美しくライトアップされた桜をひと目観ようと多くの観光客が集まる「二条城桜まつり2019」でNAKED Inc.とコラボレーションし、二条城の庭園の一つである、清流園のスペシャルライトアップの企画・制作に携わった伊藤さんと西村さん。2人は、インタラクティブメディア※を専門とする映像学部、望月茂徳准教授のゼミに所属しており、8人の学生有志が今回の企画に携わった。スマートフォンをかざしたりベンチに座ったりすることで照明や演出が変わるといった体験型の演出で、桜まつりを盛り上げた。

※双方向型メディア

経験したことのない大型コンテンツへの挑戦

「『二条城桜まつり』は、学生だけでは経験することのできない大型コンテンツ。技術的にスキルアップしたい」と参加を決めた西村さん。伊藤さんは、「個人制作とは異なり、プロの制作プロセスを学べることや多くの人に見てもらえる機会」に興味をもち、参加したという。多くの来場者がいるため、1対1のインタラクションが難しく、どのようなインタラクションができるかを考えながら、「桜の妖精が春の訪れを知らせにくる」というコンセプトを元にストーリーづけを行った。幅広い年齢の人に楽しんでもらえるよう、変化をわかりやすくするために音をつけたり、光の色の切り替わりにも工夫を凝らしたという。西村さんは、技術担当として照明や音響、人の動きを検知するセンサーを制御するプログラムを制作。伊藤さんも技術担当として西村さんのサポートをしながら、センサーの基盤の部材選定などに取り組んだ。

個人制作とは規模が全く異なり、考え方も違ってくるという。「センサーは非常に繊細なため、屋外での設置では、砂埃や湿度で配線がうまくいかなかったり、防水対策が必要だったりと、学内では経験したことがなく、面白かったです」と伊藤さんは話す。西村さんは、トラブルを防止するためのプログラムを組むなど、個人制作では考えたことのなかった、長期的な視点を持ち、制作に臨んだという。それは、これまでになく細かい作業であり、非常に大変だったとその苦労を振り返る。

伊藤さんは、「学生である自分たちの提案が、大型コンテンツで通用するのか、本当に面白いのか」という不安があったという。しかし、現場で実際に照らしてみると、その美しさにハッとさせられるほどで、無事に完成したことに安心したそう。西村さんは、「技術的な面でも成長できましたし、プロフェッショルへの憧れが強くなりました」と笑顔をみせる。

経験を糧に新たな挑戦へ

これからの目標を尋ねると、伊藤さんは「技術を持つ人たちを組み合わせ、その力を2倍、3倍にして作品に発揮していけるよう、プロデューサーやディレクターのような仕事をしていきたいです」と話した。「勉強しても勉強してもゴールが見えないもので、知識を得ていくことが面白いんです」とプログラミングの面白さを語る西村さんは、プログラマーを目指す。「映像学部の自分たちの価値は何なのか」自身に問いかけながら、より貪欲に技術を学んでいくという。2人にとって大きな学びとなった桜まつりは、技術だけでなく、制作への意欲をさらに高める貴重な経験となった。

PROFILE

伊藤史穂さん

神戸高等学校(兵庫県)卒業。4歳から高校1年までジャズダンスを中心にバラードやヒップホップなどさまざまなジャンルのダンスに注力。卒業制作では、歩く動作に着目し、日常生活での身近な動作に新しい意義を見出し、幸せな気持ちになれるような作品を構想中。

西村魁峰さん

熱田高等学校(愛知県)卒業。1.2回生では、実写映像制作映像サークルNTKSに所属。DJサークルL@BELにも所属し、3回生では会長を務めた。趣味は、バイク。卒業制作では、映像と音楽を用い、体験者が参加して完成するような作品を予定している。

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