立命館大学体育会ラグビー部の主務を務める奥さんは、創部92年目にして、初の女性主務としてチーム118人を支えている。主務に就任したのは3回生の冬。「関西優勝」というチームの目標を達成するため、最後までやりきろうと覚悟を決め、「初の女性主務として後輩の女性マネージャーのためにも、何か残せるような人になりたい」と強い思いを胸に主務に就任した。

4月に新型コロナウイルス感染症の影響拡大に伴い、緊急事態宣言が発出されてからは、ラグビー部も活動自粛となった。自粛期間中は、4回生のリーダーを中心とするポジションごとのグループにわかれ、オンラインでミーティングやトレーニングを行っており、奥さんは主務として各リーダーや選手間での情報共有などに尽力した。5月になると、例年秋に開催されるリーグ戦の開催も不透明な状況となり、全国的に大会の中止などが相次いで決まる中、「関西優勝」という目標に対し、奥さんも諦めの気持ちが大きくなっていったという。しかし、選手の「まだ開催される可能性もあるから、諦めないでいよう」という言葉に「この気持ちのままではだめだ、と気づかされました」と振り返る。先が見えない状況の中、選手の諦めない姿に刺激を受け、「今、私にできることをやろう」と、5月中旬に7つの体育会重点強化クラブに呼びかけ、主将からのメッセージ動画「立命館大学からスポーツを盛り上げよう」を作成した。動画は、各クラブの主将が自粛期間中の取り組みや意気込みを語り、ボールを繋いでいく内容で各クラブの主務と議論を重ねながら撮影を進め、後輩の協力を得て編集を行った。

6月初旬に動画が完成し、SNS等で公開すると、保護者や関西ラグビーフットボール協会から連絡をもらい、反響の大きさを実感しているという。「やっと形になったという思いと、多くの反響に、やりがいを感じました」と笑顔を見せた。

そして、ラグビー部は6月22日から感染症対策を行った上で、練習を再開。奥さんら幹部メンバーで感染症対策のガイドラインを作成した。グループのリーダーに選手の声を吸い上げてもらい、選手の不安や意見も取り入れたガイドラインとなっている。約2カ月半ぶりに練習する選手の姿を見て、「先がみえない中でも厳しい練習に取り組み、追い込む選手たちは、すごいと思います。選手の頑張りを広報することで、他のラグビーチームにも刺激を与えられるようなことをしていきたいです」と話す。

今後について、「主務として選手が試合で勝って喜ぶ姿を見たいです。そして、多くの人に支えられてラグビー部があることを実感しているので、その恩返しをしたいです。それをかなえられるようにチーム運営や広報などできることをやっていきます」と、力強く語る。まだ先が見通せない中、笑顔で語る彼女に不安の色はない。まっすぐ前を向く彼女のまなざしに、選手との絆や諦めない心の強さを強く感じた。

‟頑張れ、立命スポーツ!”

PROFILE

奥 英理乃さん

立命館宇治高等学校(京都府)卒業。高校からラグビー部にマネージャーとして所属。全国のレベルでラグビーに携わりたいと大学でもラグビー部に入部。大学3回生時には、副務を務める。卒業研究では「人工知能による日本の未来」について研究。趣味は映画鑑賞。

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