「コロナ禍の影響によりステイホームで自炊する人の割合が増え、食への関心が高まっている一方で、学校給食やレストラン、地域農家では、普段使用されている食材が『余剰食材』として行き場をなくし大量に破棄されてしまう“フードロス”が大きな問題になっています」そう話すのは、食に関する社会問題と向き合い活動する学生団体「Beyond Kitchen運営委員会」代表の三浦凜さん。この課題解決に向けて4つの学生団体(※1)と共同で、余剰食材を活用し自宅で参加できるオンラインコンテスト「Beyond Kitchen CONTEST」を開催した。三浦さんと同団体副代表の佐藤彩香さんは、この企画に込めた思いを語ってくれた。

※1 SDGsの社会課題に向けて活動する「立命館大学Sustainable Week実行委員会」、伊根町で活動する「Orang Earth」、甲賀市で活動する「TaBiwa+R」「とりあえずi(い)甲賀プロジェクト」

余剰食材を大活用!ステイホームで参加するコンテスト

「フードロスにより、価値あるものが無駄にされています。この企画を通して、改めてその価値と向き合い、生かしていきたい」と話す佐藤さん。「コンテストを通してアイディアレシピを集め『余剰食材や自宅にある食材でこんなに面白い料理ができる』という事例を発信できれば、さまざまな人の食卓がより明るくなるはずです」そう力強く語る。

コンテストは「地域部門」と「フードロス部門」に分かれ、立命館大学と立命館アジア太平洋大学の学生のうち応募者60名が参加。運営委員会より応募者の自宅に届いた食材をメインにアイディアレシピを考案する。一般Web投票にて選ばれたファイナリスト20人が7月5日のオンラインコンテストでプレゼンテーションを行った。

地域部門では、甲賀市と伊根町から地域ならではの食材を用意した。それらは各地域で長く活動する学生団体が繋がりのある農家やレストランから余剰食材を買い取ったもの。フードロス部門では、滋賀県でフードドライブ活動(※2)を行う「フードバンクびわ湖」から食材を無償提供してもらうなど、彼らの取り組みに共感し、協力してくれた農家や多くの企業により多種多様な食材が集まった。さらに信楽焼や地域米、丸々一匹の立派な鯛といった驚くほど豪華な景品まで揃ったという。

さまざまな場所から余剰食材を集めたために、応募者には一人ひとり内容の違った食材が届く仕組みとなった。集まった多彩なレシピは、どれも見栄えや栄養価などが熟考されており、一般Web投票では8000票以上も集まるほどの注目を集めた。最優秀賞、オーディエンス賞、ユニーク賞を独占したのは、フードロス部門のレシピ「甘じょっぱい夏バテぶっとばしプレート」。届けられた食材はイワシの缶詰、パンの缶詰、お茶漬けの素という組み合わせであったが、こだわり抜いたこのレシピには運営メンバーや審査員一同、圧倒されたという。コンテストを終え、三浦さんは「どのレシピからも、それぞれの地域や食材に対する理解が伝わってきました。同時に、コンテストを通して食に関する課題意識を参加者のなかにも深めることができたと思います」と笑顔をみせた。

※2 家庭や企業から出る余剰食材を引き取り、生活困窮者や子ども食堂など食べ物を必要としている人や施設に提供する活動

楽しく面白く、“食”の社会問題と向き合う

5月に立ち上げたBeyond Kitchen運営委員会。今後は生協のフードロス削減活動を行うとともに、農業や食品に携わる人々の声を記事にする取り組みや、次回のコンテストに向けて準備を進めている。「私たち団体が目指すのは、食への課題意識に対し“楽しく、面白く”目を向けるきっかけを作ること。参加者が楽しみながら企画に携わるうちに、いつの間にか食の社会問題に対し行動を起こせていたような、そういった取り組みを目指していきます」と強い意志をみせる。持続可能な社会の実現に向けて、彼らの挑戦は始まったばかりだ。

PROFILE

三浦 凜さん

成城学園中学校高等学校(東京都)出身。Beyond Kitchen運営委員会代表。趣味は読書で、休日は本屋巡りを楽しむ。コンテストでは、主に全体運営や企業との調整を担当。フードロスだけではなく、農作物や食品に対する風評被害についても問題提起しており、食品に対する誤った理解・イメージの払拭にも意識を向け、学部で研究を行っている。

佐藤彩香さん

立命館守山高校(滋賀県)出身。Beyond Kitchen運営委員会副代表。Sustainable Week実行委員会にも所属。趣味はテニスで、週に一度はテニススクールに通う。コンテストでは裏方作業に尽力しつつ、YouTubeの配信作業やZoomのバーチャル背景の制作にも努めた。食に関する科学や経営、食育についても熱心で、小学生に対する早期食育の大切さだけではなく、高校生や大学生といったより大人に近い世代に向けた食育の重要性についても議論している。

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