2019年3月、今年も約8000人の学生が立命館大学を卒業した。その卒業生たちに贈られる校友会入会記念品(以下、卒業記念品)「Peer Sticks」の製作に取り組んだ臼本さんら経営学部のプロジェクトメンバーたち。今回、初めて学生が卒業記念品製作に企画から携わり、約1年半の製作期間を経て、卒業生たちに贈られた。アルバムのようなボックスに入っているのは、組み合わせが自由な4本の木製のスティック。スマホスタンドやコースター、鍋敷、写真立てというように、歳を重ねるごとに変化していく生活スタイルに合わせて、組み替えて使うことができる。

“立命館らしさ”を表すものを

コンセプトは『思い出の引き出し』。「卒業してからも立命館生だったことを思い出してほしい。そして、卒業記念品を使って、新しい思い出を積み重ねてほしい」という思いがこめられている。コンセプトは、すぐに決まったものの、その思いをこめた品物を何にするか、なかなか決まらなかったという。意見を出し合う中で、むやみに否定はせず、多様な意見を出し合うことを心がけ、「ずっと使ってもらえるもの、生活に寄り添うものであることを意識しました」と振り返る。立命館らしさを表すため、衣笠キャンパス、びわこ・くさつキャンパス、大阪いばらきキャンパスの図書館に設置されている、ラーニングコモンズ「ぴあら」※の要素を盛りこむことに。「さまざまな個性を持った人たちがつながり、新たなアイデアが創造され、仲間とともに成長していく」それこそ、立命館らしさだと気づき、パーツをつなぎ合わせて、多彩なカタチを創造し、人生とともに成長するような卒業記念品にした。

※図書館内にある、ピア・ラーニングルーム(呼称:ぴあら)は、仲間(ぴあ:Peer)と共に創造的な学びのスタイルを身に付けることができる学びの空間として位置づけられ、可動式のテーブルやいすで、人数や学びのスタイルに合わせて、使用することができる

贈り物だからこそ、こだわりたい

4本のスティックは多様性を表すため、サクラ、ナラ、ケヤキ、ヒノキの異なる4種類の木を使用し、“卒業”の意味をこめてサクラのスティックにだけ「RITSUMEIKAN」のロゴが印字されている。パッケージは、卒業アルバムのようなデザインで立命館のカラーであるエンジ色の補色(反対色)を使用することで、立命館と卒業生記念品の双方を引き立たせている。箱の内側には、メッセージを書きこめるよう、寄せ書きスペースも設けた。そして、臼本さんたちが大切にしたのは、サプライズ感だ。「贈り物だからこそ、みんなの驚きと喜びを見たかったんです」そのため、事前にどのような卒業記念品がいいかなど、調査は行わず、「自分たちがどんなものを贈りたいか」にこだわったという。そして、大学の担当部署や製作会社との話し合いを重ね、「Peer Sticks」が完成した。

プロジェクトと部活動の両立に追われる日々

部活動とプロジェクトの両立で多忙な毎日だったとその1年半を振り返る。体育会少林寺拳法部に所属しており、練習は衣笠とびわこ・くさつキャンパスで行われるため、大阪いばらきキャンパスでの授業が終わると、他キャンパスに練習に通っていた。後輩たちを教える立場で、部活動も抜けるわけにはいかなかったという。練習後の深夜や、試合会場で試合直前まで電話で話し合いをすることもあったほどだった。

卒業記念品製作を振り返り、「全てに疑問をもつことが大事なのだと痛感しました。自分たちが、当たり前だと決めつけていたことは、当たり前ではなく、アイデアを出す邪魔をしていたことに気づきました」。話し合いの場では、4人の意見が異なることも多く、まとめるのが難しかったという。「それぞれの意見を尊重しつつ、理由をもって整理していかなければならない。その力も身につけられました」と笑顔を見せる。彼女たちの思いがこもった記念品。 多くの学生にとって、生活の中に溶け込み、ふとしたときに立命館での学生生活思い出す、そんな贈り物になったのではないだろうか。

PROFILE

臼本 菜奈恵さん

倉敷商業高等学校(岡山県)卒業。体育会少林寺拳法部に所属。八重樫文教授のゼミで「空き家を減らすためには」をテーマに研究。料理が趣味で、最近では、パン作りにはまっている。

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