2020年5月、立命館大学、順天堂大学および東京藝術大学が共同で開発したWEBアプリ「Biosignal Art(バイオシグナルアート)」がリリースされた。トレーニングの動作を採点し、音楽を生成するアプリで、コロナ禍で運動不足の人々のため、研究成果を社会に還元すべく開発されたものだ。開発に関わった家門さんに話を聞いた。

家門さんが所属する岡田志麻准教授の研究室では、腕や足を動かしたときに発せられる筋電図を計測し、音楽に変換させるバイタルデータアート化システムを研究している。4月下旬、岡田准教授から「コロナ禍で運動不足になっている人が多いため、自宅で運動できるアプリなどの形でこれまでの研究成果を還元できないか」という相談を受けた。これまでの研究はデバイス開発がメインで、アプリ開発は初めてだったが、ものづくりが好きな家門さんは、「アプリ開発も面白そうだ」と思ったという。

岡田研究室の学生ら7人が開発に関わり、家門さんはリーダーを任された。1週間程度でコンセプトを固めたうえで、短期間で開発が可能で、多くの人に利用してもらえるWEBアプリという形で開発を進めた。完成したアプリは、10回のスクワットをWEBカメラで撮影することで、人の肘や肩、腰などの関節の位置を推定して正しいスクワットができているかを採点し、その点数によって、音楽が流れる。点数が高ければ高いほど、ノイズのないきれいな音源が再生される仕組みだ。

開発にあたって、メンバーは、それぞれ自宅で作業をしなければならないため、担当を割り振って作業を進めた。週に1度のWEBミーティングで進捗状況や今後の予定を共有したが、対面で開発を進めるよりも大変だったという。また、今回使用したプログラミング言語は、メンバー全員が使用したことがなかったため、勉強しながら実装していくのが大変だったと振り返る。

5月にアプリをリリースした後もアップデートを継続し、7月には、トレーニング種目にショルダープレスを追加。スクワットとショルダープレスで全身の運動を採点できるようになった。今後も種目の追加を検討しており、ダンスなどにも適用できるのではないかと可能性を探っているという。また、年齢や運動習慣などユーザーに合わせた採点方法や、ユーザー登録機能を設け、トレーニングへの継続につなげてもらうことも考えているという。「アプリ開発は初めてでしたが、思っていた以上に大変でリリース作業も苦労しました。しかし、新聞などで取り上げられたことで、アクセス数も伸び、多くの人に利用してもらえて嬉しかったです」と語る。コロナ禍で厳しい状況の中、アプリ開発という新たな挑戦を経て、これからも研究に邁進していく。

PROFILE

家門優光さん

清風高等学校(大阪府)卒業。学部生の頃は、飛行機研究会に所属。岡田志麻准教授の研究室で、生体工学について研究。「表面電極を用いた神経活動の計測」について研究を進める傍ら、バイタルデータアート化システムの研究にも携わる。AIOL※1、工作センター※2でものづくりを支援するアルバイトにも取り組む。



※1 機械工作や電子工作に必要となる各種工作機器、工具、部材、測定機器やCADシステムなどが配備され、IoT、AIやソフトウェアなどが整備されたものづくりの拠点となる施設で学生や院生は基本的に無償で利用することができる

※2 高精度な機械加工が可能な施設で機械工作実習の実施や工作機械等の設備を有効利用できるよう学生・院生および教員に開放している

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