2015年、戦後70年を迎えた日本。「若い世代が“戦争”を考え、議論する場をつくりたい。将来、私たち若者がどのような行動をすべきかを考えたい」と思案した原田さんは、国際社会で活躍する人材養成プログラム「オナーズ・プログラム」の仲間を誘い、自主ゼミ団体「若者世代の『戦後70年談話』研究会」を立ち上げた。一方、ブリティッシュコロンビア大学への留学を終えた山口さんは他国の学生と政治について議論するためには、日本の歴史の正しい知識が必要であると考えメンバーに加わった。

戦争の被害者と加害者の立場から歴史をみる

研究会の活動目標は、戦争を考える議論の場の創出と談話の作成だ。談話の作成に向けて、文献やネット記事の談話を参考に、研究や議論を進めている。昨年の夏季休暇には“日本の植民地であったインドネシアが、今なぜ親日国家として日本との関係を築いているのか”という疑問を探るため、現地でフィールドワークを行った。カリバタ英雄墓地や独立記念塔(モナス)など歴史関連施設の視察や、人々に「インドネシアにおける戦後の歴史教育」や「日本に対するイメージ」、「日尼関係への期待」について聞き取り調査を実施した。

「太平洋戦争において日本国内では被害者としての日本が強くフォーカスされていますが、インドネシアを占領していた日本は加害者でもあります。だからこそ加害者側からみた歴史も学ぼう、学ぶことが重要だと思いました。」と山口さんは話す。また、同じような質問を日本人の学生に聞いても「分からない」「答えられない」と回答する人が多いなか、自分の意見で答えるインドネシアの人々に驚いた。教育の違いがあっても日本人には「歴史を考える」機会や経験が足りないことが問題であると認識したという。

若者が議論を深めていく

帰国後、研究会は戦争を考える新たな場として、平和宣言の策定に取り組む立命館高校の生徒たちと共に合同企画を実施した。「戦前・戦後の日本の教育制度」や「平和とは何か」をテーマに活発な意見を交し、原田さんらは生徒たちが平和についてしっかり考えている印象を受けたという。「学校で海外研修などの機会があるからこそ、興味や関心を持っていると思いました。この活動の必要性を改めて感じました」と話してくれた。

メンバーの意見の統制やモチベーションの維持に苦労はあったが、仲間の存在が原田さんの意識を変えた。「今までは一人で突っ走るタイプ。だけど一人の力と集団の力では、やれることが違うことに気づかされました。みんなで進めていくための手段や行動について考えることができました」

活動を通して学ぶことの大切さを再認識した山口さんは、異文化理解についても気づきを得た。「”FACE to FACE“の対話の重要性を実感しました。受け取る印象が異なりますし、相手の考えをより深く理解できます」

取り組みを通して、考える場の提供だけでなく、逆に様々な気づきを得た原田さんと山口さん。大学内の留学生の調査を加え、自分たちの談話を執筆中だ。今後も研究を進め、高大連携企画の実施など、若者の輪を広げていく予定だ。

PROFILE

原田悠史さん

宇部フロンティア大学付属香川高等学校(山口県)卒業。2014年4月~国際社会で活躍する人材養成特別プログラム「オナーズ・プログラム」を受講。2015年度オナーズ・プログラム代表。また国内の戦争関連の施設を巡るなど学びを深めてきた。2015年4月~徳川信治ゼミ(国際法ゼミ)に所属。

山口雅矢さん

啓明学園高等学校(東京都)卒業。2014年8月~2015年4月まで立命館・ブリティッシュコロンビア大学(UBC)ジョイントプログラムに参加。2015年4月~国際社会で活躍する人材養成特別プログラム「オナーズ・プログラム」を受講。

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