2019年8月に衣笠キャンパスで、ゲーム研究に関する国際学会にあわせ、「Ritsumeikan Game Week特別展」が開催された。ゲームの過去、現在、そして未来を感じられる3つの展示のうち、毛利さんは「テレビゲームとその時代展 昭和編」を担当した。文学部英米文学専攻から文学研究科文化情報学専修で「ビデオゲームのアーカイブ」について研究する道を選んだ彼女の研究への思いを聞いた。

過去を振り返ることの面白さ

小さい頃からゲームが好きで、最新のゲームより自分が生まれる前のゲームが好きだったという毛利さん。1回生の頃、ゲーム研究センターでソフトウェアの目録整理などのアルバイトを経験したことで、「こんな世界もあるのか」と視野が広がったという。もともと、歴史や学芸員に関心を持っていたこともあり、ゲームの歴史や保存方法を研究したいと考えるようになった。そして、4回生の時に、東京の未来科学館で開催されていた企画展「GAME ON」の特別フォーラム「どう残すか ~技術と体験のアーカイブ」で、映像学部の細井浩一教授の講演を聞き、自分が研究したいことが大学院でできるのではないかと思い、進学を決めたという。

初めての企画展示への挑戦

2019年2月、ゲーム研究センターの上村雅之センター長から「Ritsumeikan Game Week特別展」について話を聞き、初めて本格的な企画展示に挑戦することになった。「テレビゲームが日本に現れ普及した 1986 年までを、テレビに映し出されたアニメ、そしておもちゃの関係を通じて考える」をコンセプトに企画内容を組み立てた。おもちゃ、アニメ、ゲームについて調査やインタビューを行い、どのようにパネルにして表現するか、試行錯誤を繰り返した。国際学会のため、日本独特のアニメとおもちゃなどの関係性や時代背景を限られたスペースで、海外の人にいかに伝えるかが難しかったという。膨大な情報を簡潔にパネルにまとめ、文献や資料からアニメとおもちゃのつながりを表すものを突き止め、2つのおもちゃを厳選して展示した。展示期間中は、来場者への説明や質疑応答に対応した。「ゲームの展示会は、日本で開催されることもあるが、ゲームの起源や時代背景にまで焦点を当てた展示はほとんどないため、今回挑戦できたことや、海外の方に少しでも理解してもらえたことはよかった。難しかったが、チャレンジしたかいがあった」と手ごたえを感じた。「テーマに沿った展示物を集め、調査を進めると、発見の連続だった。考えを突き詰めていくことで、凝縮されていく感覚が面白い。研究論文では、文章だけで表現するが、展示では物を使って表現できることの面白さを感じることもできた」と今回の企画展示を振り返った。

飽くなき探求心

現在、ゲーム研究センターのリサーチアシスタントとして活動し、研究の傍ら、ゲームを保存するための適切な環境を調べたり、チラシ等の紙資料の目録作業に取り組んでいる。劣化するプラスチック製のゲームやポスターの保存について考える上で必要な知識は幅広く、日々勉強しながら実務と研究を進めている。常に「なぜ?」と問い続ける性格だという毛利さんは、「問いを繰り返すことで、答えがでるのに時間がかかるが、考えを巡らせ、全く関係ないようなものが答えにつながっていく感覚が面白い」と目を輝かせる。ゲームについて生き生きと語る彼女の様子から、ゲームへの熱い思いや強い探求心を感じた。

PROFILE

毛利仁美さん

沼津市立沼津高等学校卒業。学部時代は、3年間体育会スケート部フィギュア部門に所属し、2級を取得。趣味は文楽(人形浄瑠璃)鑑賞。人間が動かす人形が生きているように見える面白さに魅了され、金閣寺が舞台の『祇園祭礼信仰記』がお気に入り。

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