「Deep Learning※1を用いた画像生成AIの建築都市デザイン分野への適用可能性」をテーマにジェネレーティブデザインAI※2の研究に取り組んでいる大野さん。「人間には、絶対思いつかないようなデザインをAIでは作り出せる、それが面白いところです」と話す。対立的生成ネットワーク(GAN)技術※3を用い、AIにある建築家の作品の教師画像を学習させることにより、その建築家の作品の特徴を持った画像を自動で生成してくれるもので、建築分野において、先端的な研究である。

※1 機械が自動的にデータから特徴を抽出してくれるディープニューラルネットワークを用いた機会学習手法
※2 人間とコンピューターが共同で作り出すデザインの制作手法。コンピューターが基本となるデザインをもとに、さまざまなデザインを生成する。
※3 生成モデルの一種で生成器と判定器が、対立的な関係の中で画像の生成精度を向上させていく手法

もともと絵を描くことが好きで、建築都市デザイン学科に入学した大野さん。しかし、学ぶうちに建築デザインの難しさから、苦手意識を抱くようになり、「自分は建築に向いていないのでは」と建築への興味を持つことができなくなっていったという。そんな大野さんが再び建築と向き合うことになったきっかけが、現在所属している建築情報研究室での研究だった。「Deep Learningを建築の分野にも応用できるのでは」という研究室の山田悟史講師の話を聞き、GANは、建築分野では普及しておらず、「誰も取り組んでいない分野に挑戦してみるのも面白そう」と興味を持ったという。

そして、大野さんの研究は、プログラミングを学ぶところから始まった。プログラミングの知識は全くなかったため、教科書やWEBを使って独学で学んだ。研究を進める中、「建築学科なのに、なぜプログラミングをしているのか」といわれることもあり、「プログラミングの初心者の自分が本当にDeep Learningを建築分野で応用できるのか」と不安な気持ちになったこともあった。しかし、少しずつ、形になるにつれ、不安も薄らいでいったという。また、建築の知識がないとアイデアが湧いてこないため、これまで以上に建築を積極的に学ぶようになり、その面白さに気づいたと話す。

画像認識は、比較的容易にプログラムを作れるが、ジェネレーターできれいな画像を生成するための細かい数値の調整がとても難しかったという。大野さんは、実用化できるよう解像度の調整などを行い、かなり精度をあげられたという。

2018年12月には、「日本建築学会情報システム技術委員会第41回情報システム・利用・技術シンポジウム2018」にて、発表を行った。大野さんの研究は、すでにWEBニュースなどでも取り上げられており、それをきっかけにシンポジウムでの大野さんの発表を聞きにきてくれた他大学の学生がおり、とても嬉しかったという。WEBニュースなどの反響は大きく、SNSなどでは肯定的な意見もある一方、批判的な意見もあったが、大野さんは、「デザインの補助ツールになれば、多様性がうまれるということを伝えていきたいので、四苦八苦しながらも研究を進めています」と笑顔をみせた。

研究に打ち込むにつれ、その面白さに魅了されていった大野さん。今後は、大学院でさらに研究を進めていく予定だ。「研究が楽しくて、ワクワクしています。勉強しているというより、趣味のようです」と話し、「面白いと思える多様な建築デザインを作り出す補助ツールとして、アプリやウェブサービスの運用が目標です。そして、他大学の学生や自分のように建築デザインに苦手意識があった人にも使ってもらいたい」と今後の目標を語った。

PROFILE

大野 耕太郎さん

函館ラ・サール高等学校(北海道)卒業。大学では3年間写真部に所属。休日には路地裏や人情味のある風景の写真を撮りに出かける。文字のフォントが好きで、趣味は街中の看板などの面白いフォントを散策する、のらもじ集め。

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