークルが集まり、開催される活動成果の発表会

「スピーカーとアンプは納得いくものが作れたので、今はDAコンバーターで納得のいくものを作りたい」と今後の製作への意欲をみせる。「自作スピーカーの面白い点は、自分の好きな音を追究し、自由に作れること。斬新な発想で周りを驚かせるような面白いスピーカーを作っていってほしいです」と後輩への思いを語る左右田さん。彼が伝えてきた、製作技術やスピーカーへの思いはこれからも後輩に引き継がれていくだろう。

PROFILE

左右田 航平さん

大阪創都学園キャットミュージックカレッジ専門学校(大阪府)卒業。荒木努教授と毛利真一郎助教の光電子物性デバイス研究室に所属し、「CVD法を用いたグラフェンの成長」について研究を進めている。趣味は、料理とロードバイクで琵琶湖や淡路島を1周することもある。

最近の記事